「もう愛していない」心が壊れるまで我慢した妻が、モラハラ夫と決別するとき
共依存という関係性
モラハラを受けている人の中には、共依存の傾向を持つ方も少なくありません。
共依存とは、相手の気持ちや行動に強く影響され、気づけば「この人を支えるのが自分の役目」と思い込んでしまう心理状態のことです。
自分の感情や欲求を抑えてでも相手に合わせようとしてしまい、いつの間にか「自分を犠牲にしてでもこの関係を維持する」ことが目的になってしまっている……それが共依存の本質です。
そして、Tさんのようなケースでよく見られるのが、「トラウマ・ボンド(心的外傷による絆)」と呼ばれる現象です。これは、加害者が「優しさ」と「攻撃」を交互に繰り返すことで、被害者の心理を混乱させ、関係から離れにくくしてしまうものです。
たとえば、夫からひどい言葉を投げかけられた直後に、急に優しい態度をとられる。責められた翌日に、まるで何事もなかったかのように笑顔で話しかけられる。これはモラハラ加害者に多く見られる典型的な言動です。
Tさんも、そのたびにこう思ってしまったと言います。
「やっぱり、本当は優しい人なのかもしれない」
「きついことを言うのは、不器用なだけかも」
こうして、加害者をかばうような考えが芽生えてしまうのです。
この一時的な“優しさ”が、わずかな希望となってしまい、関係から抜け出すのを難しくする……。それが、トラウマ・ボンドの大きな落とし穴です。
「信じたかった」という気持ちは、決して悪いことではありません。でも、信じたい気持ちと、現実に起きている加害行為とは、まったく別物です。そのことに、どうか気づいてほしいのです。
モラハラの被害にあっている方の多くが、
「私が我慢すれば丸く収まる」
「私のせいでこうなっているのかも」
と、つい自分を責めてしまいます。けれども、モラハラは加害者の責任であって、被害を受けている側が悪いわけでは決してありません。
関係が壊れつつあるなかでも、
「まだわかってくれるかもしれない」
「いつか変わってくれる」
と信じたくなるのは、人間として自然な希望です。でもその希望が、自分を縛る“呪い”になってしまうこともあるのです。
Tさんもまた、その希望の中で、何度も何度も傷つけられてきました。そしてようやく、「もう、この人に何も期待していない」と心から思えたとき、自分がどれほど疲れ果てていたのかに、初めて気づいたと言います。
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