「いいパパ」を演じる裏で続いていた支配。命綱の「隠し携帯」を使ってモラハラ夫から逃げ切ったあの日、緊迫の数時間
「いいパパ」を演じる父親
子どもが生まれてからも、夫は育児を一切手伝いませんでした。完全なワンオペ育児でしたが、外から見ると夫は「良い父親」に見えていました。人前や、子どもの機嫌がいいときだけ、甲斐甲斐しく世話をするのです。
「〇〇ちゃん、パパでちゅよ〜。かわいいね〜」
異常なほどの猫なで声で接し、「いいパパ」を演じる夫。その姿を見るたびに、Aさんの中の「怖い」「離婚したい」という気持ちは揺らぎます。
「私が我慢すれば、この子は両親のそろった家庭で育てられる」
「父親を奪ってはいけない」
そう自分に言い聞かせ、Aさんは思いとどまり続けていたのです。
抜け出せない「飴と鞭」のループ
夫はひどい暴言を吐き、怒鳴り散らした翌日になると、何事もなかったかのように優しくなります。
「昨日は言い過ぎた。Aの好きなケーキ買ってきたよ」
「やっぱりAの笑顔が一番だよ」
優しいときの夫は、結婚前のように穏やかでした。その姿を見ると、Aさんは「本当は優しい人なんだ」「私がもっと努力すれば、ずっとこのままでいられるかもしれない」と考えてしまうのです。これが、いわゆる「飴と鞭」による支配です。
ずっと怒られ続けるよりも、「恐怖(鞭)」のあとに「優しさ(飴)」を与えられると、人はその優しさに強くすがりついてしまいます。「優しいときの彼が本当の彼なんだ」と思い込もうとし、怒られるのは自分のせいだと変換してしまう。このループに陥ると、正常な判断ができなくなり、やがて「洗脳状態」となって逃げられなくなるのです。
完全否定された「生きがい」
子供が2歳になった時、Aさんは夫に相談をしました。
「またベリーダンスに関わりたいの。ステージじゃなくて、教室の先生として復帰するのはどうかな」
しかし、夫の答えは一方的な否定でした。
「まだそんなこと言ってるのか。ベリーダンスは男を誘うから絶対ダメだと何度も言っただろ」
「先生として教えるだけだよ」
「しつこい! お前みたいな母親を持った子供が可哀想だ」
自分の生きがいを完全に否定され、人格まで攻撃されたことで、Aさんの心は限界を迎えました。勝手に涙が出る、夜眠れない、動悸が止まらない。病院を受診すると鬱と診断されました。
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