「誰かのぬくもりを求めていいですか?」40歳・夏海、アラフォーの恋愛事情
別れのシーンに出くわした私は、そこに釘付けになった。
まるで映画のように美しいシーンだった。
巻き髪が美しい女性と、ふわっとした長いグレーのシャツを羽織った長身の男性。
「今日はありがと」
すぐに彼女は顔を上げ、微笑み、髪をかきあげた。
「またな」
彼女は軽く手を上げ、足早に去っていく。
その姿を見送った彼は、不意に私のほうを見た。
「気になる?」
彼は意味ありげにこちらに微笑みかけた。
私は慌てて首を横に振った。
その時に店の看板が目に入った。
そこは、ホストクラブだった。
つまり、今出てきた綺麗な女性は、お店のお客様で、私に話しかけてきたのは、ホスト……。
繁華街を一本入ると、こういう光景があるのかと私はたじろいだ。
私が知らない世界。
そしてこれからも関わりがないだろう世界……のはずだった。
「気になるなら、寄ってく?」
そのホストの大きな瞳は、私を捉えて離さない。
彼が私に、ゆっくりと手を差し出してくる。
まるで、王子様が、プリンセスに手を貸すかのように。
私は反射的にそこに自分の手を重ねていた。
彼の手は、とても温かかった。
それは、私が求めていたぬくもりだった。
誰かのぬくもりを求めていいですか?40歳・夏海(2)に続く-【40女の恋愛事情・story6】 毎週火曜18時更新
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