「いいパパ」を演じる裏で続いていた支配。命綱の「隠し携帯」を使ってモラハラ夫から逃げ切ったあの日、緊迫の数時間
隠し携帯からのSOS
「もう無理だ……」
心身ともに限界を迎えたAさんを救ったのは、ポーチの奥に隠し持っていた、あの携帯でした。
Aさんは夫の目を盗み、この携帯でかつてのダンス仲間や友人と連絡を取り合っていました。しかし、夫のモラハラについては、ずっと隠してきました。「素敵な旦那さんね」と言われるたびに見栄を張り、「幸せな妻」を演じていたのです。
けれど、もう限界でした。Aさんは信頼できる友人にメッセージを送りました。
「実は、夫から酷い言葉を言われ続けていて……もう死にたい」
すぐに友人から電話がかかってきました。泣きながらすべてを打ち明けると、友人は強い口調で言いました。
「それはモラハラだよ。立派なDV。すぐに逃げないと、あなたも子どもも不幸になる」
その言葉で、Aさんは逃げる決意をしました。第三者に断言してもらったことで、初めて洗脳が解けたのです。
「でも、私にはお金も、行く場所もない……」
震える声でそう伝えると、友人はきっぱりと言いました。
「大丈夫。昔の仲間たちに声をかけるから。みんなAのことを待ってる」
その言葉どおり、友人はすぐに動いてくれました。隠し持っていた携帯を通じて、ダンス仲間のグループラインにAさんのSOSが共有されると、驚くほどの速さで救いの手が差し伸べられました。
「うちが持っているアパートの空き部屋を使っていいよ」
「とりあえず生活用品は私が持っていく」
「落ち着いたら、うちの教室の事務とサポートを手伝って。お給料も出すから」
夫によって社会から孤立させられていたと思っていましたが、Aさんが築いてきた人間関係は、決して消えていなかったのです。
自由への一歩
決行の日、Aさんは夫が仕事に行っている隙に、最低限の荷物と子どもを連れて家を飛び出しました。向かった先は、仲間が用意してくれたアパートでした。そこには、懐かしい友人たちが待っていました。
「よく頑張ったね」
抱きしめられた瞬間、Aさんの目から涙が溢れ出しました。夫の顔色を伺い、息を殺して生活していた日々が嘘のように、そこには温かい居場所がありました。
現在は、友人が経営するベリーダンス教室で、受付やレッスンを担当しながら、少しずつ生活の基盤を整えています。夫とは弁護士を介して離婚協議中ですが、仲間という強力な味方がいる今のAさんに、以前のような恐怖や迷いはありません。
もしあのとき、言われるがままに携帯を手放していたら、友人たちと連絡を取る手段もなく、今もモラハラ夫の支配下で心を殺して生きていたかもしれません。
夫に隠し通したあの携帯は、単なる通信機器ではなく、Aさんと社会をつなぎ、自由へと導いた唯一の「命綱」だったのです。
※本記事は、相談者様への敬意と守秘義務に十分配慮したうえで、モデルケースとして編集・再構成しお届けしています。特定の人物や事例を示すものではありません。
※写真はイメージです
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