「朝起きたら腰が痛い」人、腰痛負債が溜まってるかも?気をつけたい4つのポイント

腰痛は、整形外科医に「明確な原因がない」と診断されるケースも多くあります。

医者ですら原因を特定できないのに、腰痛の原因をどのように探っていけばよいのでしょうか。

今回は、日常生活の中で腰痛発症のリスクを高める「腰痛負債」に着目します。

もしかすると、日々の何気ない行動で、あなたも「腰痛負債」を溜めてしまっているかもしれません。

 

「腰痛負債」とは?

複合的な要因で起きる腰痛ですが、原因の手がかりがまったくないわけではありません。

その中の一つが、腰に悪い生活習慣の積み重ねです。

生活習慣というのは、食事や睡眠や仕事、歩き方や座り方、運動習慣などのすべて。これらの細々したこと一つひとつの長年の蓄積が、腰痛の原因の一つとなります。

この、生活習慣によって密かに蓄積していく腰のダメージを私たちは「腰痛負債」と表現しています。

 

負債1・「食生活」太っている人ほど腰をいためる。ダイエットは腰痛改善の基本

肥満は腰痛を招く要因の一つだと考えられています。

立っている間も座っている間も、腰は絶えず、上半身の体重を支え続けています。

いったいどの程度の負荷がかかっているのでしょうか?

 

ある実験では、体重70㎏の人の場合、もっとも負荷がかかる椎間板には仰向けの状態で30㎏、立てば70㎏、イスに座ると100㎏もの負荷がかかるとされています。

肥満の人が必ず腰痛になるとはいえませんが、肥満であるということは腰痛のリスクの一つであるとはいえるでしょう。

 

では肥満を招く生活習慣は何かといえば、食事の影響がもっとも大きいでしょう。

食べすぎや、栄養の偏った食事は、生活習慣病の引き金になるのでそもそも体によくないのですが、慢性腰痛に悩んでいる人は、肥満を解消すれば腰痛が改善されるかもしれません。

 

負債2・「運動習慣」がないのもNG。“安静に”は実は間違い

腰痛を抱えていると、腰に負担がかかると考えて運動を控えてしまう人がいます。

しかし一方で、運動不足自体が腰痛の慢性化につながるリスクの一つと考えられています。

 

「痛いなら安静にしていましょう」というよく聞くアドバイスが、実はマイナスの影響を及ぼしていることに驚いたのではないでしょうか?

椎間板ヘルニアなどの明らかな原因がある場合や、発症したばかりの腰痛以外は、運動を習慣づけたほうがいいでしょう。

 

特に、長時間のデスクワークや車の運転など、同じ姿勢を続けることを強いられる

生活をしている人は要注意! 仕事の合間に少しストレッチするだけでも格段に症状が軽減することもあるので、ぜひ取り入れてみてください。

 

運動といってもアスリートのような強い負荷をかける必要はありません。

軽く関節を動かしたり、筋肉を伸ばしたりするストレッチや、腹筋や背筋をきちんと収縮する(さわって固くなる)程度の運動で十分だと思います。

 

極端に腰を反らしたり無理にひねったりする運動は、かえって腰痛のリスクになるので注意してください。

 

普段あまり運動習慣のない方に特におすすめなのは、全身運動であって脊椎、関節への負担が少ない水中での運動です。泳げる方であれば、クロールや背泳ぎは腰への負担も少なく、ほどよく体を動かすには最適でしょう。

 

負債3 ・「喫煙習慣」はいいことが1つもない。タバコは腰にも悪い

喫煙者自体ずいぶん減っていますが、実は禁煙が腰痛改善につながる可能性があります。

 

喫煙は血管を収縮させます。椎間板の周囲にある毛細血管も収縮するため、栄養が行き渡らずに椎間板の変性を招き、腰痛につながるといわれているのです。

 

もう少し詳しく説明しましょう。

椎間板というのは、脊椎の間にある円板状の軟骨です。脊椎にかかる衝撃を吸収するクッションの役割を持っています。毛細血管が収縮して栄養が行き渡らなくなると、椎間板にあるプロテオグリカンという成分が減少し、水分が失われてクッション性がなくなってしまいます。そのため、椎間板の変性は腰痛の原因の一つと考えられているのです。

ラットを使った研究でも、喫煙させた個体には椎間板の変性が多く見られたという結果があります。また、8週間の受動喫煙で椎間板が変性し、禁煙により修復反応が見られたという報告もあります。

 

