【岩井志麻子】アナウンサー試験の最終面接まで行った、という話

2020.10.06 WORK

その手があったか、と意表を突かれる経歴の盛り方をする人がいる。

「有名航空会社キャンペーンガールの、最終候補の一人だった」
「人気テレビ局のアナウンサー試験、最終面接まで行った」

これ、キャンペーンガールでした、アナウンサーです、といえば完全に経歴詐称、嘘になってしまうんだけど。最終候補だった、最終面接まで行った、といわれれば、なっていたかもしれないんだ、落ちたけど実力はあるんだ、という目で見てしまうし。この人は嘘つきではない、とも思わされる。

その証拠はあるのか?

でもこの手の自分語りが多い人は、プチ詐欺師な傾向がある。
大金はだまされないかもだけど、警戒はしよう。だって、相当に怪しいんだよ。世界的なミスコンや人気オーディション番組みたいに審査の過程そのものがエンタメ、ショーになるようなものは別にして、たいていの試験や審査は関係者だけの密室で行われるんだから。その人が最終候補に残ったという証拠はなく、どこにも証人がいない。だから、嘘と責められずいいたい放題できる。

そういえば知り合いが、ぼくの彼女は某有名アイドルグループの研修生の候補だった、なんて自慢してたけど。それ、単なる素人じゃないか。
「昔、医者と付き合っていた。本当なら私は今頃、院長夫人じゃないかな」
「あの人気俳優にナンパされたよ。断らなかったら私、奥様としてCMに出てるかも」
といった、過去の見合いバージョン、有名人に口説かれたバリエーションもある。

 

恥ずかしながら、私にもある

結局、なれてないし。つまり、もう縁は切れてるんだし。でも、こちらの「本当だったらバナシ」は、たいていの人に何かしらある。恥ずかしながら、私にもある。だけどほんと、今はそれが無い、そうじゃないってな状態を、現実として生きてるわけよ。

妄想とも幻想ともつかない、過去の惜しい話。「断らなきゃ、今よりもっとバラ色の人生だったはず」と自分をイジイジつつき回したり、自虐と自慢を混ぜるのは、まだいい。

「本当なら偉い人なんだから、私を尊敬しろ。一目置け」と他人に圧をかけるようになったら、イカンよ。進み過ぎると、「前世はマリー・アントワネット。今も私はベルサイユ宮殿に住んでるの、おーっほほほ」みたいなことを口走るようになってしまうかもよ。

スポンサーリンク

この記事は
作家 岩井志麻子

スポンサーリンク

スポンサーリンク