「優しかったはずの夫」に徹夜で正座させられる日々。そしてついに殴られ……。泣き続けるしかなかった妻が、最後に選んだたった一つの道とは
心療内科で初めて知った“自分の傾向”
関係の限界を感じたAさんは、心療内科を受診する決断をしました。そこで初めて、自分に“不安型の愛着傾向”(前編参照)があると知ったのです。
「だから私は、あんなに夫から離れられなかったんですね…。私、悪くなかったんですね。」
その言葉を自分に許せたことで、Aさんの中で“恐怖で選ぶ”生活から“自分の意思で選ぶ”感覚が少しずつ戻っていきました。そしてある日、夫の前に静かに座り、はっきりと言いました。
「離婚してください。」
夫は病気の妻が面倒くさかったのでしょう。Aさんに視線すら向けず、
「離婚はしてやる。慰謝料は払わないからな。」
と吐き捨てました。Aさんは荷物をまとめ、家を出ました。離婚協議は弁護士に任せ、ようやく“自分の心”を取り戻したのです。
Aさんは今、ひとりで生きています。経済的な余裕も、心の余裕も、まだ十分とは言えません。それでも、夫の怒鳴り声に怯えて暮らしていた頃より、ずっと呼吸がしやすいと感じています。
朝起きた瞬間に「今日の夫の機嫌はどうだろう」と不安にならずにすむ。食器を落としてしまっても、誰も怒鳴らない。コーヒーの香りをゆっくり味わう時間がある。そのひとつひとつが、Aさんにとっては“自由を取り戻す証”でした。
Aさんは言いました。
「離婚は、幸せになるためのゴールだと思っていました。でも違いました。“幸せになるスタートライン”に、ようやく立てただけなんですね。」
傷ついていた時間が長いほど、回復には時間がかかります。焦らなくていい。完璧じゃなくていい。Aさんは今、少しずつ自分の感情を取り戻しながら、安心できる人間関係と生き方を築こうとしています。
モラハラで苦しんでいる人が楽になる第一歩は、“相手を変えること”ではありません。“自分の心を壊さない選択をすること”です。
あなたの人生の主役は、あなた自身です。どうか忘れないでください。あなたの価値は、誰の機嫌にも左右されません。あなたの幸せは、誰にも奪えません。
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