「おかあさんが怒鳴られるところ、もう見たくない」娘のひと言でハッとした。夫がホームパーティで「早く謝れよ」とキレた瞬間を、娘は見ていた
妻の都合は一切考えず、家に人を呼びまくる夫
Oさんは46歳、結婚17年目です。会社員の夫、高校2年生の娘と暮らし、平日は事務の仕事をしています。
夫は、人を家に呼ぶことが好きでした。でも、Oさんの都合を聞かずに予定を決めるのです。準備はすべてOさんがしなければならないため、自分の予定を自由に入れられない状況が、もう何年も続いていました。
夫はいつも突然予定を決め、買い出しも料理も片づけも、Oさんに任せきりでした。以前、Oさんが「買い出しだけでも手伝って」と頼んだことがあります。すると夫は、その「手伝って」という言葉を、「客が来るのを面倒がっている」と受け取ったのです。
「俺の友達が来るのが、そんなに嫌なのか!」
そう責められるうちに、Oさんは夫に頼むこと自体をやめ、一人ですべての準備をするようになっていました。
Oさんは、ただ「手伝ってほしい」と頼んだだけです。それなのに夫は、「俺の友達が嫌いなんだろう」と話をすり替えます。自分の非を認めず、妻を責めるモラハラの手口です。そうすれば、「自分が何も手伝っていない」という問題から目をそらすことができるからです。こうして話をすり替えられるうちに、Oさんは何も頼めなくなっていきました。
普段の夕食でも、「お茶」「醤油」と、自分でできることまで命令口調で頼みます。Oさんが「今、私も食べているから、自分でやって」と答えると、「そのくらいできるだろう」と責めるのです。「そのくらい」という言葉には、妻の負担を小さく扱い、「妻は夫の世話を優先して当然」という考え方が表れています。Oさんは、自分の食事を中断して席を立つしかありませんでした。
母の付き添いより、夫の友人を優先させろというの…?
金曜日の夜のことです。夫が突然、「明日、友達が来るから」と言いました。でもOさんは、その日は母親の通院に付き添うと、一週間前から伝えていました。母親の検査結果について、医師の説明を一緒に聞く約束もしていたのです。
「明日は病院だから、料理はできないよ。お友達を呼ぶなら、自分で用意して」
Oさんがそう言うと、夫は声を荒らげました。
「もう来るって決まってるんだぞ」
Oさんが、
「前から、その日は何度も母の病院に行くって言ってたよね」
と返すと、
「俺に恥をかかせる気か。家に人を呼ぶくらいで騒ぎやがって!」
と怒鳴りだしました。Oさんは、「母親の付き添いがあるから、自分は料理できない」と言っただけです。夫が準備をするのであれば、友人を呼ぶこと自体はできます。それでも夫は
「そこまで嫌なら、お前が電話して断れ。『飯を作りたくないから来るな』ってな」
と言いました。そして、友人の名前を表示したスマホを、Oさんの前に置いたのです。
Oさんが困って黙っていると、
「ほら、電話もできないくせに文句ばっかりだ」
と、せせら笑いました。
「俺に恥をかかせる気か」という夫の言葉には、妻が自分の言うことを受け入れないことを、「自分への反抗」と受け取る考え方が表れています。妻にも予定や都合があります。毎回、夫の思いどおりに動けないのは当然のことです。それなのに夫は、Oさんが「その日は無理」と断ったことを、「俺の立場がなくなる」という別の問題に置き換えました。
これは、話の焦点を別の問題にすり替える「論点ずらし」です。本来話し合うべきなのは、「Oさんには母親の通院付き添いがあり、夫が友人を呼ぶなら誰が準備をするのか」ということです。ところが夫は、「俺に恥をかかせる妻が悪い」という話に変えてしまいました。
ここには、うまくいかないことを相手のせいにする「他責思考」も表れています。友人を家に呼ぶ約束をしたのは夫です。それなのに、断る役も、友人から悪く思われる役も、Oさんに押しつけようとします。「料理を作りたくない妻」として電話させれば、友人から悪く思われるのはOさんです。電話をしなければ、「断ることもできないくせに」と、また責められる。どちらを選んでもOさんが悪者になる形にして、夫は自分が決めた約束の責任を負おうとしないのです。
言い争いのさなか、娘が心配そうに部屋から出てきました。Oさんは、これ以上言い争いを聞かせたくありませんでした。「明日は午前中に料理を作ってから出かけるから」そう答えました。自分が折れれば、夫は怒鳴るのをやめる。そう思い、母親には、病院で会う時間を遅らせてほしいと連絡しました。
早朝から一人で買い出しと料理をしたのに、文句を言われて
翌日、Oさんは早朝から開いているスーパーを探し、たくさんの食料品を買いました。重い荷物を一人で運び、朝から料理を作りました。夫が勝手に自分の友人を家に招いたのに、夫は何ひとつ手伝いません。Oさんは、買い出しと料理だけで心身ともに疲れ果てていました。料理の温め方を書いた紙を食卓に置き、昼前には病院へ向かうため、「足りなければ、追加のおつまみは買ってきてね」と夫に頼みました。すると夫は、
