「もう辞めるしかないの?」仕事、ダブル介護と子の受験で三重苦。「介護経験者ゼロ」の職場で私が限界を迎えた日
仕事と介護、さらに受験生の母。周囲に「介護をしている」と伝えて変わったこと
「どうしよう、急に足が動かなくなったの……。お父さんは隣の部屋にいるから呼んでみたけど、なかなか気付いてくれなくて」
2021年11月下旬、Nさんが仕事中に受けた1本の電話。相手はNさんのお母さんで、すぐに「ただ事ではない」と感じたそうです。動揺しながらも、お母さんを病院へ。そして医師から告げられたのは、初めて耳にする「脊髄梗塞(せきずいこうそく)(※1)」という病名でした。
(※1)脊髄に血液を送る血管が詰まり、神経細胞が壊死(えし)してしまう病気。多くの場合は突然発症する。症状は、下半身の麻痺や手足のしびれ、背中や腰の強い痛みなど。
「前日まで元気だったお母さんが、なぜ?」
すぐに現実を受け止め切れない状況の中、それ以上にこの事態に困惑していたのは、Nさんのお父さん。「今、どこ?」と何度もNさんに電話をかけ、状況を話してもなかなか理解してもらえない。徐々に認知症が疑われる症状も見え始め……。前回は、突然訪れた“ダブル介護”スタート時の様子を中心にお届けしました。今回は、その続きから~。
初めてのことに戸惑いながらも、地域包括支援センター(※2)のスタッフの支えもあり、何とか介護生活をスタートさせたNさん。数ヶ月後、病院での治療とリハビリを終えたお母さんが自宅に戻ると、ホッとしたのも束の間、待っていたのは過酷な“在宅ダブル介護”の日々でした。
(※2)住み慣れた地域で生活を継続することができるよう、介護や高齢者に関する悩み、心配ごと、暮らしのことなどを支援する「総合相談窓口」。
「住まいは1階に父と母、2階に私たち家族(夫、私、娘、息子)の2世帯住宅ですが、顔を合わせるのは1ヶ月に1回程度。特に干渉し合うこともないサッパリした関係でした。でも介護がスタートしてからは、常に1階と2階を往復する毎日で……。当時はフルタイムで働いていたこともあり、『仕事と介護を両立できるのか』と不安でいっぱいでしたね」
認知症の症状が進んできたお父さんは、次第に着替えや入浴を拒否するようになり、促すと怒鳴ることも増えてきたそう。
他にも、大事なものを隠されて苦労したこともあったとか。「保険証や大切な郵便物などをいったんテーブルに置いたりすると、数分後にはなくなっているんです。必死に探すとタンスの奥から出てきたり、『なぜここに?』という場所で見つかったりすることもありました。自分の個人情報を娘に見られたくない、という潜在的な思いがあったのかもしれません」とNさんは話します。
仕事に家事、そして新たに介護という役割を担っていたNさん。実は、これ以外にも「大学受験を控えた息子の母」という重要な役割がありました。
「昔に比べると、親が受験に関わる場面が多くなりましたよね。学校や塾の先生から『○日までに書類を出してほしい』『今日はこの資料を配った』など、連絡が来る回数も増えてきて。でも電話だと忘れてしまう可能性も高いので、先生方には私が介護をしていることを伝え、『必ず対応するので、連絡事項はすべてメールで欲しい』とお願いしました」
「私はいま、家族の介護をしています」と周囲に打ち明けるのは、少し勇気がいることかもしれません。でも思い切って話すことで、コミュニケーションが取りやすくなったり、物事がスムーズに進むこともある。「(介護中ですが)『こういう形ならできます』というように、自ら提案することも大切だと思います」とNさんは教えてくれました。
▶介護に理解がない職場、もう辞めるしかないの?
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