
#5セックスレス。したい私と、したくない夫。【40代、50代の性のリアル】
何度もふたりで話し合った
筆者はこれまでハウツー・セックス本を何冊か作ってきたが、そうした本では「セックスレスになってから復活させるのはとてもむずかしいので、そうならないように予防を」と書いてある。さらにはセックスレスにならないためにも、「ふたりでよく話し合いを」と続く。けれど、話し合うべきだとわかっていてもそう簡単に話せない、という声が多い。しかしサトミさんは、
「ウチは膝を突き合わせて話し合いましたよ、何回も。けれど、どれだけ話しても平行線。する日程をあらかじめ決めておこう、っていう案も出たんですけど」
忙しいふたりだから、その日に向けて予定を調整していくという考えなのだろうか。
「はい。でも、それって味気ないねって話になっちゃって」
そしてこの方法では、セックスレスになった理由の根本的解決にはつながらない。
「夫は、もう性欲がないそうですよ。私も結婚当初と比べると減ってきてはいますが、それでも週1ぐらいではしたい。いまのままでは欲求の持って行き場がないから不倫するしかない、と考えたこともあります。マッチングアプリを試したこともあるんですが、会うまでにも至りませんでした……それというのも、私が潔癖症だからです」
子どものころの影響が今も
恋愛やセックスに対して潔癖で、それは子どものころの体験に根ざしているーーとサトミさんは自分のことを分析する。サトミさんの母親は、常に男性に依存して生きていた。家にもしょっちゅう男性を呼び入れ、子どもの前でもお構いなしでイチャイチャしていた。小学生だったサトミさんは、母と男とのセックスまで目撃している。
これだけでも虐待に相当するが、母の再婚により義理の父親になった男性から性虐待を受けた。サトミさんはそのときから男性を信じられなくなった。
「10代のころは意識して男性を遠ざけたこともありますが、そのうち彼氏ができ、セックスを知って潔癖症も少しはやわらぎました。だけどいまも、すごく性にとらわれてしまうところがあるんです。性虐待を受けた人によく見られる現象らしく、潔癖症になったり依存症になったりするそうです。私の場合はその両方。仕事にはずっと依存しているし、若いころからセックスにも依存してきました」
セックスを求める理由
性依存と聞くと「不特定多数の人と関係をもつ」と思われそうだが、サトミさんの場合はそうではない。潔癖症なので相手は交際相手や夫に限る。が、常にセックスにとらわれ、それがないと不安になるのだという。
「虐待の影響からなのでしょうが私は自己肯定感が低くて、”どうせ自分なんか”という気持ちが強いんです。でもセックスしているときだけは、それがない。行為に没頭していれば気持ちよくてそんな自分を忘れられるし、そのときは相手が自分だけを見てくれていると実感できるんです。ああ、いま認められているなぁって」
筆者がかなり立ち入ったことを訊ねても、すべてにハキハキと答えてくれるサトミさん。初対面の印象だと、自信がない女性とは思えないが。
「交際相手の前でも最初はそうなんですよ。彼らは『あれ、自立した女の子だと思っていたんだけど、実はこんなに不安定なの?』って思っていたはず。つき合いはじめのころはお互いに盛り上がっているから私も安定しているんですけど、慣れてきて会話が適当になったりすると、もっとかまってよ、私を見てよとアピールをしてしまう。そのひとつとして、セックスを求めるんです」
私の中でのバランスの不整合、そして不完全燃焼
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