【岩井志麻子】閉経で、女は終わりなのか? 更年期を経てわかったこと

まだ生理が定期的にあったあの頃は、男が来たり旅行に行く話が持ち上がったら、まずは私の生理の予定日を真っ先に計算したもんだ。それは望まぬ妊娠を避けることも大事だったが、なんたって、その~、やりたかったから、ね。

 

巣鴨の店には生理用品が無い⁉

そんな頃、おじいちゃんおばあちゃんの原宿などといわれる巣鴨の薬局、スーパーには生理用品が無い、という話を聞いた。巣鴨にいるご婦人はもう生理が上がっているから、そんなの要らない、ってことで。

ほんまかいなと、ちょっと笑ってしまった。その頃の私は、生理は永遠にとはいわないが、まだまだ続くものであった。自分が閉経する日など、想像すらしなかった。

それが閉経する頃、友達に誘われて初めて巣鴨に行ってみて、好きなヒョウ柄の服もたくさん売ってるし、美味しい店も楽しい店もいっぱいあって、こりゃいいなと好きな町になってしまった。でもって、例の噂を思い出したわけよ。

薬局やスーパーを覗いてみたら、生理用品はちゃんと置いてあった。そりゃそうだよね、巣鴨にだって娘さんや妙齢のご婦人はいる。女がみんなおばあちゃんなわけない。

 

いま、巣鴨の街を歩いてみると

とはいえ、本当に巣鴨にはおばあちゃんがたくさんいる。

巣鴨が、ほんわかゆったり落ち着いた雰囲気なのは、おじいちゃんも含めてご老人はだいたい小柄なので、上の方の空間を広く感じられるのもあるね。

売ってる靴が、かかとの低い幅広で履きやすそう、歩きやすそうなのばかりであるのも、ふっと笑みが漏れた。これは、かつての「巣鴨には生理用品を売ってない」と聞いたときの笑いとは違うことにも気づいた。

 

閉経を迎えてわかったこと

閉経が自分には遠いものだった頃は、「生理が上がった女」を「あの人達と違って、私はまだまだ現役の女」と見る傲慢さみたいなものはあったのではないか。

閉経を迎える頃、巣鴨で老婦人向けの靴を見て出た笑いは、もっと違うものだった。

ハイヒールやデザイン重視の華奢な靴は履けなくなっても、機能的で優しい靴があるんだよ。何より、デザインもちゃんとおしゃれ。

生理があろうとなかろうと、女はきれいでいられるし、居心地いい場所や物もちゃんと用意されているのに安堵と感動をした。

 

「巣鴨閉経物語」

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この記事は
作家 岩井志麻子

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