大奥トップの心理戦と、命がけで守られた友情。新之助の最期に託された“民を思う心”【NHK大河『べらぼう』第33回】

2025.09.02 LIFE

*TOP画像/新之助(井之脇海) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」33話(8月31日放送)より(C)NHK

 

吉原で生まれ育ち、江戸のメディア王に成り上がった蔦重の人生を描いた、大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(NHK総合)の第33話が8月31日に放送されました。40代50代働く女性の目線で毎話、作品の内容や時代背景を深掘り解説していきます。

 

新之助の変わらない心

民の上に立つ者は大衆の気持ちを理解できないと言われることが少なくありませんが、本放送にもそのことを感じさせるシーンがありました。

 

松平康福(相島一之)と阿部正倫(須田邦裕)が城内にも響き渡る民たちの悲痛の叫び――打ちこわしの音を聞き、祭りの音ではないかと話し合う姿には、上の者たちの民に対する検討違いの思い込みがよく表れていたと思います。とはいえ、城への突撃の可能性を察すると、事の重大性に気付いたよう。自分に直接的に関わる問題にしか関心がないということなのでしょう。

 

打ちこわしの先頭に立ち、仲間をリードしていたのが、新之助(井之脇海)です。新之助は「お前らは 賄で役人と手を組み米を買い占め 売り惜しみ 己が身ばかりを肥え太らせた!これは 世を救うための行いである!」と宣言し、内に秘めた思いを打ちこわしにぶつけていました。

新之助(井之脇海) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」33話(8月31日放送)より(C)NHK

怒りやうらみといった言葉が似合わない新之助がふく(小野花梨)ととよ坊の死によって変わってしまったのかと思いましたが、彼の心根は変わっていませんでした。

 

打ちこわしにおいても仲間たちが金銭的価値のある物を盗もうとすると、「おい やめろ!」と制止し、仲間の中に窃盗犯が現れたり、今回の打ちこわしの目的から逸脱しないよう目を光らせていました。打ちこわしでルール違反を試みようとする仲間を止める新之助の目は、ふくが生きていたときのおだやかな新之助と同じ目をしていたようにも見えました。

 

意次(渡辺謙)は打ちこわしを止めるために、蔦重(横浜流星)の提案を聞き入れ、米の代わりに、金(かね)を配ることを決めます。蔦重は米の工面の問題は残るものの、民にお上が彼らを思っていることを分かってもらう重要性を感じたのです。さらに、蔦重は金を配るというお触れを富本節の斎宮太夫(新浜レオン)に依頼し、民が耳を傾けるための工夫も凝らします。

斎宮太夫(新浜レオン) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」33話(8月31日放送)より(C)NHK

蔦重が斎宮太夫らとともに銀の配布について市中で周知する場所に、 意知(宮沢氷魚)を斬った佐野政言(矢本悠馬)を「佐野大明神」と称え、前回の放送では大勢の人が集う奉公所の前にもいた“謎の男”丈右衛門(矢野聖人)の存在が…。

蔦重(横浜流星)  丈右衛門(矢野聖人) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」33話(8月31日放送)より(C)NHK

この男は剣を手にしており、蔦重を刺すためにこの場所にいたようです。彼の企てを阻止したのが新之助でした。新之助は蔦重をかばったために丈右衛門の剣が刺さり、ふくと坊のもとへと旅立ちました。

 

なお、丈右衛門は御先手弓頭・平蔵(中村隼人)が放った弓により、自らの素性を明かさぬままこの世を去りました。

 

間。すぐに、富本節がにぎやかに再開したところに、名もなき民の社会における小ささが感じられたような気がします。
「命の長さより質」ともいわれるが… 次ページ

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