「もう夫には何も期待しない」心を守るために選んだ“諦め”が、モラハラ夫の支配を打ち破った日

2025.08.23 LIFE

家事や育児には一切関わらず、泣く子どもを「うるさい」と怒鳴り、妻の料理を平然と捨てる。一方で外では“良き父親”を演じ、人からどう見られるかにばかりこだわる……。

自己愛がむき出しの夫に、Sさんは次第に「夫に何かを期待しても無駄だ」と気づいていきます。

前編「『お前の料理は太る』と、妻の手料理を捨てる夫。家族を見下し、自分だけを愛するモラハラ夫の正体とは」につづく後編です。

※本人が特定できないよう変更を加えてあります

※写真はイメージです

妻の評価は不要。求めているのは「外の賞賛」

モラハラ夫は、たとえ妻が「すごいね」と褒めても、「それくらい当然だ」と受け流します。本当に欲しいのは、職場や友人、SNSのフォロワーといった「他人」の賞賛なのです。

そのため、他人に注目されないと機嫌を損ねたり、逆に他人が褒められているのを見ると、急に対抗心を燃やします。

 

このような性質は、家庭の中でも表れます。

「自分が一番でいたい」「自分が評価されるべきだ」

そうした思いが強すぎるため、妻や子どもが自分よりも注目されたり、褒められたりするのを嫌がります。たとえば、妻の料理がおいしくても、家がきれいでも、一切褒めません。むしろ、「すごい」と言われている妻を許せないから、“否定する”言動に出るのです。

これが、モラハラ夫の根底にある心理であり、“支配”の根っこなのです。

 

自分以外の存在が“評価されること”を許せない。

妻の努力を認めず、子どもの成功も素直に喜べない。

自分が一番であるために、家族を“価値のない存在”として扱おうとするのです。

 

家事はゼロ。気に入らないと「文句」と「無視」で返す夫

“自分磨き”に夢中な一方で、夫は家のことにはまったく手を貸そうとはしません。脱いだ服はそのままリビングに放置し、食べたあとの食器も自分では洗わない。家の中は、夫の“やりっぱなし”の痕跡だらけです。

それだけではありません。Sさんが作った料理に対して、「こんなの食わせるから俺が太ったんだ」と文句を言い、時には平然と自分の分を捨ててしまうこともあるのです。

 

Sさんはこれまでずっと、“家族のために”と頑張ってきました。夫が疲れていれば気遣いの言葉をかけ、健康を考えながら食事を作り、子どもの学校や生活にも心を砕いてきました。でも、夫には家族への関心がまるでないように思えてなりませんでした。誰かの気持ちに寄り添うことも、家庭全体を思いやる姿勢も、彼からは一度も見られなかったのです。

 

何かを言えば、否定されるか、無視されるか。その繰り返しの中で、Sさんはだんだんと、夫に何かを相談したり、頼ったりすることを諦めていきました。「この人には、もう何も言えない。何も期待できない」そう気づいたとき、心の中の何かが、すっと冷えていくのを感じたと言います。

 

Sさんの夫のように、「自分のことには熱心なのに、他人には冷淡」なモラハラ夫には、ある共通の心理的傾向があります。それは、強すぎる自己愛と、他者への共感の欠如です。自分がどう見られるか、どう評価されるかには非常に敏感なのに、他人の苦しみや想いにはほとんど関心がない。だからこそ、子育てや家事のように“誰からも褒められないこと”には全く関わろうとせず、時には見下しさえするのです。

 

もう期待しない、諦めるという強さ

「この人と一緒に生活していく以上、自分の心を守るには、“もう期待しない”という選択しかなかったんです」

Sさんは、そうはっきりと口にします。悔しい思いも、悲しい気持ちも、これまでにたくさん味わってきました。でも今は、夫の言動に心をかき乱されないために、「諦める」という強い覚悟を持つようになったと言います。

 

「何を言ってもこの人には響かない」と気づいたとき、自分の心を守るために、“夫に合わせて自分を壊す生き方”をやめる決意ができました。夫の顔色や言動にビクビクせず、文句を言われても聞き流す。機嫌が悪くても無理に取り繕わない。夫が自分優先で動こうと、家庭を後回しにしようと、「この人には期待しない」と割り切ることで、Sさんの心は少しずつ軽くなっていきました。

 

「夫がどう思うか」ではなく、「私はどう感じるか」を大切にする。「怒らせないように」ではなく、「無理なことは無理と言える」ようにする。「夫が何もしてくれなくても、自分の機嫌は自分で整える」。そんなふうに、自分の感情や心の健康を最優先することこそが、“自分軸で生きる”ということなのだと気づけたのです。

夫に変わってもらいたいと必死に願っていた頃より、今の方がずっと心が穏やかで、日々の生活も楽になったといいます。

 

家庭とは、本来“支え合う場所”のはずです。でも、それがどうしても望めない相手なら、「期待しない」という諦めは、決して後ろ向きなものではなく、自分を守るための大切な選択肢なのです。

 

誰かの言動に振り回されるのではなく、

これからは、 “自分で自分を守っていく”という選択。

それが、Sさんの新しい生き方のはじまりなのです。

 

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