「なんで産んだ彼女には話が通じなくなるのか」脳の仕組みが判明!
OTONA SALONEでも好評連載「おこなしさまという生き方」を執筆中のくどうみやこさんが書籍『子どものいない人生の歩き方』が大変な反響を集めています。
「産まない」40代の迷いや悩み、楽しみや未来について伺いました。前編のつづきです。
「女性」「母親性」、脳がまったく違うだなんて
浅見・4章の黒川伊保子先生(感性リサーチ代表取締役/感性アナリスト、脳科学コメンテーター、人工知能研究者)の話はいちばんインパクトがありました。よくこれだけ話してくださったなと改めて思います。この章の書き出しが「女性の脳には、産んで成熟する脳と、産まずに成熟する脳があります。この二つは、別の成熟の仕方をします」。つまり、「男性」「女性」「母親性」のように、ある意味いったん違う生き物になるんですね。
くどう・そうなんです、そしてあとでまた女性のカテゴリに脳が戻ってくるんです。重要なのは、社会を構成する上ではこの3つのどの脳も必要だという点。
浅見・これはですね、各会社の人事の人たちに必ず知っておいてほしいことです。ここだけ抜粋して冊子を作ってお配りしたいくらい。人間、ホルモンの働きには逆らえないんですよね。最近いろいろなところで言われていますが、人間は午前中はクリエイティブな仕事に費やすとよく、午後はコミュニケーションに費やすといいんだそうです。だから午前中会議なんかしてちゃいけないんですが、ほとんどの会社は午前に会議やってますよね。それではものごとが効率よく回らないんです。こうした脳の働きに応じて人事配置をすれば、閉塞感のある日本の社会でももっといろいろなことがスムーズにまわるようになりますよね。
くどう・黒川先生のお話は本当に腑に落ちるんです。こういうことだったのか、と。
脳の仕組みに応じた社会が私たちをラクにする
浅見・「産むとプロラクチンでぼんやり、産まないとテストステロンできつくなる」という見出しを見て、プロラクチンいいなって思いました(笑)。私も「ま、いっか」になりたい(笑)。現場ではまだまだ子なしハラスメントがありますが、センシティブに傷つく人もいれば、あまり気にしない私のような人もいて、こう考えてみると、男女均等雇用法以前の女性は本当にがんばったんですね。
くどう・核家族化が進んだせいで周囲にちょっとクッションになってくれるようなおじいちゃん、おばあちゃんがいないのも、こうした生真面目さに拍車をかけていますよね。
浅見・ですよね。昔はもっと子どもを放置していたなと思います。鍵っ子が普通にいたり。いまの子どもは大変ですよね。また、子どものいない女性といる女性では話が合わないというのはなるほどでした。
くどう・そうなんですよ。もちろん個人差はありますが、なんで子どもの話しばかりで気をつかえないのかといった点も、脳の仕組みが原因ならそれは仕方ないことだと思えますよね。
浅見・実際に話が合わないと思われたことはありますか?
くどう・私の周囲には子どものいない人が多いので、実はそれほどないんです。ただ、多くの人の話しを聞いていると、閉経後にはまた同じになるんだなと感じます。子育ても終わり、体の悩みもだいたい同じになり、話題も自分の健康や親の介護の話になって、また同列になると。
浅見・更年期!私も以前は誤解していて、更年期は閉経を迎えて以降を言うのかと思っていました。じつは前5年くらいからを言うんですね。私もう更年期じゃん(笑)。そして、友人たちともこの世代ならではの「あるある」がどんどん増えて、共通の話題が増えてきました。
くどう・子どもの手が離れた友人たちは急に自分の時間が増えました。これから旅行を楽しみたい、どこがおすすめ?と聞かれたり、共通の話題が増えていくんですよね。いいわよ、私ひとり行動のベテランですからどうぞどうぞと(笑)。
浅見・確かに、ひとり旅行くならどこがいい?は私も聞かれました。待っていれば脳は戻ってくるんですね。
「子どもがいない女性の心得」9つのこととは
浅見・そして5章が「9つの心得」。
くどう・もう子どもがいない人生はマイノリティではない、私たちも声を発信しようという話なのですが、これは実は下の世代から言われたことでもあるんです。自分たちの生き方の参考にしたいから教えてほしいと。まだ声を出すと石が飛んできたりしますが、子どものいない女性のリアルな声やロールモデルがとにかく少ないので、聞きたいと。
浅見・それも意外でした。みんなそんなにロールモデルがほしいんですか?
