深夜2時、崩れ落ちた私が聞いたのは、息子のすすり泣く声。「全部見られていた」そう知った瞬間、私は決意した
「私が壊れたら、誰があの子を守るの?」
深夜2時過ぎ。夫は自分の言いたいことだけを一方的に言い終えると、
「もういい。顔も見たくない」
そう吐き捨てて寝室へ向かいました。Bさんはその場からしばらく動けず、リビングの床に倒れ込むように横になりました。「ここから逃げ出したい」その思いで頭がいっぱいでしたが、息子のことが気になり、子ども部屋に目を向けました。ドアがわずかに開いています。自分が正座させられ、責め立てられている姿を、ずっと見られていたのだと悟りました。
耳を澄ますと、かすかなすすり泣きが聞こえます。息子もまた、両親の怒鳴り声を聞きながら、ひとりで耐えていたのです。その瞬間、Bさんは決意しました。息子をこれ以上傷つけてはいけない。母親としてできることは、離婚しかない。
そこから、モラハラの証拠を集め、親身になってくれる弁護士も見つけました。
「逃げると決めた」その覚悟
Bさんは息子に静かに問いかけました。
「お母さんと一緒に、ここを出て二人で暮らさない?」
その瞬間、息子の目から大粒の涙があふれました。ずっと張り詰めていた緊張の糸が、ぷつりと切れたようでした。
「お父さんと離れたら、僕、もうあそこ(私立中学)にも行かなくていい?」
「もちろんよ。もうパパの顔色も、学校の成績も気にしなくていいの」
その日から、水面下で別居先の準備や転校手続きを進めました。
家を出る日。弁護士からの通知書をテーブルに置き、二人は最低限の荷物だけを持って家を出ました。その後、夫からは「息子の将来を潰す気か!」「誘拐犯!」と、罵詈雑言が弁護士を通じて届いたそうです。しかしBさんは、すべてを弁護士に任せ、夫の連絡先をブロックしました。直接のやり取りを断ったことで、心の平穏を保つことができました。
「行ってきます!」
新しい制服に身を包み、公立中学へ通い始めた息子。そこには、偏差値や親の肩書きで競い合う空気はありませんでした。
「今日の給食、カレーだったよ」
「新しい友達とゲームの話をしたんだ」
帰宅した息子の表情は、以前とは別人のように明るくなっていました。夫が「底辺だ」「恥だ」と見下していた場所で、息子はようやく深く息をし、本来の明るさを取り戻したのです。
Bさんは思いました。夫が守ろうとしていた「世間体」など、この子の笑顔の前では何の価値もないのだと。
転校してしばらく経ったある夜、布団の中で息子がぽつりと呟きました。
「お母さん、僕ね、本当はずっとお父さんが怖かった」
「成績が下がったら怒鳴られるし、お母さんが正座させられているのを見るのも辛かった」
Bさんは息子を抱きしめ、涙が止まりませんでした。
「謝らなくていいの。もう怖いことは何もないからね」
夫という恐怖の存在がいなくなったことで、息子はようやく「子ども」に戻ることができたのです。
モラハラ夫との生活は、ゴールのないマラソンのようなもの 次ページ
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