「プレゼントの山」に麻痺し、彼の異常さに気づけない彼女は【不倫の精算・リバイバル2】(前編)
どうして彼女たちは妻ある男と関係を持つのか。
彼女たちは、幸福なのか。不幸なのか。
恋愛心理をただひたすら傾聴し続けたひろたかおりが迫る、「道ならぬ恋」の背景。
「彼に従うしかない」という束縛
— 待ち合わせ場所のレストランに現れたB子(42歳)は、ジーンズに包まれた細い足で大股に歩きながら、ライダースジャケットの上半身を伸ばしてこちらを確認すると急ぎ足で近寄ってきた。
「遅くなってごめんなさい、お客さんがいて」
席に座ると置かれていた水を一気に飲み干す。その手首にはレザーのブレスレットが巻きついているのが見えて、あぁ、昔はシルバーの細い鎖のやつだったっけ、と改めて彼女の「変化」を思った。
大手チェーンのファストファッション店で契約社員として働くB子は、独身で実家暮らし。年老いた母とふたりで生活していて、父親は彼女が小さいころに離婚している。体が丈夫でない母親は働くことができず、わずかな年金とB子の収入だけが頼りの毎日だ。
「まぁ贅沢しなければ生きていけるよ」と言いながら、以前の彼女は節約に気を使い、友人たちとの付き合いも無理のない範囲で楽しんでいた。
欲しい服はしっかり吟味して安売りを狙って買う。職場には毎日母親の昼食と一緒に作るお弁当を持参して、お金のかかる遊びは控える。そんな女性だった。
ところが今は違う。彼女が着ている服はすべて既婚の「彼」から贈られたものだ。ブランドもののジャケットもジーンズも、ブーツも彼女の好みとは思えない男っぽさのあるデザイン。若い頃に無理して買ったと言っていたピンクサファイアのはまったリングは、今はターコイズのごついデザインのものと替わっている。
リングもいくつ目になるかわからないね、と言うと、
「要らないって言うのにあの人が買ってくるから……」
眉を下げて彼女は笑った。彼からのプレゼントのおかげで服にかけるお金が減り、家計はだいぶ助かっている。デートのときもお金はすべて彼が払ってくれて、B子が負担することはない。
確かに楽なお付き合いかもしれないが、その代わり彼女は「彼に従うしかない」という束縛に苦しんでいた。
注文しようか、と座り直したB子は、隣の椅子に大きな紙袋をどん、と放った。
次のページ▶▶彼が好きだけど、とっても怖い。依存から脱却するために彼女がとった手段とは…
取材・文/ひろたかおり
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