「褒められなくても満たされる人」は、他人の評価が気になる人と何が違う?エッセイスト・一田憲子氏に学ぶ、「大人の承認欲求」との向き合い方

2026.05.20 LIFE

一生懸命やっているのに、誰にも気づいてもらえない。褒められたら救われるのに、評価がないと途端に落ち込んでしまう──そんな経験はありませんか。承認を待つほど、心が疲れてしまう人も少なくありません。

この気持ちの“揺れ”に対し、エッセイスト・一田憲子氏は「褒められるように」を「喜んでもらえるように」ひっくり返すことで、気持ちが軽くなったと語ります。

本記事では、一田氏が60歳を過ぎ、「大人の承認欲求」と向き合う方法を綴った著書から、「自分の心をより健全に穏やかに保つスキル」を紹介します。

※本記事は書籍『褒められなくても、生きられるようになりましょう』(一田憲子:著/主婦の友社)から一部抜粋・編集したものです

 

「褒められるように」を「喜んでもらえるように」にひっくり返す

「もう、どうして私ばっかりこんなに働かなくちゃいけないのよ!」「なんで、手伝ってくれないかなあ」「ちょっとぐらい『私がやっておきます』って言ってくれればいいのに」。忙しくなると、一緒に仕事をしている仲間に、こんな言葉を吐きたくなります。そんなとき、いつも思い出しておまじないのように唱える言葉があります。

それが、勝間和代さんのメールマガジンの中にあった「リーダーシップの正体のひとつはGIVEの5乗である」というもの。「察してやってくれればいいのに」と思っても、ほとんどの人は面倒な仕事を進んで引き受けたり、忙しい中で時間を差し出したりしてはくれません。そのたびに「あ〜あ、どうして私ばっかり」とイライラします。

ところが、勝間さんはリーダーとなる人は、「 GIVE=『与える』の5乗をしなくてはいけない」とおっしゃるのです。つまり、 GIVE× GIVE× GIVE× GIVE× GIVEってこと。リーダーは自分で動かず、人に託さないと……と聞くけれど、実はいちばん大切なのは、周りに「与え続ける」ことだというわけです。

この言葉を知ってから「私がいちばん動こう!」と肝に銘じるようになりました。不思議なもので、仕事がパンパンで焦っているときに、「どうして誰も手伝ってくれないの?」と他人への不満を持っているとイライラするけれど、「 GIVEの5乗で!」と自分に言い聞かせると、「よし!」と前向きに駆け出すことができます。

「褒められたい」という言葉も、この方法でひっくり返せばいいのかも?と考えました。「褒められたい」ではなく「喜んでもらいたい」へ。「この棚の上を片付けておけば、みんなに喜んでもらえるかな」「この表を作成しておけば、あの人がやりやすくなって喜んでくれるかな?」といった具合です。

雑誌づくりでも「こんな構成だったら売れるかも」「こんな企画だったら評価が高いかも」から、「こんなページがあったら、読者の方々が喜んでくれるかも」へ。言葉で書くと、なんだかきれい事のようですが、この発想の転換はなかなか大きいと感じています。

「褒められる」は、最終のジャッジを相手に委ねることになります。頑張って何かを成し遂げたあと、「褒められる」か「褒められない」かは相手次第。一方で「喜んでもらう」の主体は自分にあります。あの人が何に困っていて、何をしてもらったら嬉しいのか?と想像力を巡らせて、自分ができることを考えます。

仕事で大きなプロジェクトを任されたとき、「上司に褒められるように」「会社の人に認められるように」と思うと、ストレスで自分を消耗してしまいます。そんなとき、思考をくるりとひっくり返し、「誰かに喜んでもらうために」と考えてみたら……。

「じゃあ、誰かって誰?」「その人が喜んでくれることって何?」と、行動のための問いの矢印は自分に向かいます。「褒められる」というジャッジは、一瞬のもの。仕事をやり終えたあと、褒められて大喜びし、褒められなくてがっかりし、それでおしまい。でも、「喜んでもらう」には、期限がありません。「これで伝わらなかったら、じゃあ、どうしたら相手の役に立つのかな?」「もうちょっと方法を変えれば、あの人の心に届くのかな?」と、掘り続けることができます。

ちょっと視点を変えれば、一日の中に「誰かに喜んでもらえること」はたくさんあります。「あの人、余裕なさそうだから、私がまとめの書類を作っておこうかな?」「夫が風邪気味だから、今日は温かくて滋養のあるものを作ろうかな」「今日会う友人は、近所のあのお店のケーキが好きだったから買っていこうかな」などなど。

そして、そのために動くとかなり忙しくなります。エクセルで表を作ったり、おでんを煮込んだり、自宅からケーキ屋さんまで自転車を飛ばしたり。でもそんなバタバタは「この仕事の評価はどうだろうか?」という「待ち」の態勢より、ずっとワクワクすると思うのです。

「褒められたい」というのは「自己承認欲求」です。自分が頑張ったことを誰かに認めてもらいたい……。その承認の鍵を相手に渡す前に、自分で受け取ってしまおう、というのが「誰かに喜んでもらう」という行為。それは、「やってもいいけど、やらなくてもいい」ことです。「やる」と決めるのは自分自身。だからこそ、「よし、私は私ができることをやった」と自分で自分を認めることができる気がします。

「褒められる」を待つよりも、誰かを喜ばすためにできることを考える。その変換は、自分の心をより健全に穏やかに保つスキルだと思います。

掃除を終えたあと、来客の15分前などに、ホワイトセージをたく。清々しい香りに頭がすっきり。(撮影/馬場わかな)

ここまでの記事では、「褒められるように」を「喜んでもらえるように」にひっくり返すという発想の転換についてご紹介しました。つづく関連記事では、「みんなと違う」を恐れず、自分らしさを育てていくための考え方をお届けします。
つづき>>個性とは「トイレで流しても流しても流れないこびりカスのようなもの」?片桐はいり、新しい学校のリーダーズに学ぶ、「自分らしさ」の見つけ方

 

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著者略歴:一田憲子(イチダ・ノリコ)
1964年京都府生まれ。編集者・ライター。OL、編集プロダクション勤務を経てフリーライターとして独立し、女性向け雑誌・書籍などの取材・執筆で活躍。暮らし、おしゃれ、仕事、人間関係、年齢の重ね方などについての、日常の中の揺らぎや気づきを丁寧にすくい取る文章で、幅広い共感を集める。『暮らしのおへそ』『大人になったら、着たい服』(ともに主婦と生活社)を立ち上げ、イベントも開催。『最後の答えは、きっと暮らしの中にある。』(内外出版社)、『小さなエンジンで暮らしてみたら』(大和書房)など、著書多数。自身のWebマガジン『外の音、内の香』では、さまざまなコンテンツを配信。ライター塾を主宰し、「書く暮らし」の楽しみを伝えている。

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