「折り入ってご相談」が失礼に当たるタイミングって?NG敬語の言い換えは
「折り入ってご相談がございます」
「微力ながらお手伝いさせていただきます」
このような言葉は、ビジネスシーンではよく見られます。しかし、本来の言葉の意味を知らないと、使うタイミングを間違えたり、使うシーンを見極められなかったりして、むしろ失礼になることがあります。
このような微妙にあらたまった言葉は、どのようなタイミングやシーンで使えばベストなのでしょうか。
「折り入って相談」はきちんと相談を取り付けたいときだけ
最近「折り入って」の重みがなくなってきているように感じます。
○○ちゃん、折り入って相談なんだけどね、外に出た時にこれ買ってきてくれない?
こんなふうに冗談めいて使うこともあるでしょう。これは、冗談だということがわかって使っている例だと思いますが、本来「折り入って」は、折り目正しい言葉です。そして、きちんとしたタイミングやシーンで使われる言葉なのです。
折り入る
「折り入る」には、あらかじめ決められた言葉を和歌に差し込むという意味もあります。また、深く心を込めるという意味があります。
折り入って
副詞。心をこめて人に頼んだり相談したりする時にいう語。切に。ぜひ。たって
広辞苑第6版
「じっくりとご相談させてください」よりも、時間がかかるもので。「改めてご相談させてください」よりも、約束を取り付けるものという雰囲気があります。
「折り入って」ではなく「改めて」「じっくりと」で
「折り入って」は、相手にも準備の必要性を感じさせる言葉です。「折り入ってお願いがあります」と言われたら、そのお願いを受け付ける側で、心の準備と時間の確保が必要な言葉なのです。
ですから、気軽に使う言葉ではない。何回も使う言葉でもない。ある程度の覚悟を持って伝える言葉ということになります。
「折り」という言葉が着いています。これは着物の折り目からも連想される言葉です。和服である着物は、洋服と違い、ハンガーにつるして保管しません。きちんとたたんで保管しますが、そのとき折り目を間違えるとぐしゃぐしゃになってしまいます。折り目正しくたたむと、きちんとした形に整い、箪笥(たんす)にしまうことができます。
そういう意味で考えると「折り入って」も折り目正しい人が使う言葉のように感じますよね。
このように、「折り入って」は、折り目正しい言葉であり、何度も使えない言葉です。ですから、相談を受ける相手にも心構えをお願いするような、重要なシーンと逼迫(ひっぱく)したタイミングで使うようにしましょう。それ以外のところでは、先ほど述べた「じっくりと」「改めて」ぐらいの言葉で十分です。
本当に助けてほしいときに「微力ながら」の応援はがっかり
謙遜の意味で使う「微力ながら」ですが、こちらもシーンとタイミングを間違えると相手を落胆させてしまいます。
人生をかけた再スタートの時や、ここぞという生き方の転換期に、周囲の人に報告をしたり、助けを求めたりするときがあります。その時に「微力ながら応援させていただきます」のようなお返事をいただくときがありますよね。メールなど、閉ざされた場面でのこの言葉は、謙遜として受け止めれられますし、実際にさらなる力添えが必要であれば、改めてお願いするまでです。
ところが、SNSなどのコメント欄で「微力ながら応援させていただきます」と書かれてしまうと、それに倣う(ならう)ように、同じようなコメントが続いてつくことがあります。これは気持ちがありがたい分、邪険にできず、実は大迷惑な話なのです。
「微力ながらも全力で」など、本気をプラスすればOK
では、どのように使えば、真意が伝わるのでしょうか。その場合は、この言葉に続き、こちらのやる気をプラスして表現することが大切です。
「微力ながら応援させていただきます」という表現は「させていただく」問題も含んで、慇懃無礼な印象を与えます。あまりにスムースになってしまった言い方に、飽きているところもあるのでしょう。
微力ながらも、全力で応援いたします。
微力ながらも、尽力いたします。
このように、こちらのやる気、本気がわかる言葉をプラスすると良いでしょう。
参考「させていただきます」はNG!丁寧すぎて逆に無礼な敬語7選」
NG→「明らかに微力しかない」若手は違う表現を
また、本当に微力しかない人、例えば年の若い人が使うと、リアル過ぎて笑えないという事態になります。
この言葉はもともと自分を謙遜して言う言葉です。本当は力もある、役に立てるだろう、そして本当に役に立ちたいと思っているという人が使うとしっくりくる言葉です。しかし、例えば、入社したばかりの新人が、取引先の大きな企画の際に言うせりふとしてはふさわしくないというわけです。
若い人は、若いエネルギーをアピールし、元々ない力を、形式的に謙遜したりせず、「精一杯力になりたいと思っている」というテイストを出した方が好まれるようです。
「折り入って」や「微力ながら」のように、シーンやタイミングを間違えると、失笑を買うことになってしまいます。自分の立場をよく考え、また、使う前に、本来の意味、使用例などを調べる余裕も必要ですね。
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