「あなた、私の子育てが間違っているって言ったそうね」夫の策にはまり、義母まで敵に…妻を追い詰める”責任転嫁型モラハラ”の正体とは
モラハラ・夫婦問題カウンセラーの麻野祐香です。働く女性は、モラハラやDVをする夫から簡単に逃げられるのでしょうか。いいえ、そんなことはありません。さまざまな事情から、支配的な配偶者との結婚生活を続けている方は少なくありません。モラハラと一言で言っても、そのタイプはさまざまです。オトナサローネ世代のモラハラ被害にフォーカスした本連載、今回は「責任転嫁型モラハラ」の夫に苦しんだAさんのお話です。
※本記事は、相談者様への敬意と守秘義務に十分配慮したうえで、モデルケースとして編集・再構成しお届けしています。特定の人物や事例を示すものではありません。
※写真はイメージです
決して非を認めない夫。いつも私のせいにされることが続き…
「夫は、自分の言動が招いた結果を、いつも私のせいにするのです。怒鳴ることも、手を上げることもありません。それでも、責任を毎回私に押しつけることで、静かに、けれど確実に私の心は追い詰めていきました」
と、一見穏やかな夫との暮らしの中で、「いつも自分だけが悪者にされてしまう」と感じ続けてきたAさんは語ります。
Aさんが夫と出会ったのは、共通の友人が開いた食事会でした。夫は物腰が柔らかく、周りへの気遣いも欠かさない人だと、当時のAさんは感じていたそうです。結婚前から、夫の趣味はゴルフでした。結婚したばかりの頃、夫は「来週はゴルフに行くから、日曜日は朝早く出かける。夕方には帰るから、そのあと買い物に付き合うよ」と、予定を伝えたり、Aさんを気遣う言葉をかけたりしていました。
Aさんも、朝4時に出かける夫を玄関まで見送り、「行ってらっしゃい、気をつけてね」と送り出していました。夫は「行ってきます」と言いませんでしたが、そのときは特に疑問には思わなかったそうです。結婚後すぐに妊娠したAさん。つわりでつらい時期もありましたが、夫の趣味に文句を言うつもりはなく、楽しそうにしている夫を見ることが幸せでした。
ところが、夫は次第にゴルフの予定を伝えなくなり、朝早く一人で出かけるようになったのです。Aさんは、「ゴルフに行くときは、前もって教えてほしい」と夫に伝えました。すると夫は、「3日前に言ったけど忘れたの? 人の話を聞いてないんだね」と、自分を正当化し、反対にAさんを責めるのです。
Aさんが「私は聞いていなかったよ。たとえ自分では言ったつもりでも、相手に伝わっていなければ、言ったことにはならないよね」と伝えても、夫は「聞いていない君が悪い」と、決して自分の非を認めませんでした。出産後も、夫は休日にゴルフへ行く予定を伝えないままでした。さらに、一度帰宅してから、何も言わずに家を出て、ゴルフレッスンへ行くようになったのです。
ある日、家族で夕食を食べ終えたあと、Aさんは洗い物を後回しにして、子どもを先にお風呂へ入れていました。そのとき、玄関のドアが閉まる音がしました。「何だろう」と思いましたが、まさか夫が何も言わずに家を出て、ゴルフレッスンへ向かったとは思いもしませんでした。2時間後に帰宅した夫に、Aさんは「出かけるときは、どこへ行くのか伝えてほしい」と話しました。
しかし夫は、やはり「言ったのに君が聞こえていなかったんだよ。俺は悪くない。俺を否定したことは別に気にしてないよ」と言うのです。本当に伝えたいと思うなら、相手の目を見て、声に出して伝えるはずです。それをしないまま、「言った」という事実だけを主張し、聞こえなかった責任を相手に押しつける。夫は、自分の伝え方が悪かったと思うことは一度もありませんでした。悪いのは、いつも「聞いていないAさん」なのです。
「夕食はいらない」と言ったはずの夫が、なんと…
普段、Aさんは夫の帰宅時間に合わせて夕食を作っていました。ある朝、夫は出かける際に「今日は夕食はいらないから」と確かに言いました。Aさんは言われた通り、その日は夫の夕食を用意しませんでした。ところが帰宅した夫は、「あれ、俺の夕食は?」と言うのです。
「今朝、夕食はいらないって言ったから作ってないよ」とAさんが答えると、夫はため息をつき、「家族のために仕事してきて、これかよ」と独り言のようにつぶやき、最後に決まってこう付け加えるのです。「別に、俺は気にしないからいいけど」
この言葉は、一見穏やかに聞こえますが、相手に罪悪感を抱かせる責め言葉です。結婚前の優しかった夫は、いつの間にか別人のようになっていました。怒鳴ることはありませんが、いつも嫌味な言い方をし、相談もなく予定を決め、黙って家を出ていく。そんな日々が続くようになったのです。そしてAさんは、夫が「行ってきます」「ただいま」を言わないことも気になるようになりました。
ある休日、Aさんは何気なく夫に尋ねました。
「普通は、出かけるときは『行ってきます』、帰ってきたら『ただいま』って言うものだよね。あなたは子どもの頃、『行ってきます』も『ただいま』も言う習慣がなかったの? お義母さんは何も言わなかったの?」
すると夫は、みるみる顔色を変えて怒り出しました。
「君はうちの母親の悪口を言うのか」
Aさんは、「そんなつもりはないよ。ただ、小さい頃はどうだったのか聞きたかっただけ」と説明しました。それでも夫の怒りは収まらず、そのまま黙って家を出ていきました。子どもと家に残されたAさんは、「そんなに怒らせるようなことを言ってしまったのだろうか」と不安になりました。それでも子どもの前では笑顔を作り、公園で遊ばせながら過ごしました。
「私の子育てを否定したのね」と義母から電話が掛かってきて
夫は夜になっても帰ってきません。どうしたのだろうと心配していた頃、義母から電話がかかってきました。
「Aさん、あなたは私の子育てを否定したのね。私の育て方が悪いって言ったんでしょう。失礼ね。あなたを嫁としてかわいがっていたのに、そんなふうに思っていたなんて」
Aさんは義母の子育てを否定したわけではありません。夫婦の間の言葉がけについて、素朴な疑問を口にしただけでした。それなのに、話はいつの間にか「義母の子育てを否定した嫁」という話にすり替えられていたのです。夫がこのとき見せた反応にも、責任転嫁型モラハラに共通する心理が表れています。Aさんの質問は、夫自身の振る舞いについての、ごく自然な疑問でした。けれど夫は、その質問に答える代わりに、「母親の悪口を言われた」という被害者の立場へと自分を置き換えました。答えたくない問いから話をそらすための、論点のすり替えです。一見、自分を守っているように見えるこの言葉は、実際には相手を責めるための言葉なのです。
本編では、「聞いてない君が悪い」と何でも妻のせいにし、論点をすり替えながら相手を追い詰める「責任転嫁型モラハラ」についてお伝えしました。
▶▶『「全部、私が悪いのかも」と思い込まされていた妻。それでも「私は悪くない」と思えるまで』では、自分を責め続けていたAさんが、少しずつ自分の感覚を取り戻し、夫との向き合い方を変えていくまでの過程についてお届けします。
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