くどう・ほしいんです。雑音を気にせず、自分だけでしっかり立てる人もいるんですが、「こういう感じなんだ」と参考にしたいんです。私も周囲にロールモデルがいなかったので、子どもがいないまま年齢を重ねていく生き方がイメージできませんでした。
浅見・私、究極言うと黒柳徹子さんがモデルかなって思ってるんです(笑)。お仕事をなさっていて、社会貢献もなさっていて。突き詰めるとそこなのかなって思っています。究極、頂点は徹子さんだなと。
くどう・それはもうもちろんですが、徹子さんですとあまりに手が届かない(笑)。みんな等身大の、身近なお手本を探しているんです。かといって、会社にいる40代の先輩にいきなりプライベートの話しは聞けないし、「聞いちゃいけないオーラ」も出てるんですよね。
「聞いちゃいけないオーラ」は気をつけないと…
浅見・わかります、「聞いちゃいけないオーラ」、自分は出さないように気をつけようって……。この、自分で発信することが大事だなと思ったのは、私がOTONA SALONEのオープンから「婚活記」の連載を始め、赤裸々な自分の話をオープンに発信する中でも実感しました。みなさん、びっくりするくらいに「食事したい」とデートに誘ってくれるようになったんですよ、でも残念ながら男性ではなく女性から(笑)。「実は私も婚活中なんです、話しを聞きたいんです」というようなメールをたくさんいただくようになり、ビジネス上のご挨拶のおつきあいだった方々ともこの1年半で本当によくお食事させていただきました。女性ばっかりですけど(笑)。
くどう・そうなんですよ、身近にこういうことを発信してくれて、話しを聞いてくれる人がいる、相談できるということがわかることがとっても重要だと思うんです。こういう分野にニーズがあるんだと声を出していくのは大切です。私も「子どもがいない女性の生き方の活動をしています」と声を出していると、仕事でお会いした人でも最後はだいたいプライベートのお話になるんです。実は私も子どもがいませんとか、妊活中だけどもし授からなかったら……、など。発信を受けたかわりに、この人になら言っていいんだという交流が生まれるんですね。
浅見・この話は「未熟なほうがいい」という話しにつながると思うんです。コンプレックスがある人のほうが共感できます。
くどう・ですよね、人って他人に自分の弱みを出すのはいやがるものですが、でも弱みを出すことによって意外な扉が開いたりするものなんですね。
世の中の多様性を知ると苦しみが薄れていく
浅見・さて、この本を出したことで、変わったことは何でしたか?
くどう・世の中は思っていたよりはるかに多様なんだなということです。「いろいろな人の価値観に接してみる」のはとても重要でした。何十人もの意見をひたすら聞くと、今回の浅見さんのようなカラっとしている人もいれば、本当に傷ついて何十年も引きずっている人もいる、いろんな人がいるんだな、いろんな価値観があるんだなと気がつきます。そして自分の価値観も変化していくんです。
浅見・執筆のために取材をすることで知っていったんですか?
くどう・はい。私は幼いころから「女性は結婚して子どもが持つのが普通」という価値観に影響を受けて育ちました。それが叶わず、沈んでいた時期もありましたが、そんなに長くは引きずらない方でした。でも、取材をしていくと子どもを持てなかった苦しみを長く引きずっている女性がたくさんいることを知りました。たとえば「ペットを飼っているということを言えない」という価値観には私は気づいていなかった。想像もしていなかった。いろんな立場の人がいろんなことを考えていて、抜け出せない苦しみの中にいるんだなということに気づいたりしました。
浅見・次にやってみたいことはありますか?
くどう・自分たちの世代以降、子どものいないシニア層が大量に生まれます。新たな大人のライフコースを作りたいと思っています。また、私たちより下の世代の人たちが歩んでいく道を歩きやすくしたい。そして、自分のエネルギーを世の中のために費やしていきたい。概念的ですね。具体的に言うと、老後の不安をなるべく取り除いて、楽しいシニアライフを迎えたい(笑)。
浅見・子どもがいない点で出てくる不安はどうしてもありますからね。
くどう・そうなんですよ、老後に思考力が落ちてから、たとえば病院や施設はどこがいいというのを探してくれる人がいないんですよね。これからは支え合う仕組みを作っていきたいなと思います。
無理に「よかった」とは言わなくていい
浅見・子どもがいない人生でよかった?
くどう・いいえ、「よかった」とは思っていないです。よかったという感じではなく、いない人生の中で楽しもうという感じです。「子どもがいないながらも楽しい人生」、という表現が私の中ではいちばん近いです。
浅見・子どもがいないということを卑下することはなく、ですね。
くどう・気持ちを切り替えて、いないながらも楽しい人生を歩んだほうが幸せじゃないかしら、って思います!
(この対談の前編はこちらから)
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