「極めつけ」「極めつき」どっちが正しい?うろ覚えだと恥ずかしい言葉10選
日本語の言い回しには、とても似通ったものがあり、きちんと覚えていないと、恥ずかしい言い間違いになってしまうことも。今日はそんな「うろ覚え」な言い回しを10個選んでみました。どうして覚え間違いをしているのかという考察も混ぜて書きましたので、この機会にしっかりチェックして、頭の中のあやふやな言葉を一掃しましょう!
1・振りまくのは「愛想(あいそ)」と「愛敬(あいきょう)」どっち?
× 愛想を振りまく
○ 愛敬を振りまく
解説
「愛敬を振りまく」とは、好感の持てる言動や表情をすることです。
愛想は、人に接して示す好意や愛らしさのこと。「愛想を」で始まる慣用表現としては「愛想を尽かす」などがあります。
愛敬は、愛嬌とも書きますが、女性や子どもなどが、にこやかでかわいらしいこと。さらに「愛敬」には「お世辞」の意味もありますので、「振りまく」に使われるのですね。
2・卒業前の大学生と雇用契約を結ぶのは「青田買い」「青田刈り」どっち?
× 青田刈り
○ 青田買い
解説
まだ稲が青いうちに、収穫量を見越して、その田の米を買い取ることを青田買いといいます。比喩として、卒業前の学生に対して、採用の契約を結ぶことを言います。読んで字のごとく「まだ青い田でも実りそうな田」を「買う」のですね。この覚え違いの修正は簡単で、「刈りとってしまっては、実にならないよ!」ですね(笑) 戦国時代、相手の城の周囲にある田んぼを、稲が青い内に刈り取ってしまい、食糧難にさせる作戦がとられました。そちらは「青田刈り」です。そうです。刈り取ってしまってはダメなんです。
3・すくうのは「足元」と「足」どっち?
× 足元をすくわれる
○ 足をすくわれる
解説
「足元をすくわれる」は、「足元を見られる」とまざってしまっているようですね。
「足元」は「見られる」ものなのです。昔、かごで人を運んでいた仕事の人が、旅行者の足元を見て疲れ具合を判断し、料金をふっかけていました。そこから「足元を見られる」という慣用表現が出てきたのです。
「足をすくわれる」は正当とは思えない方法で出し抜かれることです。立っている人の足をすくうなんて、卑怯な方法ですよね。
「すくわれる」のは「足」で「見られる」のは「足元」。しっかりと区別して覚えましょう。
4・怒りは、心頭に「達す」と「発す」どっち?
× 怒り心頭に達す
○ 怒り心頭に発す
解説
激しく怒ることを「怒り心頭に発す」と言います。「怒り心頭に起こる」とも言うのですが、なぜか「達す」という言い間違いが多いようです。おそらく「はっす」という言葉を、近年あまり使わなくなったからではないでしょうか。でもこれも、誤ったイメージを描き直してみましょう。「心頭」とは「心と頭」ではなく「心」のことなんです。まずそれを覚えてください。そして、怒りの感情は、ワーッと起きて心に達するのではなく、心からワーッとわき起こるものです。心は怒りのゴールではなくスタートなんですね。ですから「達する」ではなく「発する」が正しいのです。もう間違えないでしょう。
5・正しいのは「うる覚え」と「うろ覚え」どっち?
× うる覚え
○ うろ覚え
解説
発音の違いじゃない?のように言う人がいますが、全く違います。「うろ」は「虚」「空」「洞」とも書き、「ぼんやり」というイメージを表す言葉です。ですから「うろ」覚えなのですね。
6・「極めつけ」、「極みつき」どっち?
× 極めつけ
○ 極めつき
解説
「折り紙つき」と同じ意味なので、同じ覚え方をすれば大丈夫です。「折り紙つけ」とはいいませんよね?
「極め」とは「極め書き」のこと。書画、刀剣、茶道具などの鑑定書を指します。それが貼ってある、信頼のおけるもの、才能、という意味です。
7・まじめな表情。「しかめつらしい」「しかつめらしい」どっち?
×しかめつらしい顔
○しかつめらしい顔
解説
堅苦しく形式張っている顔、もっともらしいまじめな表情を「しかつめらしい顔」と言います。「しかめつらしい」と言うのは、「しかめっつら」と混ざってしまったのでしょうか。また、どっちか分からないようなあやふやな表現をする人もいますね。「鹿爪らしい」と表記する時もありますが、これは当て字。でも、当て字でも、この方が忘れませんね。「鹿爪」「しかつめ」で覚えるのに当て字は良いアイディアだと思います。
8・「新規」に続く言葉は「蒔き直し」「巻き返し」どっち?
×新規巻き返し
○新規蒔き直し
解説
初めに戻ってもう一度やり直すことを「新規蒔き直し」と言いますが、この「蒔」という漢字が常用漢字ではないので、テレビや新聞などでは「まき直し」とされます。これが「巻き」に転じ、結果「巻き返す」という言葉と混ざってしまったようです。もう「種まき」からやり直そうというような意味ですから、「蒔き直し」が正解で、気合いを入れ直すような「巻き返し」の要素はもともと入っていませんでした。もし、新規と「巻き返し」を同時に使いたい場合は、それはそれで「巻き返そう」と表現すれば大丈夫です。「新規」と言ったら続く言葉は「蒔き直し」です。
9・相談するきっかけがつかめない場合は「取り付く島もない」「取り付く暇もない」どっち?
× 取り付く暇もない
○ 取り付く島もない
解説
こちらも音が近い言葉で、間違いやすいですね。
「取り付く島もない」とは、頼りにするところが何もないことを表します。何かを頼んだり、相談しようとしたりしても、態度が冷たくて、きっかけがつかめないことの例えです。ところがそういう人たちが常に忙しそうな感じであるイメージと重なるのでしょうか。「取り付く暇もない」などと変換されるようになってきました。本来の「島」とは音が似ているだけで、まったく意味が違います。「暇」でも「(取り付く)島」がない人がいるというイメージを覚えておくと良いでしょう。
10・間は「持てない」「持たない」どっち?
× 間が持たない
○ 間が持てない
解説
ちょっとした違いですが、気になるところです。文化庁が発表した平成22年度「国語に関する世論調査」では、本来の言い方とされる「間が持てない」を使う人が29.3パーセント、本来の言い方ではない「間が持たない」を使う人が61.3パーセントと、逆転した結果が出ています。
確かに、多くの人が使えば、本来誤りであった言葉が辞書にも載るようになりますが、その際にも「本来は○○」「○○のこと」のような誘導が入ります。本当はどちらが正しいかを知っていて、変化も認める、そんなふうになりたいですよね。
この言葉は、本来は「間が持てない」がもともと。
どうでしょう?
解説を読んで少し整理できましたか?
今回選んだものは、言い間違いが多い言葉です。言い間違えている人が多いということです。でも、言葉の言い回しの正誤は多数決で決めるものではありませんから、本来の正しい用法を知っておくことは本当に大切なことですよね。間違えて覚えていても、語源や由来を調べたり、漢字に直してみたりすると、覚え直しができます。
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