更年期、太りやすくなるけれど対策の正解は?閉経が近づくとどんなトラブルが起きますか?【専門医に聞く更年期・2025ベストセレクション】
オトナサローネでは、2025年もさまざまな記事を掲載してきました。その中から今回は特別に、「大反響だった記事」をピックアップ!本シリーズ「専門医に聞く更年期」では東京・JR五反田駅のアヴァンセレディースクリニックで更年期外来をお持ちの小川真里子先生にお話を伺います。
(集計期間は2025年1月~12月まで。本記事の初公開2025年5月14日 記事は取材時の状況です)
前編記事『更年期の「終わりかた」を知りたいです。閉経するとどんなことが起きていきますか?閉経前後の大まかな変化は?【専門医に聞く更年期】』に続く後編です。
【女性の身体、思春期から更年期までby小川真里子先生】
月経の「終わり方」も人それぞれですが、波は落ち着いていくことが多い
更年期の終わり方にも個人差があります。いちばん多いなと感じるのは、だんだん症状が落ち着いていき、悩みを気にする時間が短くなっていくパターンでしょうか。たとえばほてりを感じる回数がだんだん減り、夜中に目が覚める回数も減りと、少しずつ落ち着いていく方が多い印象です。
いっぽうで、症状の消失具合は人によりけりです。関節症状は更年期すぎても残りやすいですし、気分の落ち込みや不安などメンタルの症状はホルモンだけでなく環境因子の影響も強く受けて強くなったり弱くなったりするようです。たとえば子どもの受験、仕事の異動や昇進、介護など、ストレス増加や新しい仕事を覚えるのが大変、そんなことで症状が強まることもよくあります。逆に受験シーズンが終わったとたんにラクになるという例もたくさんあります。
まだ更年期の最中であっても、「先生、なんだかすっきりしました!」とおっしゃる方もいます。「すっきりしたのですが、HRTは止めないとならないのでしょうか……?」とおそるおそる聞かれますが、現在のところいつやめなければならないということはないのが医学会の意見です。調子がよければ続けていいのです。が、薬ですからリスクもあります。
HRTによる乳がんリスクはもともと高くはないのですが、ほんのちょっとだけ上がる可能性があります。また、血栓症リスクもないわけではなく、HRTが体にいいことだけというわけでもありません。これらリスクと、生活の快適さや骨粗鬆症対策などQOL全体を考えたうえで、続けたいなと思ったら続けるという判断でいいと思います。
そろそろ閉経する人は、このあとどのような「トラブル」が起きていくのでしょう?
長くご受診中の患者さんの経過を見ると、55歳以降で更年期症状が落ち着くこともあれば、引き続き調子が悪いこともあります。更年期の時期を過ぎてから新しい悩み事が出現して症状に影響が出たり、メンタルの落ち込みが60代に差し掛かってもそのまま続くケースもあります。
更年期以降の女性に起こりやすい腟や外陰部、尿路の不調をGSM(閉経関連尿路性器症候群)と呼びます。女性ホルモン、エストロゲンの低下によって起きる症状の総称です。このうちのひとつとして、皮膚や粘膜の乾燥が進み、腟まわりに違和感が出やすくなるのも50歳ごろからです。
また、更年期症状ではないのですが、60代に差し掛かるころから子宮脱・膀胱脱など臓器が下がって腟から出てくる症状も増えます。このような臓器脱は、誰もそういう病気があると教えてくれないため人知れず抱え込んで悩みがちです。トイレやお風呂で膣回りを触った時に何かが指に触れたり、圧迫で排尿しづらくなったり、膣壁が下着にこすれて出血したりを、不安なままずっと我慢している方が結構いらっしゃるのです。
GSMのひとつ、尿漏れは産後に経験した人も多いと思いますが、閉経前後から顕著に問題が出てきます。関節の痛みもやはりエストロゲン低下で現れ、へバーデン結節ができたり、関節が太くなってしまったりします。
関節の痛みは閉経から少しして出てくる人が多く、まず整形外科を受診して関節リウマチとの弁別が必要ですが、関節リウマチではない場合は「女性ホルモンのせいです」と言われておしまいになりがちです。
閉経後さほど時間が経っていない場合はHRTや大豆イソフラボンサプリ、たとえばエクオールも有効ですが、時間が経ってヘバーデン結節ができてからになるとあまり対処法がないのが実情です。肘、膝などの関節痛も閉経後によく出てきます。
「更年期の体系の変化」、どう対応すればいいの? 次ページ
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