あまりに深い「女の欲望」…そんな二股、許されるわけがないでしょう【不倫の精算#47】後編

2022.04.21 LOVE

前編「【不倫の精算#47】前編」の続きです。

後ろ指をさされる関係とわかっていても、やめられない不毛なつながり。

不倫を選ぶ女性たちの背景には何があるのか、またこれからどうするのか、垣間見えた胸の内をご紹介します。

 

不倫相手と独身男性と、「二股」に悩む独身女性

Dさんがカップに指を伸ばしたのを見て、

 

「でも、その人と付き合うなら不倫はやめないと」

 

と、強い口調で言ってみた。

 

そんなことは本人が一番よくわかっていることだけれど。

 

「旅行の約束なんか、キャンセルしちゃえばいいよ。

好きな人ができたって正直に言えば、向こうも追ってはこないでしょ」

 

それが不倫なのだ。

独身側が「まともな恋愛」を手にする機会を邪魔できないのが既婚者側なのだ。

 

Dさんが抱えているのはおそらく罪悪感だろうと思いそう言うと、Dさんが顔を上げた。

こちらを見返した彼女の瞳には、今日はじめて目にする光があった。

 

「今日ね、これから彼と会うんだ」

 

「え?」

 

唐突な言葉に面食らって聞き返すと、

 

「その後で、マスターとご飯に行く約束もしているの。

私、ふたりの男とコソコソ会っていて、何しているのだろうってずっと苦しくて。

何か、勇気が湧いてきた。

ありがとう」

 

Dさんは早口にそこまで一気にしゃべると、手に持ったカップの中身をぐっと飲み干した。

 

「え、ちょっと待ってよ」

 

帰り支度の気配を感じて慌てて言うと、Dさんはテーブルのソーサーを見つめながら

 

「どちらとも、なんて、無理よね。

それは願ってはいけないことよね」

 

とつぶやいた。

 

男の間を行き来するバツイチ独身。本音は「どちらも欲しい」

「……」

 

それが本音なのか。

 

帰るのかと思ったDさんは、カップを戻すとまた黙り込んだ。

上がった両肩から緊張していることが伝わり、この言葉を一番言いたかったのだと気がついた。

 

「……」

 

力が抜けて、「どちらとも関係を続けたいなら、私は止めないけれど」と静かに言うと、彼女はゆっくりとこちらを見た。

 

「二股なのに?」

 

強張った表情は、責められるのを恐れているようだった。

 

既婚者との不倫と、独身男性との普通の恋愛。

その両方を手にしていたいと思う自分の異常さが、よくわかっているのだ。

 

「二股でも何でも」

 

視線を外し、自分のカップの中を覗きながら続けた。

 

「責任を取るのは自分だからね」

 

冷たい響きだと自覚できたが、そうとしか言えなかった。

 

「不倫は無理」、電話で彼女はそう口にした。

好きな人ができたから不倫相手とは別れたいと、この時間の最初に言った。

背中を押してほしくて呼び出されたのかと思っていたが、彼女の本音は正反対のところにあった。

 

それなら、選択は彼女に任せるしかない。

「あなたがこう言ったじゃない」と責任転嫁されるのを避けるには、続けろとも止めろとも言わず、彼女の本音を受け止めるだけが最善なのだ。

 

ねえ、あなたにとって「好きな人」ってどんな存在?

こちらの態度が変わったことに気づき、Dさんから出たのは

 

「軽蔑するよね、不倫もして別の男とも付き合うとか」

 

という、自嘲とも投げやりとも取れる言葉だった。

 

「……」

 

どうでもいい。

軽蔑なんてしない。

問題はそこじゃない。

 

「昔さ」

 

ぽんと出た言葉だったが、Dさんの体がびくりと揺れるのが視界に入った。

 

「好きな人ができないって悩んでいたことがあったよね」

 

「……」

 

「好きな人って、どんな存在なのだろうね」

 

淡々と続けながら、テーブルの隅に置かれた伝票に視線をやった。

 

「……」

 

Dさんは黙ったままだ。

 

「さっき、その人と付き合うなら不倫はやめなよって言ったけど、あなたの本音が違うなら聞く必要はないからね」

 

以上。

 

伝票をつかんで立ち上がり、会計を済ませてドアを開けながらテラス席に目をやると、入ってきたときと同じくぼんやりと背中を丸めるDさんの姿があった。

 

自分の本音を隠して人に選択させるのは依存

不倫している人を「やめておきなよ」と止めることはあるが、このケースは別だった。

 

本人に自覚がないまま間違った道を進んでいるのなら、口を挟むのが冷静を取り戻す手段になるかと思うのだが、本音を隠したままで選択をこちらに委ねようとする人は、何の覚悟も持っていない。

 

Dさんは、おそらく最初の電話で言った通り、不倫をやめる方向に気持ちは流れていたはずだ。

だが、いざ他人からそれを強く勧められると、抵抗する気持ちが湧くのだ。

本音は違うからだ。

それを手放したくないから、土壇場で正反対の言葉が飛び出す。

 

本当は別れたくないし、新しくいい関係になった男性とも何とか付き合っていきたい。

こんな汚い願望を人に知られたくないと思う一方で、知られた上でどうすればいいかアドバイスがほしい。

せめて素直にそう言ってくれていたら、「不倫相手とは別れるべき」とはっきり言葉を返せるが、本音をこちらに汲ませて選択まで求めるのは、フェアじゃない。

 

それは依存だ。

その姿勢が、不倫でも恋愛でも出てくる。

泥沼と想像がつくはずなのに答えが出せない時点で、責任を取る覚悟など持っていないのだ。

 

人間関係はどこまでも自己責任であり、その自覚が自分にとって正しい選択をさせる。

 

アクセルを踏みながら、Dさんが納得のいく道を歩めるよう、祈るばかりだった。

このシリーズの一覧

 

この記事の前編>>>2人の男に求愛され続けたい…?不倫のカレと独身のカレ不倫の精算#47】前編

 

◆不倫の清算が電子書籍になりました◆

『不倫の清算』ひろたかおり・著 1200円(10%税込)/主婦の友社 こちらから

*キンドルアンリミテッド会員なら無料でご覧いただけます こちらから

続きを読む

【編集部からアンケート】 よりよいページづくりのために、
「あなたのこと」をお聞かせください!

▶ご協力くださる方はコチラから

 

スポンサーリンク

スポンサーリンク

スポンサーリンク