子どもの前で殴られ、雪の日に家を追い出された私。「5万円」しか生活費をくれないDV夫のために、どこまで我慢するべきなのか
夫婦問題・モラハラカウンセラーの麻野祐香です。
生活費を極端に減らされたり、通帳やカードを突然止められたりすること。それは、相手の生活基盤を奪う 「経済的DV」 にあたります。今回は、そんな状況の中で生きていたYさんのお話です。
Yさんは、経済的DVに加え、言葉の暴力や身体的な暴力が重なる日常の中で、心が削られていく感覚を抱えていました。
【実録・カウンセラーから見たモラハラ】#86 前編
結婚前には想像もできなかったような変化
「結婚前には、あんなに夫が変化するなんて想像もできなかったのです」と語るYさん。しかし、その「変化」……良い変化ではなく、悪い変化は、結婚後、着実にYさんの夫に現れ始めました。
機嫌が悪くなると怒鳴る。Yさんの言葉を否定する。失敗したことをいつまでも責め続ける。そんな暴言や態度が、日常的に繰り返されるようになったのです。
それでもYさんは、「家庭を壊したくない」「子どもに寂しい思いをさせたくない」そう思い、できるだけ波風を立てないように過ごしていました。当時は夫から生活費も渡されており、生活そのものは成り立っていたからです。
ところが、ある日突然、夫から渡される生活費が 月5万円 に減らされました。事前の相談は一切ありません。理由を尋ねると、夫は答える代わりに声を荒らげました。「働いているのは俺だろ」「文句を言うな」
給与明細を見せてほしいと頼んでも、「渡す必要はない!」と突き放されます。
たった月5万の生活費、「もらえるだけありがたいと思え」と言われて
「もらえるだけありがたいと思え」その一言で、会話は強制的に終わらされました。夫婦と子ども3人の生活を考えると、月5万円では到底やりくりできません。食費、学校で必要なもの、習い事……どれを削っても追いつかず、不足分はすべてYさんのパート収入で補うしかありませんでした。
それでも夫は、生活費を減らしたことに悪びれる様子もなく、以前にも増して家の中で威張るようになってゆきました。決して家事を手伝うことはなく、趣味のゴルフのレッスン費用や、新しいゴルフセットを平然と購入していました。
「私たちの生活費を減らして、自分の趣味に使うなんておかしいでしょ」
Yさんがそう訴えても、
「うるさいな、俺が稼いだ金だ」「今の金額で生活できているんだから十分だろ」
と、聞く耳を持ちません。そして、Yさんが生活費を補うためにパートをしていることには、一切触れようとしなかったのです。
パート、家事、育児をすべて一人で抱える日々が続きました。その疲れのせいか、朝起きても体が重く、呼吸は浅く、めまいで動けない日も増えていきました。掃除や料理ができない日があると、夫は容赦なく怒鳴ります。
「なんでできていないんだ」
「家にいるならやれよ」
その言葉に、Yさんは 心まで弱っていくのをはっきりと感じていました。「休みたい」と思っても、夫の顔色を思うと、横になっていることさえ罪のように感じてしまう。体調が悪い日ほど、夫は不機嫌になり、できていない家事を責める言葉が増えていきました。
そのたびにYさんの心には、
「自分が悪いのだろうか」
「もっと頑張らなければいけないのだろうか」
そんな思いが積み重なっていきました。
少しずつ、自分を追い込んでいくような毎日だったのです。
ある日、顔を殴られて
体調が悪くても休めない状況が続き、Yさんの体は次第に限界を迎えていました。それでも、体調が悪い日でさえ、夫はYさんがパートを休むことを許しませんでした。
夫が生活費を減らしたことで、家計はYさんのパート収入に大きく依存する形になっていたからです。パートを休めば、その分、夫が家にお金を入れなければならなくなる……夫はそれを避けたかったのでしょう。
ある日の朝、息苦しさが強くなり、Yさんは勇気を振り絞って伝えました。
「今日は病院に行きたいの」
しかし、夫は心配するどころか、こう言い放ちました。
「病院なんて行くな。金の無駄だ」
「だるいなんて、気の持ちようだ」
信じがたい言葉でした。
夫がYさんを病院に行かせたがらなかった背景には、次のような心理が重なっていると思われます。
・妻が弱っているほうがコントロールしやすい
・外部の人(医師や看護師)に家庭の異常を知られたくない
・妻が誰かに頼ることを嫌う
・医療費を使われることへの強い拒否感
そして、夫はさらにこう言いました。
「扶養から外れろ」
扶養から外されれば、健康保険料も年金も、すべて自分で支払わなければなりません。体調が悪く、思うように働けない時期があれば、生活が立ち行かなくなることは明らかでした。それを分かったうえでの言葉だったのです。
ここにも、モラハラ夫に共通する心理が見て取れます。
・妻の生活基盤を不安定にして、支配力を強めたい
・「自分のお金」を家族に使われたくない
・家族としての責任を負いたくない
夫が投げつける言葉には、「自分が優位でいたい」という強いこだわりがありました。Yさんが弱っていくほど、夫はどこか安心しているようにも見えました。妻が逆らえなくなることで、「支配できている」と感じられるからです。
この頃のYさんは、家の中で安心できる時間がほとんどありませんでした。体調は悪化する一方で、「このままここにいたら、倒れてしまうかもしれない」そんな不安が常につきまとっていました。
そんなある日、夫はいつものように理由もなく怒り出し、ついに手を上げたのです。
「こんなこともわからないのか!」
夫はそう怒鳴りながら、顔を平手で思い切り殴ってきました。Yさんは殴られた勢いで壁にぶつかって倒れました。頬は腫れて熱を持ち、触れるだけで鋭い痛みが走りました。
倒れたときの衝撃で全身が打撲のようになっていましたが、それでも、「ママ、どうしたの? 大丈夫?」と心配する子どもたちの前では、何事もなかったかのように振る舞うしかありませんでした。
雪の降る夜に「今すぐ買ってこい」と命令されて
翌日は、雪の降る寒い日でした。夫はYさんの顔を見ることもなく、何事もなかったかのように言いました。
「灯油がないじゃないか。今すぐ買ってこい」
逆らえば、また怒鳴られる。殴られるかもしれない。そう思ったYさんは、雪の降る中、何も言わずにコートを羽織り、家を出ました。抵抗したところで、夫は無理やりにでも追い出すでしょう。頭の中はしびれたようで、考える力もほとんど残っていない感覚でした。ただ言われた通り、外に出て歩いていたのです。
しかし……家を出て、とぼとぼと数分ほど歩いたとき、ふと我に返りました。
「なぜ私は、雪の日にこんなことをさせられているんだろう」
その瞬間、堪えていたものがあふれ、涙がこぼれました。
本編では、生活費を極端に制限され、病院にも行かせてもらえない中で、ついに暴力を受け、雪の日に家を出るまでの出来事をお伝えしました。
▶▶ 子どもを置いて逃げた母は、間違っていなかった。あの「雪の日」から動き始めた人生は
では、警察に連絡をしたYさんと子どもたちの生活がどのように動き出したのかをお届けします。
※本人が特定されないよう名前などを変えてあります
※写真はイメージです
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