どう考えても明らかに異常な態度の夫が、私の目の前で子どもにウソを吹き込んでいる。でも「負けた私」には何もできない
「夫に子どもを奪われそうになったので、慌てて子どもを連れて実家に帰りました。でも、夫が何倍もうわてでした。弁護士を使って子どもを取り返されてしまい、今、私は月2回しか子どもと会えずにいます」と、田代はるなさん(仮名・37歳)。
前編記事『モラハラ夫だからこそ作れた「あまりにも緻密な」大ウソの虐待記録。「それ、全部私がやられたことなのに」』でははるなさんがどのように夫に取り返されてしまったのか、そのあまりにも巧妙なやりかたを振り返ってもらいました。つづく後編です。
【共同親権を考える#4】後編
子どもに対して明らかに異常な態度で接する夫。それを目の前にして何もできない
「父親を監護者とする」という審判の結果が確定したのが、調停を始めておよそ1年半後。はるなさんは愕然とした。
「実家に戻ってからの子どもとの暮らしは、とても充実していました。いつも監視している、暴言を吐く夫から逃れられて、精神的に解放されて、のびのびと育児を楽しむことができたんです。新しく見つけた職場も、すごく人間関係に恵まれていて、ああ、これで自分らしく生きられる、幸せに子どもを育てていけると思っていました」
それなのに。子どもの監護権が夫に移り、子どもと離れざるを得なくなったことで、はるなさんの平穏は崩れ去った。
「夫と子どもが暮らす街に、私も引っ越しました。子どもが会いたいと言ったら、いつでも会えるようにしたいからです。今のところ面会交流は月2回と決められているので、その時間だけは子どもと会えますが、夫はいつもそばで見張っています。ちょっと私が何か言うと、子どもに『ママはおかしいね』『ママは変な人だ』とささやく。子どもが私に『もっとたくさん会いたい』というと、『ママがパパにいじわるしたから、あんまり会えないんだよ』などと言う。子どもも混乱しています」
はるなさん曰く、「夫は子どもがママを嫌うように仕向けたいのでは」と。要は、子どもがママと暮らしたいと言うのを阻止したいのだ。
「シングルファザーとして周囲にほめ称えられたいという、間違った承認欲求が夫にはあるのだと思います」
「引き離される苦しみ」、この子どもを取り合う構図はいったい誰のためにあるのか
はるなさんの望みは、できれば自分が監護権を取り戻し、子どもと暮らすこと。それがむずかしくても、今のように制限の多い面会交流ではなく、自由に子どもと関われることである。実際、子どもは、もっとママに会いたいと言う。ママと暮らしたいと言う。幼い子どもの母を求める気持ちを少しでも受け止めてやりたい。
はるなさんの気持ちは、十分にわかる。ジェンダーにとらわれるわけではないが、幼い子どもはやはり母親と一体だ。お腹を痛めて産み、乳を与えたーー文字通り血肉を分けた子どもと母親が引き離されることは、父親が子どもと引き離される以上の苦しみだと、わたし自身は考える。
一方で、子どもを取り合うこの構図は何なのか、とも思う。両親のどちらが子どもの親にふさわしいか争うことは、子どもの福祉にかなっているのか。子どもの最善の利益を考えれば、子どもがどちらの親からも愛情や経済的・文化的リソースを十分に受け取れる環境を整備すべきではないか。
その思想の先に、もしかしたら「共同親権」があるのかもしれない。
前編>>>モラハラ夫だからこそ作れた「あまりにも緻密な」大ウソの虐待記録。「それ、全部私がやられたことなのに」
■編集部より
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