その食べ物の本当の姿って?表の顔だけでなく「裏を見る」

「バイヤー代行業を始めるとき、おばあちゃんが使っていた調味料を扱いたいと思って調べましたが、半数も残っていませんでした。残っていても添加物を使ったまるで違う味のものになっていたり。メーカーそのものが廃業してしまったところもひとつやふたつではありませんでした」。美食のセレクトショップ「グランドフードホール(通称グラホ)」を立ち上げた岩城紀子さん(48歳)が警鐘を鳴らす、コロナ禍での食の危機とは?

ヘルスコンシャスな人が実践する賢い買い方#3

『裏を見て「おいしい」を買う習慣』岩城紀子・著 1,500円+税/主婦の友社

コロナでよくわかった。買う人がいなければ消えていってしまう

おばあちゃんが愛用していた調味料の半分ほどはもうつくられていませんでした。わずか20年ほどの間に、ていねいに作られたおいしいものが消え、誠実なものづくりをしていたメーカーの多くが存在しなくなったのです。

 

将来も食べ続けたいもの、いつまでも残ってほしい味は、買う人がいなければ消えてしまう。そんな事実に大きな衝撃を受けました。

 

コロナの自粛期間にお客さんが入らず、多くの飲食店が閉店を余儀なくされました。今まで感じたことのない「あの大好きなお店が、もしかしたらなくなってしまうかもしれない」という危機感を初めて覚えた人も多かったのではないでしょうか? 行けるようになったら、絶対に食べに行こう!と思ったお店は、あなたにとって「なくなったら困る」店です。

 

食べに行かないとお店がなくなるのと同じように、食品も買わないとなくなってしまいます。

 

全国には、家族経営などでていねいにおいしいものを作っている小さなメーカーがたくさんあります。そういうところは、お客さまがいなくなればすぐに経営の危機に陥ります。そんな絶滅危惧の良質なメーカーを見つけて、多くの人の目に触れる表舞台に立たせるのも私達の仕事だと思っています。そのためにバイヤーたちが今日も全国をくまなく足で探しています。

キムチ味の調味液に漬けただけの偽キムチと違って、熟成すればするほど乳酸菌が増える本物の発酵キムチ。「甘辛白菜キムチ」580円(税抜)

おいしいものを作る人がいて、それを表舞台に出す私たちがいて、買って支えてくれるお客さまがいて、その三位一体があって初めておいしいものが将来に続いていくのです。

 

「買う」ことは「投票する」ことです。たくさん並んでいる中から、あなたが「推し」を選ぶ行為です。人気があれば残っていくし、人気がなければ消えてしまいます。

 

値段の安さや手軽さだけで買っていると、10年後、20年後には大手メーカーが作った大量生産の食品しか店頭に並ばなくなるかもしれません。そんなのつまらない! おいしいものを選べない未来なんて悲しすぎますよね?

 

表の顔だけでなく裏も見て、食べ物の本当の姿を知る

あなたは食品を買うとき、裏を見ていますか? 買うときには、食品の裏のラベルに書かれている「原材料」をぜひ見てほしいのです。

 

「原材料」には作り手の姿勢が現れています。

 

私は仕事で今までに何万食も食べ比べをしてきました。プロとして食べ比べをしているわけですが、プロでなくても、食べ比べをすれば誰でもおいしいものとそうでもないものはわかります。たとえば、スーパーのお豆腐を何種類か買ってきて食べ比べてみると、こっちは大豆の味と香りが濃厚だけど、こっちは薄い、これは甘みが強い、などいろいろな違いに気づくはずです。

 

ひとりではそうたくさん食べられないので、家族や友人たちとああでもないこうでもないと感想を言いながら食べ比べてみると楽しいと思います。そして、自分がおいしいと思ったものがどんな原材料でできているかを確認してみてください。

 

それと同時に、おいしくなかったものの原材料も見てください。何が違うのか? いろいろな気づきがあるはずです。国産大豆なのかそうでないのか? 遺伝子組み換えなのかそうでないのか? 消泡剤を使っているのかいないのか?など。

 

もうひとつ、食品を買うときに意識してほしいことがあります。

 

つい、陳列の奥の賞味期限が先のものを手に取っていませんか? 無意識のうちにそうしていると思いますが、そういう買い方の人が多いと、期限の近いものが残って廃棄されることになります。そして、廃棄を少なくするためにスーパーはメーカーに「もっと賞味期限を長くするよう」に要求します。するとメーカーは保存料をもっと増やさなければならなくなるのです。

 

「買い方」に私たちの健康と日本の食の未来がかかっている

食品を買うときには裏を見て、添加物表示のないもの、あるいはできるだけ少ない種類のものを買うようにしてください。

プロの料理人にも愛用者が多い、甘みと酸味のバランスが絶妙なすし酢。和風のドレッシングやマリネにも使える。「京風すし酢」680円(税抜)

おいしいものの原材料はわかりやすくてシンプル。米とか大豆とか塩など、私たちが知っている食材だけが書かれています。カタカナやアルファベットが混じった謎の暗号のような添加物の記載はありません。

 

少し高くても無添加が売れるようになれば、メーカーも添加物を使わなくなります。前にも書きましたが、メーカーだって本当は添加物を入れたくないのです。体に悪い添加物を入れずにおいしいものを作りたいのです。でも、消費者の望む条件で作るとなると、添加物を使わざるを得ないのです。

 

そして、すぐに食べるのであれば手前に並んでいるものを買うようにしてほしいのです。

 

私達の買い方に、将来の日本の食文化がかかっているんです。だから頼みますよ!

 

そしてできるだけ、出来合いの加工食品を買わずに、かんたんなものでいいので、自分でつくる回数を増やしましょう。自分で作れば、食材を選べますし、塩や砂糖、油の量なども調節できます。

濃厚な味がクセになる。おいしい湧き水と昔ながらの餌(ヒエやアワ)で健康に育った鶏の「お宝卵」〈6個入り〉470円(税抜)

まずは、いい卵で卵かけごはんを作ってみませんか? いい卵は、ネットなどで調べられます。こだわりの養鶏場は、鶏をどういう環境でどういう餌を与えて育てているか公表していますので、ここはよさそう!とピンと来たら取り寄せてみるといいと思います。その卵に天然醸造のお醤油をちょっとたらして、炊き立てのごはんにかければ、うーん、それだけで激ウマの一品になります。

 

もちろん、無添加で丁寧に作られたものは値段も多少、お高くなります。でも、食費は健康への投資です。現に「サプリが必要なくなった」という人もいますし、「医療費が減った」という人もいます。かなりリターンのいい投資だと思います。

 

もし今まで、体の外側を飾るものにかなりお金をかけていて、「ちょっと無駄遣いしてたかも」と反省気味なら、これからは体の内側から健康に美しくなる方向にシフトするのもwithコロナ時代の「ニューノーマル」だと思いませんか?

 

買い物をするときに「裏を見る」ことをぜひ、これからの習慣にしてくださいね。

※商品はグランドフードホール芦屋店・六本木店で扱っています。

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