「優しかったはずの夫」に徹夜で正座させられる日々。そしてついに殴られ……。泣き続けるしかなかった妻が、最後に選んだたった一つの道とは
結婚前は、とても優しかった夫……。その記憶が、Aさんにとって希望であり呪いでもありました。
傷つけられても、「本当の夫は優しい人」と信じてしまう。怒らせないために自分を押し殺し、合わせ続ける。嫌われる不安に怯えながら、安心を求めて努力を重ねてしまう。Aさんは、“心を壊した原因が夫の言葉や態度ではなく 期待し続けた自分の思い込み にもあった”ことに、まだ気づけていませんでした。
本編では、Aさんがどのようにして「夫の支配」から抜け出し、自分の意思と自分の人生を取り戻していったのかを丁寧に描いていきます。
<<本記事の前編「優しかったころの夫に戻って欲しい」その“希望”にすがり続けた妻が、暴力にさらされて心を壊していくまで※写真はイメージです
※本人が特定されないよう名前などを変えてあります
モラハラの「ハネムーン期」が別れを惑わせる
モラハラには必ず “ハネムーン期” が存在します。加害言動のあと、嘘のように優しさが戻ってくる時期です。Aさんの夫も、暴言が続いた後には急に態度がガラッと変わり、結婚前の優しい夫に戻るのです。柔らかな笑顔で抱き寄せてくれ、目を見て話してくれる夫。そっと頭を撫でてくれて
「疲れてない?」「無理しなくていいよ」
と声をかけてくれる。そんな優しい夫に戻るたびにAさんは、
「怖かったのは機嫌が悪かっただけ。本当は私のことを大事にしてくれている」
「この幸せが続くように、夫を怒らせないようにしないと」
と夫のモラハラを正当化し、さらに尽くす理由が強化されていきました。不安型愛着の人にとって、“安心させてくれたことがある相手”は特別な存在になります。だからこそ、傷つけられても離れる決心がつかなくなるのです。
しかし、ハネムーン期は長く続きません。やがて再びモラハラ期へと戻り、夫はこうした言葉を繰り返しました。
「お前が悪い」「お前のせいでこうなった」「お前はダメだ」
言われるたびにAさんの心はえぐられ、落ち込み、傷ついていきました。それでもAさんは、「私の伝え方が悪かったのかも」「余計なことを言ったんだろうか」と反射的に自分を責め、努力を続けてしまうのです。
“尽くしても報われない地獄”へ
夫のモラハラは次第にエスカレートし、Aさんは限界寸前まで追い詰められていきました。
夫はささいなことで激昂し、「これはお前のためなんだぞ」と言いながら一晩中説教をするようになりました。「普通の人ならできるのに、なぜお前にはできない」「理由を言え」と責め立てるのです。
寝ることも許されず、正座をさせられ、足の痺れと眠気で横に倒れてしまったAさんに、夫は「お前は俺をバカにしているのか!」と大声で怒鳴りながら肩を思い切り叩いてきました。あまりのつらさと痛さに悲鳴を上げて起き上がると、夫は
「これは暴力じゃない。坐禅の警策だからな。ありがたいと思え」と言い放ちました。
その瞬間、Aさんの中で何かが静かに崩れました。「夫に嫌われたくなくて、あんなに頑張ってきたのに。全部、無駄だった。私、何をしていたんだろう。」
そこから、笑うことができない・涙が止まらない日々が続きました。テレビを見ているだけでも、料理をしているだけでも涙が溢れ、家事が手につかず、体を起こすことすらできなくなっていきました。
その状態のAさんに、夫は冷たく突き放すだけでした。「そんな辛気臭い顔して家にいるなら、さっさと実家に帰れ。」Aさんは痛感しました。夫にとって自分は、「家政婦」であり、「ストレス発散の対象」でしかなかったのだと。
そして、ついに分かったことは 次ページ
1 2
スポンサーリンク