近年は紙巻きタバコよりも害が少ないといわれている加熱式タバコが人気ですが、加熱式に換えたからといって安心はできません。

数種類の有害物質の量が減少するというデータは販売会社等から出されていますが、有害物質が半分になったとしても、健康被害が半分になるというわけではありません。また、血管の損傷についてはほとんど変わらないという報告もあるほどなので、安易に考えることは危険であるといえます。

 

 

負債4・「睡眠習慣」起き抜けに腰が痛い人は姿勢に注意

おおむね人生の3分の1は睡眠時間です。

睡眠時に注意すべきなのは、きちんと寝返りをうてる状態にすること。人は寝返りをうつことで、体の一部に負荷がかかり続けることを回避しています。

 

横になっているときにも腰には負担がかかっています。朝起きたときに腰の痛みや重さを感じたことのある人も多いのではないでしょうか。睡眠中の姿勢や、睡眠時の環境が悪いと、さらに大きな負荷がかかることになります。

 

腰痛を経験したことのある人ならよくわかると思いますが、仰向けで足を伸ばして寝る姿勢は一般に腰に負担をかける姿勢です。これは立っている状態での自然な脊椎のカーブが崩れるからです。

 

仰向けで寝ると腰が痛いという場合は、横を向いて少し膝を曲げて丸まったような姿勢をとると腰への負担は軽減されることがあります。

もちろん脊椎のカーブや、筋肉のつき方、痛めている部位により個人差はあるので、もっとも痛みが軽減される姿勢を自分で探してみてください。そのうえで、適度に寝返りをうって、自然に腰を動かせる環境をつくることが大切です。

 

とはいえ、寝ているときは意識して寝返りをうつことはできません。そもそも自分がどれだけ寝返りをうっているかさえ、よくわからないでしょう。

ですから、慢性的な腰痛を抱えている場合は、自然で適切な寝返りがうてるような寝具を用意しておくことも効果的だと考えられます。

一時期、硬いマットレスが腰痛にいいという話が広まり、腰痛の方が薄いマットレスの下に木の板を入れているというような話を聞くこともありましたが、最近の研究では硬すぎるマットレスは腰痛に対して悪い影響を与えることがわかってきています。

 

近年人気の高反発マットレスは、適度な硬さと反発力があり、睡眠時の姿勢を正したり、寝返りをうちやすくしたりする点で理に適っています。

 

シャワーで済ませるのはNG

帰りが遅くて時間がなかったり、お風呂に湯を入れるのが面倒だったりして、夜はシャワーだけで済ませるという人もいるのではないでしょうか。

慢性的な腰痛を抱えているのであれば、湯船にゆっくりと浸かるほうがいいでしょう。

 

腰痛との関連性について科学的な根拠には乏しいですが、古くから温泉、入浴の文化のある日本では、お風呂で温まることで腰痛が改善されたという経験をお持ちの方も少なくありません。

これは温熱効果だけではなく、ゆっくりお風呂で温まることによるリラックス効果なども相まって、腰痛に対していい効果を発揮しているからだと考えられます。

 

冷えは一般的に痛みによくないというイメージを持っている方もいると思いますが、実は冷えが腰痛を悪化させるという明確な証拠があるわけではありません。

ただ、寒い環境や冷たい環境が心理社会的な面から多くの痛みを悪化させる傾向はあると考えられるので、そういう意味では冷やさないことが大事だともいえるでしょう。

 

腰を曲げる動作を減らそう

例えば重いものを持ち上げるとき、腰を曲げて物を持とうとすると腰に強い負担がかかります。このような姿勢のときにいわゆるぎっくり腰を経験した人もいるのではないでしょうか。

 

重いものに限らず、床にあるものを拾う動作をするときには、なるべく膝を曲げて上体の位置を下げるようにしましょう。上半身の重さだけでも、十分に腰を痛めてしまう可能性があるからです。この動作は膝を曲げてしっかりとしゃがんでものを拾い、膝の力を使って立ち上がるイメージです。

 

どうしても腰を曲げなくてはならないときには、少し工夫をしてみましょう。

例えば洗面台で顔を洗うときには腰を曲げる必要があります。そのような場合でも、足を前後に開いたり、膝を軽く曲げたり、小さな踏み台に片脚をのせるなどして、なるべく腰にかかる負担を軽減するようにしてみてください。

腰痛持ちの人は経験的に自然とこのような姿勢をとっていることもありますが、このような小さな工夫でも明らかな腰痛の改善を自覚できることもあります。

 

 

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日本腰痛研究開発機構著  2018年12月23日発売  アスコム刊

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