「これは更年期症状なのですか?」肩こり、睡眠の質の低下、疲れやすい、物忘れ、おしっこが近い、漏れやすい…

「お会いするだけで更年期の沈んだ気持ちが前を向く」「楽しくお話して、気づいたら心にわだかまっていた重いものが消えていました」とファンも多数の産婦人科医・小川真里子先生。現在は福島県立医科大学での診察と併せて、週に一度、東京・JR五反田駅のアヴァンセレディースクリニックで更年期外来もお持ちです。

長年に渡って女性特有のトラブルに向き合ってきた小川先生に、更年期時期の女性へのメッセージをいただきます。今回は「更年期症状でクリニックを受診する際、どんな症状なら予約すべし?の目安」について。

「ホットフラッシュの汗くらいで病院に行っていいの?」更年期症状で病院を受診したほうがいい「目安」って?につづく後編です。

【女性の身体、思春期から更年期までby小川真里子先生】後編

相談しにくい「尿漏れ」など、おシモの話は何科に行けばいい?泌尿器科か、婦人科か

かつて老人性膣炎などと呼ばれていたエストロゲンの低下による腟やその周辺のトラブルは、GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群 /Genitourinary Syndrome of Menopause)と呼ばれるようになりました。

 

その症状のひとつ、尿漏れも、どの科を受診するのか、いやそれ以前に尿が漏れるという症状で受診していいのか、いろいろと迷うと思います。

 

くしゃみで尿が漏れてしまう場合は「腹圧性尿失禁」の可能性がありますが、まずは泌尿器科を受診してください。

 

ただ、みなさんが悩んでいるのは単純な腹圧性尿失禁ではなく、トイレが近くなったり、それほど尿意がないのにトイレの近くに行くと漏れ始めたりするケースかなとも思います。この症状はOAB(過活動膀胱/Overactive bladder syndrome)の可能性があり、更年期、40代くらいから増えてきます。いろいろな薬がありますし、検索するとチェックリストが出てきますから確認してみてください。

 

尿漏れは比較的よく起きるのですが、まだまだ恥ずかしいという感覚があるため、ただでさえしんどいのに我慢を重ねて辛い思いをする人が多い、とっても切ない症状です。尿漏れパッドの利用すら恥ずかしいから生理用ナプキンを使っている例もまだ多く、専用品ではないため蒸れてしまい、かぶれているケースが多々あります。やはり専用品を使ったほうが快適だろうと思います。

 

泌尿器科で相談しづらい場合はいちど婦人科を受診していただいてもいいのですが、婦人科によって得意不得意もある分野ですので、そういったことが得意な産婦人科を近隣で検索してみてください。

 

「肩こり」「物忘れ」「疲れやすさ」も更年期症状だと言われるけれど、治療できる?

疲れやすさ、物忘れ、肩こりなどは更年期症状のリストに入っているため、みなさんから「更年期でしょうか」と質問を受けます。

 

肩こりはエストロゲンとは関係ないため、私は更年期症状ではないだろうと思っています。易疲労感は更年期症状ではあるけれど、更年期が終わったら疲れなくなるわけでもありません。同様に物忘れも、エストロゲン欠乏と関係するとは思いますし、更年期症状ではあるでしょう。しかし、若いころから比べると、年を取れば徐々にものを覚えにくく忘れやすくなっていく、そのスピードが更年期にはちょっと上がるのだと思うのです。以前はもうちょっと覚えられていたはずなのに、いきなりできなくなったように感じる、それにショックを受けるのが大きいのかなと思います。

 

ホルモン補充療法(HRT)を行ってみると、疲れなくなるというのは難しくても、ほてりに気を取られなくなったり、ブレインフォグが取れたり、睡眠がよくなったりした結果、ある程度改善する可能性があります。いちどご相談いただければと思います。

 

睡眠は、「寝つきはそこそこいいけれど、夜起きるようになった」「夜中に何回か目が覚める」という方がぐんと増えます。「以前は朝まで眠れたけど、最近は夜中に目が覚めて熟睡できなくなったため次の日に響く」という訴えです。ですが、人間の眠りは自然な加齢変化によって少しずつ浅くなり、睡眠時間も短くなっていきます。「突然毎晩目が覚めるようになりました、私だけですか?」と聞かれますが、私は「あなたも私もですよ」ってよく言います。私もいつも夜中の3時くらいにカッと目がさめて、そのあと寝付けなくなったりします。治療は難しいですが、そこでスマホを見ることなどは避けたほうがいいでしょう

 

眠れなくなって次の日が辛いこともあると思いますが、トータルの睡眠時間を考えてそれほど減ってなければ大丈夫です。受診は精神科、心療内科でもいいですが、HRTで眠れるようになる人もいるため、ほてりなどその他症状があるなら産婦人科の受診も検討してください。

 

いろいろとお話してきましたが、更年期症状は「他に原因となる病気が潜んでいない」ことをいろいろな科で検査した結果、何もなかった場合に最後に「更年期の症状ですね」となるので、他の科で何もなかったら産婦人科でも診断を受けてみるというのがオススメです。もちろん判断に困ったら、最初に産婦人科で相談していただいても大丈夫です。

 

つづき>>>「ホットフラッシュの汗くらいで病院に行っていいの?」更年期症状で病院を受診したほうがいい「目安」って?

 

お話/小川真里子先生

福島県立医科大学 ふくしま子ども・女性医療支援センター 教授

1995年福島県立医科大学医学部卒業。慶應義塾大学病院での研修を経て、医学博士取得。2007年より東京歯科大学市川総合病院産婦人科勤務、2015年より同准教授。2022年より福島県立医科大学 特任教授。日本女性医学学会ヘルスケア専門医、指導医、理事。日本女性心身医学会 認定医師・理事。日本心身医学会 心身医療専門医・代議員。2025年11月から福島県立医科大学 ふくしま子ども・女性医療支援センター 教授。東京・JR五反田駅のアヴァンセレディースクリニックで、毎週金曜午前に完全予約制の更年期・PMS外来もお持ちです。

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