「親が知らぬ間に起こる学級崩壊」要注意なクラスの特徴は?全国の小学校で10年以上行った飛び込み授業から見えてきたこと【菊池省三先生インタビュー】
「学級崩壊」。どこか他人事のように聞こえるかもしれません。
「教育虐待」。まさかうちの子どもの学校で、と信じがたく思うかもしれません。
NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』でも取り上げられ注目を集める、教育実践研究家・菊池省三先生をご存じですか?全国の小学校で、10年以上、約3,000時間もの飛び込み授業をし、そこで目の当たりにした「教育虐待」とも言わざるをえない現状に警鐘を鳴らしています。新刊『足型をはめられた子どもたち』の中で、自身が見かけたショッキングな光景についてこう語っています。
「2016年、四国のある小学校の2年生の教室を訪れたとき、私は目を疑いました。子どもたち全員の机の下に、足型が置かれていたのです。『何ですかこれ?』と尋ねると、学校を案内してくれた先生はこう答えました。『この位置に足をちゃんと置いて座れ、という指示なんです』
椅子の座面を見ると、クッションではなく滑り止めのマットのようなものが敷かれています。『おしりをこの位置に置きなさい』『動かしてはいけません』ということです。思わず、〝教育虐待〟という言葉が頭をよぎりました。『そこにじっとして座って、学力を上げなさい』と、学校側から強制されているとしか見えません」。
「教育虐待」。それは何も過剰な叱責や体罰のみに限りません。菊池先生はこう定義づけしています。
「不適切な指導により、子どもたちが本来受けられるべき教育が受けられないのなら、それは虐待です。私は学校での教育虐待をこう定義します。
『適切な教育を受ける権利を奪い、健全な人間関係を学ぶ機会を提供しない』こと。つまりは、学校において、子どもの多様性を認めず、型にはめようとする指導を行うこと。自ら考える力がつくコミュニケーション能力を育てずに放置することです。さらには、不適切な指導で子どもを追い詰めること。そして何より、健全な人間として成長する機会を奪ってしまうと危惧しました」。
自分の子どもが通う学校で、このような教育がなされていたら?
「現職の先生方は、外の世界に教室で起きていることをなかなか発信しない」。だからこそ、先生が見てきた現状を私たち親自身も知るべきです。
今回は、全国1位の人口増加率をはかり、その学校教育にも注目が集まる流山市内の小学校に訪問。菊池先生の飛び込み授業にお邪魔し、インタビューをさせていただきました。
まず最初に、学級崩壊がかつてほどニュースにならないのは、「なくなった」のではなく、「一般化してニュース性がなくなっただけ」と菊池先生は指摘します。しかも、暴動が起きるような分かりやすいものだけでなく、静かに浸透する「冷たい崩壊」や一見そうは見えない「明るい崩壊」があるといいます。さらに、特別支援学級急増の裏に隠された、学校現場の「排除の空気」という深刻な現実にも迫ります。
学級崩壊はもう特別なニュースではない。親が気づきようのない「明るい崩壊」という危機
-「学級崩壊」というと、昔のイメージでいえば不良が多い学校で「窓ガラスが割れる・ものが飛び交う」のような授業が成立しないようなイメージです。今の「学級崩壊」とはどういう状態を指すのでしょうか。
「“教師の指示・指導が入らなくなって授業が成立しづらい状態”というのが当初の定義で、今もそれでいいんじゃないかと思います。ただ、原因が若干変わってきているというのが今の状況ですね。
以前、テレビ番組に出させていただいたときに、学級崩壊がテーマで『最近あまり聞かなくなった』という話が出たんですよ。そのときに私がお伝えしたのは、『もう一般化した。だから特別なニュース性がなくなった。でも実際は多い』ということです。
崩壊には4つのパターンがあると昔から言っています。
1つ目は、先生のことが嫌いで暴言・暴力が飛び交う崩壊。2つ目は、先生のことが嫌いで無視して静かに浸透していく冷たい崩壊。小学校の低学年にも案外あるんですよ。3つ目は、先生のことが嫌いなわけではない、むしろ大好きなんだけれど、規律がなさすぎて授業が成立しづらい状態。例えば、若い先生が一部の規律を守れない子にずっと対応していると、他の子たちまで「私も私も」となって先生は好きだけど集団の規律がつかないというパターンです。
4つ目は明るい崩壊と呼んでいるものです。小規模校で、先生もいい、生徒指導的な問題は何もない、少人数だから授業も進む。でも、保育所から中学卒業までずっと同じメンバーで序列が決まっていて、一人一人の自己が確立されないまま卒業する。そしてどうなるかというと、高校に行って多様な集団と出会ったとたん、大勢の中で揉まれて折り合いをつける経験がなかったために、ポキッと折れてしまうんです。ある中学校の管理職の先生に聞いたら、大規模校の卒業生と比べて、小規模校出身の子のほうが高校中退率が2割から3割高いとおっしゃっていました。
だから、小規模校の場合は特に、意見を出し合って折り合いをつけるようなコミュニケーションの経験をさせないと、それに対応できない子どもになってしまうわけです。社会に出てきたらそんなことばかりなのに。これも本来は子どもが受けるべき適切な教育の一つですよね。
つまり、『窓ガラスが割れる・ものが飛び交う』という分かりやすい崩壊だけではないんです。一見問題なさそうに見えていても、小学校の間に身につけるべき能力が身についていないという状態も、広い意味では崩壊しているといえます」
ー学級崩壊は親が気づきづらい側面があるんですよね。もし仮に崩壊していた場合、そのサインや兆しはありますか?
「私が見てきた中で、学級崩壊が起きているクラスに見られる共通点は、まず『授業が進み具合が遅い』です。
私が常に意識している『2・6・2の集団の法則』というのがあって、上位2割が積極性に優れた優秀なグループ、中位6割が平均的なグループ、下位2割が積極的に行動しないグループという法則です。本来は上位2割に、中位6割の子たちを近づけることを目指すのですが、下位2割のほうに変に手厚くしてしまう。そうすると残りの8割の子たちは足踏み状態になってしまうんです。つまり、嫌な言い方をすると、担任の先生が『積極的に行動しない2割の子たちに対して私はこんなにやっている、大変なんです』とおっしゃるのですが、そのやり方に問題があって、クラスが悪い方向にいってしまうことがあります。
例えば体育館で集会をやりますよね。1学期は、先生が先導して連れていきます。それを3学期まで同じようにやっていたら、問題です。
また、授業参観に行かれたときに、学習態度がいいクラスは授業のスピードが軽やかで、テンポよく進んでいっているはずです。逆に、授業の進みが遅くて成立していない場合、それでも子どもたちは分からないんですよ。スピードが遅いのに、ちゃんと座っておけと言われたら、まじめな子はガマンできても、そうでない子は耐えられない。だから立ち歩く子が多くなる、そんな特徴もあります。あと、プリントが落ちていたりだとか、教室が汚いという特徴もありますね。あとそういったクラスは宿題が多いというケースもありますね」
さらに菊池先生が今学校に抱く危機感としては、訪れるたびに「特別支援学級」が増えているという学校が存在することです。
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