「なんでも捨てる夫」に大切にしていた編み物道具を捨てられ、子どもの前で嘲笑される結婚生活。それでも12年も我慢した私の本心は

2026.10.24 LIFE

モラハラ・夫婦問題カウンセラーの麻野祐香です。「働く女性」は、モラハラやDVをする夫から簡単に逃げられるのでしょうか。いいえ、そんなことはありません。さまざまな事情から、支配的な配偶者との結婚生活を続けている方は少なくありません。オトナサローネ世代のモラハラ被害にフォーカスした本連載、今回は、「大切な物を捨てられても、自分が謝るしかない」そんな我慢を重ねてきたEさんのお話です。

※本記事は、相談者様への敬意と守秘義務に十分配慮したうえで、モデルケースとして編集・再構成しお届けしています。特定の人物や事例を示すものではありません。

※写真はイメージです

「娘のマフラー用」と書いた紙も、無視されて

Eさんは43歳、結婚して12年目。会社員の夫と小学3年生の娘と暮らし、週4日、歯科医院の受付でパートをしています。仕事と家事を終え、娘が眠ってから編み物をする時間を、何より楽しみにしていました。

 

ある夜、Eさんは娘のマフラーの続きを編もうと思い、うきうきしながら棚に置いていた箱を開けました。ところが、箱の中には編みかけのマフラーも、買い置きの毛糸もありません。残っていたのは、自分で貼った「娘のマフラー用」という紙だけでした。

 

夫に尋ねると、

「俺が捨てた。使ってない物を置いておくな!」

という答えが返ってきました。「自分は家を片づけただけだ」と言わんばかりの、得意げな表情だったそうです。

 

実は夫に物を捨てられたのは、初めてではありません。以前にも画材や飾りを無断で処分され、そのたびにEさんは、「使う物だから、勝手に捨てないで」と伝えてきました。今回は手芸用品を一つの箱にまとめ、棚に収めたうえで、使い道まで書いておいたのです。

 

「娘のために使う物だとわかれば、残してもらえるかもしれない」そう考えて貼った紙でした。ところが、そこまでしても、夫はEさんに尋ねることなく中身を捨ててしまったのです。

 

捨てた夫ではなく、抗議した妻が責められる

「あれは作りかけだったの。勝手に捨てないでって言ったよね」

Eさんがそう言うと、夫の声が強くなりました。

「誰に向かって、そんな言い方をしている! 片づけてやったのに、文句を言うのか……お前は何をしてもらっても感謝しないな」

 

Eさんが話したかったのは、「なぜ、自分の物を黙って捨てたのか」ということです。それなのに夫はその問いには答えず、Eさんの言い方や、「感謝が足りない」ことを責め始めました。

 

無断で物を捨てた夫の行動について話していたはずなのに、いつの間にか「夫を不快にさせた妻の態度」が問題にされている……これは、モラハラでよく見られる「責任転嫁」のひとつです。

 

夫婦で暮らしている以上、家にある物をどうするかは、本来なら二人で相談して決めるものです。でも夫は、Eさんの希望を聞いたり、相談したりするのではなく、自分の判断だけを通そうとします。Eさんが、「捨てないで」と抗議すると、夫はそれを「自分に逆らった」と受け取るかのように、さらに怒りを強めるのです。妻の態度を責めれば、無断で物を捨てた自分の行動について話し合わずに済むからです。

 

しかも、夫の趣味の雑誌や古い道具は、同じ部屋に残されたままでした。

Eさんがそのことを指摘すると、

「お前の無駄な物と一緒にするな」

と言われます。

夫は自分の物を残せる。でも妻の物は、必要な理由を説明しても捨てられる。片づけの基準を二人で決めているのではなく、「何を残していいか」を夫だけが決めている状態でした。

 

ぐちぐち言い続ける夫

その夜、夫は夕食の席でも、

「家を片づけた俺が、なぜ責められるんだ」

と言い続けました。Eさんが黙っていると、

「黙っていたらわからない。自分が悪かったと思わないのか」

と怒鳴ります。

 

説明すれば「言い訳をするな」と責められる。黙れば「反省していない」と言われる。Eさんには、何を言えば夫が責めるのをやめてくれるのか、わからなくなっていました。

 

そばで食事をしていた娘も、身動きひとつしません。夫の声が大きくなると、黙ってテレビのほうを見る。Eさんと目が合っても、すぐに視線をテレビへ戻しました。せっかくの夕食なのに、夫が怒鳴り続ければ、娘も落ち着いて食事をすることができません。

 

「自分が謝れば、この場は静かになる」

Eさんはそう考え、小さな声で、

「言い方が悪かった。ごめんなさい」

と謝りました。すると夫は、

「最初からそう言えばいいんだ」

と言って、ようやく怒鳴るのをやめたのです。

 

「何をやってものろい」と夫から笑われて

数日後、娘から、「マフラー、まだできないんだ?」と言われたときのことです。

夫は「何やってものろいな」と、Eさんをあざ笑いました。(材料さえあれば、とっくに出来上がっていた。編みかけのマフラーを捨てたのは夫なのに……)Eさんは何も言えず、一人で悔しさをかみしめていました。

 

こうした理不尽なやり取りが重なると、相手にわかってもらおうとすることよりも、早く謝って怒りを終わらせることを選ぶようになることがあります。娘が不安そうにしていれば、「自分が引けば静かになる」と思うのも無理はありません。

 

本来、夫が怒鳴り続けていることの責任までEさんが負う必要はありません。それでもEさんは、家庭の空気を落ち着かせる役目まで自分が背負うようになっていました。その積み重ねが、夫に意見を伝える気力まで少しずつ奪っていったのです。

 

本編では、モラハラ気質の夫の前で「何が正しいか」よりも「どうすれば相手を怒らせずに済むか」を優先するようになってしまったEさんについてお伝えしました。

本来なら、自分の物を勝手に捨てられた側が謝る必要はありません。それでも、反論すれば責められ、黙っていても責められる状態が続けば、「自分が謝れば、この場は早く終わる」と考えるようになることがあります。これは、相手の言い分に納得したからではありません。これ以上責められないために、その場を収める方法として謝ることを選んでいるのです。

そうしたことが繰り返されると、自分の気持ちや希望を伝えることそのものを、少しずつ諦めるようになっていきます。

▶▶「今はまだ離婚できない」月収9万円、娘は小学生。モラハラ夫から離れたい妻に立ちふさがる現実

では、なぜEさんが12年間夫との生活を続けてきたのか、そして娘への影響を感じながらも、すぐには離婚を選べない現実についてお届けします。

 

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