猫が亡くなった日の、夫のあまりに非情な仕打ち。妻の中で「最後の情」が消えた瞬間

2026.07.29 LIFE

夫の会社を手伝って、そこで義父からもパワハラを受けていた私

夫は、実の父親の会社を継いだ2代目社長でした。Mさんによると、義父は家庭内でも会社内でも強い発言力を持つ人で、夫はその父親の影響を強く受けて育ってきたように見えたといいます。また、母親からはとても大切にされて育ったためか、夫は自分の言うことやすることが常に正しいと信じているように感じられました。

「夫は、会社ではパワハラ社長なんです。私以外の事務スタッフは、社長である夫のやりたい放題、言いたい放題に耐えられず、みんな辞めてしまいました。だから結局、私が事務をやるしかないんです」

 

Mさんは、夫の会社で経理を任されていました。しかし、会社の実権は完全に夫に移っていたわけではありませんでした。

「義父は夫に社長の座を譲ったはずなのに、今でも会社内で強い権力を持っています。会社の通帳も、義父に断らないと持ち出せない状態でした」

 

さらに、Mさんの給与を決めていたのも義父でした。

週5日、1日8時間働いているにもかかわらず、支払われる給与はごくわずかだったといいます。

「義父には、『家業を手伝うのが当たり前。本当は嫁に給与なんて支払わなくてもいいのに、出してあげているんだからな』と言われました」

 

Mさんは夫に、せめて給与を上げてほしいと訴えました。しかし、夫は自分の父親に逆らうことができず、義父に何か言ってくれることはありませんでした。それどころか、Mさんに対して、

「お前は金の亡者だ」

と怒鳴ったそうです。

 

モラハラ傾向のある人が育った家庭にも、支配的な関係性があったというケースはあります。父親が母親に高圧的だったり、家庭内で誰かが絶対的な権力を持っていたりすると、その関係性を「当たり前」として身につけてしまうこともあります。また、家庭内では許されてきた言動が、結婚後の夫婦関係や職場でそのまま出てしまう場合もあります。特に、家族経営の会社や小さな組織では、家庭内の力関係がそのまま職場に持ち込まれ、妻が逃げ場を失ってしまうこともあります。

Mさんの場合も、夫婦関係の問題だけでなく、夫の会社で働いていること、義父が会社に強い影響力を持っていること、十分な給与を得られていないことが重なり、離婚をさらに難しくしていました。

 

娘との旅行中、父の猫の具合が悪くなった

夫は、母親から大切にされて育ったように、自分の娘のことも溺愛していました。娘さんが結婚して家を出てからは、さらに甘くなったそうです。夫は娘さんのお願いなら、できるだけ叶えたいと思っていました。そのため、Mさんと娘さんが2人で旅行に行きたいときは、娘さんが夫にこう頼んでくれたといいます。

「ママと旅行に行きたいから、パパお願い。ママがお仕事を休んでもいいでしょ」

 

娘さんの前ではいい父親でいたい夫は、「もちろんいいよ。楽しんできなね」と送り出してくれたそうです。そうして、娘さんの協力もあり、Mさんは母子旅行に行けることになりました。亡くなったお父さんが可愛がっていた猫は、Mさんの家に来てから3年が経ち、16歳の老猫になっていました。猫のお世話は息子さんに頼み、Mさんは娘さんと2人で大阪旅行へ出かけました。

 

その夜、夫から電話がありました。

「猫が具合悪いみたいだぞ」

最近、猫の食が細くなっていたことは気になっていました。けれど、急に具合が悪くなるとは思っていなかったMさんは、不安で胸が張り裂けそうになったといいます。

 

「息子に猫のそばにいてもらって」

そう頼んで、Mさんは夫との電話を切りました。

そして翌朝、また夫から電話がありました。

夫は、淡々とこう言ったそうです。

「猫、死んだみたいだ」

「え? 嘘でしょ」

「冷たいし、動かないから」

「今すぐ帰っても、4時間はかかるから……」

すると夫は、こう言いました。

「死んだ猫を家の中に置いておくと腐るから。冬だし外は寒いから、外に出しておくから」

そう言って、夫は電話を切ったそうです。

 

「私は気が動転してしまって、何をどうしたらいいのか、頭が回りませんでした。可愛がっていた大切な猫なのに、『死んだから外に出しておく』と平然と言う夫が信じられませんでした」

Mさんは、急いで息子さんに電話をしました。すると、父親が猫を段ボールに入れて、外に置いたと聞かされたそうです。旅先にいるMさんには、すぐにできることがありませんでした。だからこそ、夫の言葉はより残酷に感じられたといいます。

 

お父さんが大切にしていた猫。Mさんにとっても、父とのつながりを感じる大切な存在でした。その猫の死を、夫がまるで事務的な連絡のように告げ、亡骸を外に出すと言ったことに、Mさんの中に残っていた情は、すっと消えていったそうです。

「可愛がっていた猫の亡骸を、そんなふうに扱える人なのだと思ったら、もう無理だと思いました」

 

Mさんの悲痛な気持ちは、話している様子からも痛いほど伝わってきました。Mさんは旅先から戻り、猫の亡骸と対面して泣き続けました。猫が亡くなったことも、もちろん悲しい。けれど、それ以上に、夫の言動がどうしても許せなかったといいます。そして、こんな人と何十年も一緒に暮らしてきた自分が情けなくなり、涙が止まらなかったそうです。

 

それまでMさんは、「会社の従業員のためにも、仕事を辞めるわけにはいかない」と、自分で自分を縛りつけていました。けれど、その思いも吹っ切れました。自分がいなくなって困るのは、夫と義父です。自分を大切に扱わなかった人たちのために、これ以上自分を犠牲にする必要はない。優しさも思いやりも感じられない人たちと、これ以上一緒にいることはできない。Mさんは、そう結論を出しました。

 

離婚を切り出す前に、自分が不利にならないよう、弁護士への相談を始めました。夫のために朝早く起き、出汁から味噌汁を作り、魚を焼いていたこと。夫の機嫌を取ることばかり考えていたこと。これまでの自分の人生を振り返りながら、Mさんは「これからは自分のために、自分を大切にして生きていこう」と強く決意したそうです。

 

離婚を選ぶのも、結婚生活を続けるのも、その人自身が決めることです。

ただ、どちらを選ぶとしても、自分を大切にすることだけは忘れないでほしいと思います。ひとりで抱え込まず、必要なときには専門家や信頼できる人の力を借りながら、自分の人生を守る選択をしていきましょう。

<<亡き父が大切にしていた猫を「保健所に連れていけ」と言い放った夫…それでも妻が離婚できなかった理由とは

 

本記事は2024年1月初回配信、2026年7月に加筆修正されました

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