男性更年期チェック「男性ホルモン足りてそうな50歳男性」が受けたらどうなる?結果は意外な【男性更年期】

ここ数年で認知度が上がっている「男性更年期」。パートナーや同僚・友人など「周囲の女性」がその知識を持つ重要性も知られてきています。

 

男性更年期では、40代以降徐々に男性ホルモン(テストステロン)値がなだらかに下がっていくため、寿命を迎えるまでのどのタイミングでも更年期症状に見舞われる可能性があります。テストステロン減少で起こる代表的な症状にED(勃起障害)がありますが、これは60歳代の日本人の場合は60%以上に見られる「ごく一般的な」現象。そして、女性と違い「いま男性更年期症状のある男性は、治療をしない限りは寿命が尽きるまでそのまま回復しない」のです。

 

男性更年期にまつわる自覚症状が「とてもある」「ややある」主婦の友社の男性編集者2名が、実際に男性ホルモン値を含む検査を受け、治療の経過を公開することに。ご自分の、あるいはパートナーの状況と照らし合わせて受診目安としてください。

1人め『50歳男性2名が「実際に男性更年期の検査を受けてみた」結果と「起きたこと」は?』に続き、2人めの後半記事です。

(トップ画像/医師・堀江重郎先生)

ぱっと見では男性更年期から遠そうな50歳。検査に参加してもらったが、実は…?

2人めの受診者は編集者K氏。50歳、身長173㎝、体重65㎏。妻、中学生・高校生の息子と同居。普段のファッションはストリート系、発するエネルギーも高い「より男性的な」編集者です。

 

N氏との対照として、ぱっと見で「おそらく男性更年期的な状態にはないだろう」人物に協力を得たのですが、本人に話を聞いてみると「とはいえ無関係では全くない」とのこと。

 

なんと、AMSスコアは37点。男性更年期の自覚があるNさんの36点より、わずか1点ながら高いのです。

スコアを押し上げている5点の項目は以下の2つ。

「4・睡眠の悩み(寝つきが悪い、ぐっすり眠れない、寝起きが早く疲れが取れない、浅い睡眠、眠れない)」

「5・よく眠くなる、しばしば疲れを感じる」

睡眠トラブルが男性更年期に大きく影響を与えるということ……?

 

男性の「睡眠トラブル」は睡眠時無呼吸をいますぐ弁別して。無治療で放置すると命が縮みます

堀江先生「睡眠に問題があるのですね。睡眠外来の受診はまだとのことですが、すぐに行ってください。いびきはかきますか?」

 

K氏「多少はかくと思います。どうやら睡眠中に口を開けてしまうようで。じつはこの10年以上、朝までぐっすり眠れたことがありません。中途覚醒がひどいんです」

 

堀江先生睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。これは手ごわい病気で、放置すればそれだけ早く年をとってしまいます。治療をするしないでだいぶ体のエネルギーが変わります」

 

K氏「自分自身気になっていたので、この機会にクリニックを探します。いっぽう、テストステロン値は問題なしでしょうか?」

K氏の検査結果①クリックで拡大

 

参考値・クリックで拡大

堀江先生「もともとはもっと高かったのだろうと思いますが、現状でも問題はありません。ただし、亜鉛が少ないですね

 

K氏の検査結果②クリックで拡大

K氏「本当ですか? それはものすごく意外です。というのも、50歳で受けた人間ドックで亜鉛が少ないと指摘され、この半年は毎日朝晩サプリメントを飲んできました。もしかして、飲んでいなかったらもっと低かったということでしょうか?」

 

堀江先生「そうかもしれません。大抵のサプリメントは安全マージンが大きく取られているため、書かれている量だと足りないこともあります。むしろ薬に変えたほうがいいかもしれません。そのほか、おしっこが近い、出にくいなどの症状は?」

 

K氏「ありません。ためておいて出すほうが気持ちがいいので、夜中も2時間おきに目がさめますがトイレには行きません」

 

堀江先生尿を我慢して膀胱を鍛えるのはいいことです。いっぽうで、夜中に目がさめることそのものに別の問題があるかもしれませんから、睡眠外来は必ず1か月以内に受診してください」

 

やはりビタミンDも低かった。欠乏の状態、大至急補充が必要

堀江先生「もう一つ、ビタミンD値が大変に低いので至急補充してください。Dは気分障害に関係するほか、数値が上がれば男性ホルモン値もアップするため、男性機能にも直結します

K氏の検査結果③クリックで拡大。ビタミンD「25OHVD」は20.0未満が欠乏、20以上40未満が不足、40.0以上が充足。

K氏「先ほどN氏の診察でもビタミンDの話が出ましたが、医薬品ではなくあえてサプリメントを補充するのはなぜでしょう?」

 

