不倫したのに態度が大きい夫。「この人は変わらない」と確信した朝、妻が“再構築”を手放した理由
不倫が発覚したとき、夫は確かに謝りました。けれど、それは一度きりでした。Fさんの痛みや不安、揺れ続ける心に、夫が向き合うことはありませんでした。
時間が経つにつれ、不倫は「もう終わった話」になり、話題にするFさんのほうが「しつこい」「被害者ぶるな」と責められるようになっていきます。悲しみを口にすれば怒鳴られ、黙っていれば不機嫌をぶつけられる……そんな日々のなかで、Fさんはあることに気づき始めました。
前編「不倫した夫が『もう終わったことだ』って開き直るのは普通ですか? 『許さないお前が悪い』とまで言われ、それでも我慢したけれど」に続く本編では、Fさんがどのようにして自分の人生を選び直していったのかを描いていきます。
日を追うごとに鋭くなる、夫の言葉のナイフ
夫の言葉は、日を追うごとに鋭さを増していきました。「終わったことを、いつまでも引きずるな」「こっちは前を向いているのに、お前が足を引っぱっているんだろ」そんな言葉を浴びせられ続けるうちに、Fさんは次第に「もしかしたら、自分が悪いのかもしれない」と感じるようになっていきました。
悲しいと言えば怒られ、苦しいと言えば責められ、話そうとすれば「もう終わったことだ」と切り捨てられる。このやりとりが続くうちに、Fさんは「夫婦でいる意味」が分からなくなっていきました。
夫は、不倫について最初の一度だけ謝りました。けれどその後、Fさんの気持ちに向き合おうとする姿勢は、一度も見せませんでした。Fさんが沈んでいれば「またかよ、面倒くさい」。不安を口にすれば「蒸し返すな」「被害者ぶるな」……。
夫にとって不倫は、「もう終わったこと」でした。しかしFさんにとっては、「まだ終われない傷」だったのです。この温度差は、ふたりの間に深く、埋められない溝を作っていきました。
・話を聞いてもらえない
・気持ちを伝えると怒鳴られる
・悲しみを出すと「またか」と否定される
・つらさよりも「俺を困らせるな」が優先される
こうした積み重ねによって、Fさんの中に、はっきりとした感覚が芽生え始めました。
「私は、この人のそばにはいられない」
ある朝、夫はいつものように言いました。
「許さないお前が悪いんだよ。俺は悪いことなんてしてない」
その言葉を聞いた瞬間、Fさんの中で何かが静かに固まりました。それは、怒りでも、悲しみでもなく、ただひとつの揺るがない確信でした。
「この人は、変わらない。」
そして、もうひとつの確信が、同時に浮かび上がりました。
「私は、このままでは壊れてしまう。」
その二つがそろったとき、Fさんは静かに決めました。再構築ではなく、離婚しかない。それは夫婦としてではなく、ひとりの人間として、自分の人生を守るための選択でした。
不倫の傷が癒えなかったのではありません。
癒そうとする思いやりや気遣いが、夫にはなかったのです。
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