「こんなもので足りるわけないだろ」
「客が来る日に出かけるなよ」
と、また文句を言い始めました。
前夜は、「料理を用意すればいい」という話だったはずです。ところが今度は、出かけること自体を責めるのです。
Oさんが、
「母の病院の付き添いは、前から決まっているって言ったよね」
と再度伝えると、夫は、
「自分のことばっかりだな」
と吐き捨て、友人を迎えに出ていきました。
友人の前で「早く謝れよ」と迫られて
Oさんが玄関で靴を履いていると、夫が友人二人を連れて戻ってきました。すると夫は、友人たちに向かって「こいつ、客を置いて出ていくんだよ。せっかく来てもらったのに悪いな」と言いました。そしてOさんに、「早く謝れよ」と怒鳴ったのです。Oさんは「今日は母の病院の付き添いがあって……」と説明しようとしました。しかし夫は、「言い訳はいいから。先に謝れよ!」と遮りました。
すると友人の一人が「お忙しいところ準備していただいて、ありがとうございます。出かけてくださって大丈夫ですよ」と言ってくれました。それでも夫は、「こいつはいつもこうなんだ。人への気遣いがない」と、Oさんを否定するのをやめませんでした。
Oさんが黙っていると、夫は声を低くして、「聞こえないのか」と迫りました。台所では、娘がこちらを見ています。これ以上責められれば、娘も不安になる。そう思ったOさんは、「せっかくいらしてくださったのに、家にいられなくてごめんなさい」と謝りました。
早朝から買い出しに行き、疲れた体で料理を作り、母親の病院へ行くことも前もって伝えていた。それなのに、人前では「気遣いのできない妻」として責められ、謝ることまで求められる。家を出たOさんの目から、悔しさで涙がこぼれました。
友人は何も言っていないのに、それでも夫がOさんに謝罪を求め続けたのは、単なる友人への配慮だけでは説明できません。Oさんが自分の指示に従わず、予定どおり出かけようとしたこと自体が、夫には気に入らなかったのです。だから、「人への気遣いがない」とOさんの人柄を責める。そうすれば、自分が勝手に友人を招き、準備をすべて妻に任せたことについて考えなくて済みます。
しかも、Oさんが人前で頭を下げれば、
「夫が上で、妻は従う側」
という関係を、その場でも確認することができます。相手の事情を聞かず、人柄を責め、謝るまで追い込む。これも、モラハラに見られる支配のひとつです。Oさんは謝ることで、ようやく家を出ることができました。納得したから謝ったのではありません。夫の友人たちの前で責められ続ける状況を、早く終わらせたかったのです。
妻が帰宅してすぐ「全部お前のせい」と責める夫
その夜、Oさんが帰宅して「ただいま」と言うと、夫はすぐに「お前の仕事、たまってるぞ」と声を荒らげました。食卓には、食べ残した料理が載った皿やコップが、山のように残されていました。夫は「お前のせいで、みんなが楽しめなかった」と言いました。母親の検査がどうだったのかは、何も尋ねません。
「あなたの友達は、そんなこと言ってなかったと思う」
Oさんがそう返すと
「そんなことない。全部お前のせいで台無しだ」
と、さらに声を強めました。夫は、とにかくOさんが悪いという話にしたいのです。
Oさんは、反論すればまた責められるとわかっていました。疲れているのに座ることもできず、そのまま食卓を片づけ、洗い物を始めました。すると、リビングにいた娘が「私も一緒に洗う」と言って手伝ってくれました。そして小さな声で「次は私も料理を手伝うから」と言いました。
Oさんが「あなたがやらなくていいよ」と返すと、娘はこう言ったのです。「でも、料理が足りなかったら、またお母さんが怒られるでしょ。お母さんが怒鳴られるところ、もう見たくないよ…」
父親が怒鳴るのは、料理が足りないから。娘は、そう思っていました。母親が父親に怒られないようにと気を使う娘の姿を見て、Oさんは胸が締めつけられました。夫が怒っている本当の理由は、料理の量ではありません。「Oさんが自分の言うとおりに動かなかったこと」を、夫が受け入れられなかったのです。
本編では、母親の通院に付き添う予定を前もって伝えていたにもかかわらず、夫から友人を迎えるための料理を用意するよう求められ、最後には友人の前で謝ることまで強いられたOさんについてお届けしました。
▶▶「お母さんが幸せにならないとね」娘のひと言で、17年我慢した妻が離婚を決めた夜
では、夫に怒られないよう気を使う娘の姿を見たOさんが、自分自身も夫の顔色をうかがって予定を決められなくなっていたことに気づき、初めて「もう夫の言うとおりにしない」と動き始めるまでについてお届けします。
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