「お座りください」は実はNG!?失礼な敬語と正しい言い換えは
「お待たせしました。時間に少し遅れてしまいましたね」
「いえいえ。暑い中ありがとうございます。どうぞこちらにお座りください」
「……」。
この言い方を失礼だととらえる人がいるということを覚えておきましょう。実際、Wordなどでも「お座りください」と打つと、言い換えを提案されます。どうして失礼な言葉とされているのでしょうか。今日はその理由と、素敵な言い換え方をお伝えします。
「おすわり」の語感
犬に「おすわり」と命令して座らせるしつけがありました。もちろん今でもあり、犬のしつけの基本とされています。しかし、最近はペットの犬も家族同然だとする場合が多く、犬に「おすわり!」などと命令しなくなりました。そんな中でこの「おすわりください」のうち「おすわり」と言葉が同じなので、変な気持ちになってしまうようです。
子どもにも「おすわりしましょうね」などと使う時がありますが、これも「すわり」に「お」をつけた同じ言葉です。そうです、この「おすわり」は主人側が、ペットや子どもなど、語弊があるかもしれませんが従属物に対して使われる言葉です。「しつけ」をする側とされる側という面もありますね。
ですから、目上の方やお客様などには使わない方が良いのです。
「おすわり」は失礼。では言い換えは?
さきほどの例で考えてみましょう。
「お待たせしました。時間に少し遅れてしまいましたね」
「いえいえ。暑い中ありがとうございます。どうぞこちらにお座りください。」
このような時には、どのような言い換えをしたら良いでしょうか。
このような場合は、「座る」を別の表現で考えるとすぐに分かります。辞書で引いてみましょう。
座る
- 膝を折り曲げて、席におちつく。また、腰掛ける。
- 位置・場所などを占める。
- 落ち着いて動じない。
- 印判が押される。
- 制止する。
(広辞苑第6版より)
辞書というのは、言葉を説明してあるものですので、まさに言い換えの宝庫です。困った時には活用しましょう。
なお、③~⑤については「据わる」の方を使います。
ここでの意味は①ですね。
ここで言い換えが書かれています。
「席におちつく」「腰掛ける」です。
これを利用しない手はありません。
「お待たせしました。時間に少し遅れてしまいましたね」
「いえいえ。暑い中ありがとうございます。どうぞこちらに落ち着いてください」「お待たせしました。時間に少し遅れてしまいましたね」
「いえいえ。暑い中ありがとうございます。どうぞこちらに腰掛けてください」
このように言い換えが可能ということです。
相手に相当慌てた様子などがなければ、後者の方が一般的です。ただこのままでは、敬語的要素がありませんので、さらに丁寧に言い換えてみましょう。
「お待たせしました。時間に少し遅れてしまいましたね」
「いえいえ。暑い中ありがとうございます。どうぞこちらにお掛けください」
このような言い換えがスマートですね。
「お客様をお連れしました」も失礼?
同様に、失礼に当たるとして、言い換えが推奨されるものとして「お連れしました」があります。
「つれ」の語感
伴われてその人と行動を共にする人のことを「連れ」と呼びます。「子連れで行く」と言えば、子どもが「連れ」ですし、先ほどの例ではありませんが「犬を連れて入れますか?」というと、犬が「連れ」です。「あら、お連れ様は?」と言えばいつも一緒に連れ立っている人のことですね。
このように「連れ」には、その人と同等、もしくはやや下の存在を表現する言葉です。
ですから、目上の方やお客様などには使わない方が良いのです。
「お連れしました」は失礼。では言い換えは?
この例で考えてみましょう。
「お客様をお連れしました。」
このような時には、どのような言い換えをしたら良いでしょうか。
このような場合は、「お連れする」を別の表現で考えるとすぐに分かります。今度は類義語辞典で引いてみましょう。
この場合の「連れる」は「誰かをどこかに連れて行く 導く」という意味です。
言い換えの言葉として、誘導、案内があります。
weblio類語辞典
「お客様をご誘導しました。」
「お客様をご案内しました。」
このような言い換えが可能だということが分かります。
後者の「ご案内」の方が一般的。これをさらに丁寧に表現してみましょう。
「お客様をご案内いたしました。」
となります。特に「自分が案内したんですよ!」という表現を包み隠すのであれば、お客様がいらっしゃったことを前面に出し、
「お客様がお見えになりました」
という言い換えも可能です。
敬語の表現がなんだかしっくりこない、なんだか失礼に聞こえる、このような場合は、言い換え可能な言葉がないか探してみると良いでしょう。
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