実は正解日本語「ご質問があります」。こう言い換えると違和感がない!
「先生、ご質問があります」この言い回しに関しては、私も違和感を覚えるクチです。敬語に関する本でも、マナーの本でも、この言い回しはNGとされることが多いです。しかし実は、文法的には間違いではないのです。
「おみおつけ」という言葉を知っていますか。そうです「味噌汁」を丁寧に表現した言葉ですよね。「おみおつけ」は「御御御汁」とも書きます。 「おみ」が付く言葉を「おみ言葉」とも呼ぶことがあります。「おみくじ」「おみあし」「おみき」などがそう。丁寧に呼ぶときに「おみ」を付けるのです。
この「御」は「お」とも読みますが「ご」とも読みます。この「お」や「ご」は、言葉を丁寧に表現するときには大変便利な接頭辞です。接頭辞には、「お花」「お水」など立場の上下関係なく使えるものもある中、「ご質問する」「ご要望がある」と使うと違和感を覚える場合もあります。それはなぜなのか、ではどうしたらいいのか、今日はそんなお話です。
「お」と「ご」の使い分け
このルールはわりと明確です。訓読みには「お」、音読みには「ご」が付くというルールです。和語、漢語とする分け方もあります。
「お」+訓読みの例
お願い、お気持ち、お知らせ、お届け
「ご」+音読みの
ご祈願、ご心配、ご報告、ご進物
例外もあります。
「ご」+訓読みの例
ごゆっくり、ご入り用など
「お」+音読みの例
お食事、お散歩など
どちらにしても、訓読みの方が少し柔らかい印象がありますよね。この柔らかい印象、実は困ったときに使えます。のちほど。
さて、これらの名詞に付ける接頭辞は敬語の分類では「美化語」といいます。年齢によっては「丁寧語」と習ったかもしれません。相手の前で、言葉を丁寧に表現するときに、その言葉の頭に付けます。この「美化語」とは違い、「尊敬語」や「謙譲語」として「お」と「ご」が付く言葉があります。これが少しやっかいなのです。
尊敬語としての「お」と「ご」
お心遣い、お気持ち、ご相談、ご意見など
例
- お心遣い誠にありがとうございます。
- お気持ち、ありがたくちょうだいいたします。
- ご意見がございましたら、お伺いいたします。
この文脈の中での「心遣い」「気持ち」「意見」は、相手と自分との間にあるものであり、単に名詞に「お」や「ご」を付けるパターンとは違うことが分かりますね。この場合ですと「お心遣い」と「お気持ち」「ご意見」は相手からいただいているものです。ですから「尊敬」の意味があるのです。
謙譲語としての「お」と「ご」
次の例はどうでしょう。
お知らせ、お届け、ご説明など
例
- こちらの情報をお知らせいたします。
- なるべく早くお届けいたします。
- この件につきまして、ご説明いたします。
この文脈の中での「お知らせ」「お届け」「ご説明」は、こちらから相手に差し上げるものです。ですから「謙譲」の意味があるのです。この場合は、こちらがへりくだって使っている形です。
ここまでの説明で分かるとおり「お」と「ご」には「尊敬語」以外に「謙譲語」としても使えます。ですから「自分の行為に『ご』を付けてあるので『ご質問』は誤りである」という理論には合いません。「ご質問」を謙譲の意味で使っているからというわけです。しかし確かに今まさに私が書いたこれ
ここまでの説明で分かるとおり……
この「説明」には「ご」が付きません。自分の行為をフラットに表現しているわけです。この「自分の行為はフラットにする」ということが実はポイントです。
次の「お」や「ご」は文法的には間違いではないのですが、フラットにすると割合すっきりします。ただ、フラットすぎる場合には、後に続く言葉の方を丁寧にすると良いでしょう。
例
- ご説明します→説明します。
- ご回答します→回答いたします。
- ご連絡します→連絡を差し上げます。
これは便利!訓読みに言い換えると優しさも出る
次の例を見てください。
- 先生を車にお乗せする
これを「先生を車に乗せて参ります。」と変換することもできますが「お乗せする」でも良い気がしますよね。それは、この言葉が「お」+訓読みの言葉だからです。特に女性の場合は、敬語に加えて、上品な感じさえします。
上の例からも分かるとおり、「ご」が付く場合が少しやっかいというわけです。では、丁寧に表現したいときにはどうしたらいいでしょうか。冒頭に出てきた音読み、訓読みの話に少し戻ります。日本は中国から漢字を輸入した国。つまり、同じ言葉でも、訓読みの和語、音読みの漢語が使い分けられるのです。そして、訓読みの方が優しいイメージがあります。これを利用しないテはありません。二つ例を挙げてみますね。
・ご要望を伝えたいのですが……「ご要望がございます」で良いのですが、「要望」自体を変えるのがベストです。
→「お願いがあるのですが」
・ご依頼したいことがあります……こちらも「依頼があります」でOKですが、「依頼」自体を変えると優しい印象に。
→「お願いしたいことがございます」また人によっては「お任せしたいことがございます」
さて、冒頭の「ご質問があります」です。こちらも「質問がございます」のように、「ご」を取り、後半を丁寧にすると十分使える言い回しになりますが、「質問」という音読みの漢語を、意味を崩さずに訓読みの和語に言い換え、「お」を添えると良いでしょう。
例
- お伺いしたいことがございます。
- おたずねします。
どうでしょう?「ご質問」という「ご」+「漢語」のものを「お伺いする」「おたずねする」という「お」+和語に変換してみました。優しいイメージもしますし、上品な感じもしますよね。女性にはこちらをおすすめします。また、男性の場合でも、相手によっては優しい感じが出るこの「お」+和語がおすすめです。
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