堀江先生「医薬品の活性型ビタミンD3は有病の場合に処方される医薬品で、過剰摂取すれば高カルシウム血症などの副作用があり、取り扱いに注意が必要です。いっぽう、サプリメントはいくら摂取しても過剰はありません。日本人男性の7割はビタミンDが少なく、亜鉛も少ない。食事での摂取量が少ないんですね。亜鉛は貝に含まれますが、そう常食できないので、これもサプリメントで補充したほうが現実的でしょう」

 

K氏 「亜鉛のサプリメントは飲み始めて以来、精液量の増加の面で確かな手ごたえがあったので、足りていないというのが今回は大変な驚きでした」

 

堀江先生「前述のとおり残念ながら必要量に届かないことが多いので、精力減退対策として亜鉛のサプリメントを使うならば倍量飲んでもいいでしょう

 

K氏「亜鉛とDで戻るのは精液を作る力であり、勃起力ではないということでしょうか?」

 

堀江先生「ホルモン値が上がるので、勃起力も比例して上がります。プラスアルファでのバイアグラなどの利用もOKです。運動やストレッチも若干行っているとのことですが、筋肉量が衰えると代謝が落ちるので、筋肉量の増大しやすさを重視し、太もも、臀部を意識するのがいいでしょう」

 

K氏「筋トレは生活の中に取り込んだほうがラクだと思うので、普段は歯磨きをしながらスクワットをしています」

 

堀江先生「大変いい習慣だと思います。繰り返しになりますが、睡眠時無呼吸だけ大至急弁別していただければ、あとはよくコントロールできていますので、ビタミンDと亜鉛を補給すればOKです」

 

50歳コンビ、それぞれの処方内容は?

 

診察を終え、2人それぞれの対策を出していただきました。今回は2名とも自費診療です。まずN氏から。

 

ビタミンDサプリメント(ファンケル)、漢方薬の補中益気湯。そして「1UPフォーミュラ」。これは堀江先生が(一社)1UP学会と共同開発した5%テストステロン皮膚外用剤で、(一社)日本メンズヘルス医学会のテストステロン治療認定医がいるクリニックでも自費診療での処方が可能。1本あたりおよそ1万2000円前後で、1日1回の使用で約5~6週分。1FTU(Finger Tip Unit・約2cm)でテストステロンが約20mg補充されます。

 

 

K氏は同じくビタミンDサプリメント(ファンケル)、ノベルジン25㎎。ノベルジンは亜鉛欠乏症に適用される処方薬です。

 

これらを2か月使用した場合の経過については、7月に経過観察受診を行い、再び記事でご報告します。

 

受診してみて……「気づいていなかった意外な欠乏にいま気づけた。意義が高い」

N氏の感想

「自分の中でモヤモヤしていたものが、堀江先生の優しい診察とご指導で、心が少し晴れやかになった感じがします。まさかビタミンDが欠乏しているなんて、想像していませんでした。テストステロン値は低いが治療するまでもないことを認識できただけでも、受診してよかったと思います。食事、筋トレ、生活様式など、具体的な改善方法を聞けたことも、今後の生活を考えるうえで、非常に参考になりました。2か月後の再検査に向けて、先生からの指導を守っていきたいです」

 

K氏の感想

「サプリで亜鉛を取っていても足りていないという結果から、取っていなかったらどれだけ精液が減少していたんだろうと思いました。実際、処方された亜鉛を飲みだしたら、1週間でかなり精液量が増えました。量が増えると快感度が上がるだけでなく、精神的にもだいぶ自信がつく。男性にとって、精液の量はわかりやすい元気のバロメーターだと改めて実感しました」

 

 

【つづき】>>>「不安で不安で仕方ない」煩悩多き50歳男2人がメンズヘルス外来にたどりつくまで

 

■お話/堀江重郎先生

順天堂大学医学部・大学院医学研究科 教授

1985年東京大学医学部医学科卒業、1993年医学博士。テキサス大学、東京大学、国立がんセンター、帝京大学等を経て、日米で医師免許取得。

■取材協力/医療法人社団青十字会 日比谷国際クリニック
人間ドック・健康診断を中心に、外来診療ではメンズヘルス外来、禁煙外来、舌下免疫療法等の専門治療やヘルスケアサービスを行う。

各専門医の豊富な知識と経験に裏付けられた確かな医療技術による的確な治療・予防医療で、患者様のQOL(生活の質)向上に貢献し、「医療・運動・栄養」の視点で健康づくりのサポートを目指す。

東京都千代田区内幸町2-2-3 日比谷国際ビル地下1F
電話受付時間 月~金 9:00~13:00、14:00~17:00
メンズヘルス外来(予約制)03-3503-3430

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