「もうやめて!」祖母の死を知らされた直後も争う両親…ヤングケアラーの高校生が限界を迎えた日
家族の介護や家事を担いながら高校生活を送っていた清野孝弥氏。体育祭を目前に控えたある日、突然帰宅するよう父から連絡を受け、祖母の死を知らされます。
悲しみを受け止める間もなく、家庭ではさらに問題が重なり、清野氏の心はついに限界へ。
本記事では、生活保護世帯のヤングケアラーとして育った清野氏の著書から、家族を支え続けてきた高校生が直面した過酷な一日について紹介します。
※本記事は書籍『ヤングケアラーの僕が東大に合格するまで: 家事、介護、そして勉強 それでも僕はこの家から東大に行く』(清野孝弥:著/東洋経済新報社)から一部抜粋・編集したものです
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体育祭前日に
体育祭準備期間の1カ月は、あっという間に過ぎ去り、体育祭リハーサルの日を迎えました。黄組の代表として体育祭に関わっていた僕は、1日中大忙しになる……そのはずでした。
「孝弥どこいる? もう体育館でリハーサル始まるぞ」、LINEが届きました。午前10時。僕は自宅のドアの前にいました。
体育祭リハーサルで使用する荷物を両手に抱え、重たいリュックを背負いながら登校していた僕ですが、「いますぐ帰ってきなさい」という父からの連絡を受け、急遽帰宅することになったのです。
家のドアノブに触れた瞬間、中学3年生の1月に味わったような「嫌な直感」がしました。身体中が重たくなるような、そういう拒絶反応に近いものです。ただ、家に入らないわけにはいかなかったので、恐る恐る扉を開けてみました。
すると、玄関には重苦しい空気が流れていました。両親は深刻な面持ちのまま、言葉を交わすことなく、並んで椅子に座っていました。玄関の閉まる音が響くと、両親は一拍置いて、静かにこちらへ視線を向けました。
「孝弥悪いね。急に呼び出して」
なぜか母が先に口を開きました。
「体育祭直前で忙しいんだろうけど、こればっかりはすぐ孝弥に伝えたほうがいいだろうって、お父さんが言うからさ……」
母はゆっくりと言葉を選びながら、事情を説明してくれました。一方、メールを送った張本人の父は、魂の抜けたような虚ろな目で、どこか遠くを見つめていました。
「それで? なにがあったの?」
部屋の張り詰めた空気に嫌気が差してきた僕は、急かし気味に尋ねました。
「それが……」
「なに?」
「おばあちゃんが死んじゃったの」
「えっ……? ど、どういうこと?」
「おばあちゃんが自宅で亡な くなっていたんだって」
「だって、おばあちゃんって、別に病気とかじゃなかったよね? どうして急に」
「それが……」
母がチラリと父のほうに目線を向けたのが見えました。
「え? どういうこと?」
「……自殺したんだよ」
黙っていた父が、俯いたままぼそっと呟きました。おばあちゃんとは、父親方の祖母のことです。父からすれば、実の母親に当たります。
そのおばあちゃんが亡くなった、しかも自殺で亡くなったということが、どれほど父にとって衝撃的なことだったのか。考えるだけで心が痛みました。
「なんで自殺なんか……」
父は、情けなさそうな顔を浮かべたまま、ふたたび黙り込んでしまいました。
▶ついに心が限界に…首元に突き付けられた包丁
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