娘の合格を願うほど、離婚できなくなる?レス歴10年の46歳夫が「たぶん、僕は別れようと言わない」と話す理由

2026.11.06 LOVE

前編に続き、奥さまとの関係に10年間悩みつづけてきたマサノリさん(仮名・46歳)の胸の内を追います。娘さんの中学受験が終わったら離婚を切り出すと決め、「終わりが見えた」ことで一度は気持ちが軽くなったマサノリさん。しかしその決意は、離婚後の生活を具体的に計算したときから、揺らぎはじめます。

<<前編を読む
『「娘が合格したら、離婚を切り出すつもり」レス10年の46歳夫。受験を前に、誰にも言えずに決めた「期限」』

【無子社会を考える #36】後編

※個人が特定されないよう設定を変えてあります
※写真はイメージです

 

 

電卓を叩いたら、私立だと毎月赤字でした

離婚すれば、娘さんは奥さまと暮らすことになるとマサノリさんは考えていました。「娘の生活は、ずっと妻が見てきましたから。共同親権が選べるようになったと聞いても、娘と暮らすのは妻だろうと思っていました。僕が家を出て、近くにアパートを借りる。それしかないと」

 

マンションのローンは、マサノリさんが払い続けるつもりでした。娘さんの住む場所を変えたくなかったからです。そこに自分のアパートの家賃と生活費、養育費が加わる。奥さまの収入は、週3日のパートで月に8万円ほどです。

マサノリさんの手取りは月に約42万円。ローンの返済が月11万円、裁判所が公表している算定表に当てはめた養育費は月10万円前後になる見込みです。残りで自身の生活をまかなえば、手元にはほとんど残りません。「スマホの電卓で、何度も計算しました。公立の中学に行くなら、ぎりぎり回るんです。妻も働く日を増やしてくれれば、なんとかなる。でも私立だと、どう計算しても毎月足りない」

 

文部科学省の「子供の学習費調査」によると、私立中学校に通う子どもの学習費は年間で平均約156万円と、公立の約3倍です。娘さんの第一志望校も初年度だけで100万円を超えます。「調べたら、算定表の養育費には私立の学費までは含まれていなくて、そこは別に話し合って分担するものらしいんです。分担といっても、払えるのは僕しかいない。でも、その分のお金がどこからも出てこないんです」

 

「妻は受験の送迎や面談に合わせて、パートを週5日から3日に減らしたんです。44歳で、10年以上フルタイムから離れている。いまから正社員で、と言うのは簡単ですけど、現実的じゃないことは僕にも分かります」

 

 

合格を願うほど、出口がふさがっていく

電卓を叩き終えたとき、マサノリさんは自分が置かれている状況にようやく気づいたといいます。「娘が合格したら、離婚できなくなるんです。正確に言えば、離婚はできる。でもそうしたら、妻と娘の暮らしを確実に落とすことになる。学費のために妻を無理に働かせるか、せっかく入った学校を辞めさせるか。どちらも、僕のわがままのためにやらせることになります」

 

娘さんの合格は、マサノリさんにとっても心からの願いでした。この1年半、週に3回の塾の送迎を担い、夜は算数の答案の採点をしてきた。模試の結果が上がれば、素直にうれしかったといいます。

 

首都圏では、私立・国立中学の受験者数が5万人を超え、小学6年生のおよそ5〜6人に1人が受験する時代です。塾の送迎、弁当、模試の付き添い、志望校の説明会。中学受験は、子ども1人の挑戦というより、両親が役割を分け合って何年も続ける家族の事業になっています。マサノリさん夫婦にとっても、受験は夫婦が同じ方向を向いていられる、ほとんど唯一の場所でした。

 

「でも、成績が上がるたびに、自分の出口がふさがっていく感じがするんです。娘の合格を祈ることと、自分がこの家でこのまま暮らし続けることが、同じことになってしまった。それを考えると、模試の結果を見て喜んでいる自分が、何なのか分からなくなります」

 

一度だけ、「落ちれば」という考えが頭をよぎったこともあるといいます。「すぐに打ち消しましたけど、考えたこと自体が許せなかった。娘はあんなに頑張っているのに。そんなことを考える父親が、離婚したいなんて言う資格があるのか、と思いました」

 

 

▶レスだからといって家族を壊すのか、と自分に聞いてしまう

続きを読む

スポンサーリンク