なぜ群馬のベトナム人は「豚を盗んで殺した」のか?

行政書士法人KIS近藤法務事務所代表社員、ベトナム国立フエ科学大学特任教授の近藤秀将です。

さて、ここ数年、日本でベトナム人犯罪が、増えてきています。 私が、ベトナムの“大学教授”であるからでしょうか、様々な方々から「最近、ベトナム人の犯罪が多いけど、大丈夫?」と聞かれることあります。

確かに「コロナ禍」に入ってから、ベトナム人犯罪の報道が目立ってきています。

直近では、北関東で多発していた家畜窃盗事件で、ベトナム人犯罪グループが逮捕!という見出しが、ニュース等で拡散されています。

 

ベトナム人グループが家畜を窃盗した背景は

この事件は、10月26日、群馬県警が、同県太田市在住ベトナム人13人を入管法違反、オーバーステイなど不法残留の容疑で逮捕したものです。

 

これは、同県をはじめ北関東で多数の家畜窃盗事件が相次いでおり、その捜査線上に、このベトナム人らのグループが浮上してきたことが背景にあります。 この13人のベトナム人の内、10人が技能実習生として日本に入ってきていたとも報道されています。

 

これは、私から見れば「当然起きること」でした。

 

まず、人口面での説明から始めましょう。日本に暮らすベトナム人は約41万人で、全在留外国人第3位です。このままの勢いで増えれば、5年で第2位の韓国(約44万人)、10年で第1位の中国(約81万人)を抜き、日本で最も多い外国人はベトナム人になるでしょう。

 

在日ベトナム人の約半数が技能実習生です。また、世界各国からの技能実習生のうちの半分もベトナム人なので、「在日ベトナム人=技能実習生」というイメージ通りなのです。 ちなみに、 この在日ベトナム人の現状については、今冬発売予定の拙著『外国人雇用の実務〈第3版〉』(中央経済社)で詳しく述べています。

 

技能実習という「なし崩しにできた奴隷制度」がはらむ問題点

さて、技能実習制度は「途上国に日本の優れた技術・技能を移転する」技術移転という建前の下にスタートしました。

 

ですが、実際には「人手不足の中小企業の安い労働力」になっていることは周知の事実です。

 

日本政府は、真正面から「技能実習生」を労働者として受け入れていないのに、コロナ禍によって実習の継続できなくなっても、日本での“労働”を許す政策をとりました。(法務省「新型コロナウイルス感染症の影響により実習が継続困難となった技能実習生等に対する雇用維持支援」)。

 

技能実習生は就労期間と転職という、本来は労働者として保障されるべき権利を制限されていますが、これは「技術移転」という建前、国際協力の錦旗があったからです。

 

しかし現実には、技能実習生は、実日本人がやりたがらない仕事、3Kなどに対する人手不足解消ための労働者として使われてきました。

 

今回「コロナ禍」において実習継続ができなくなったのであれば、日本政府は、少なくとも同種の企業に制限して転職を認めるなら理解できます。

 

が、何を考えたのか、それ以外の業種(特定産業分野・特定技能制度の14分野)への転職を認めました。

 

あろうことか、日本政府は、自ら進んで技能実習の「技術移転」という建前を破綻させました。私がライフワークとして問題提起しているのは、この実情に合わない建前の矛盾具合、政策の行きあたりばったりさ、そして人権無視です。

 

外国人問題について積極的に取り上げている西日本新聞でも、私と同様の指摘をしています(2020年10月26日「技能習得」矛盾あらわ 実習生、相次ぐコロナ解雇…“転職”解禁も」)。

 

私たちが「野菜」を安く食べられるのは彼らの犠牲あってという事実

技能実習生は、日本語能力が低い等のハンディがあることから、転職できない者も多くいます。 その一部が、生きて行くために犯罪行為に走ってしまう。 日本政府が創出した「技能実習」という構造的な歪みによって、来日し不幸になるベトナム人の数は増えている、それが今回の背景なのです。

 

そして、上記の通りにベトナム人は急激に増えていることから、この不幸の連鎖は継続し拡大して行くでしょう。

 

だからと言って、私は、「罪を憎んで、人を憎まず」とまでは思いません。 それは、詭弁にすぎない。

 

私は、ベトナムのフエ市にある「PHAN日本学院」において大卒帰還技能実習生(ベトナムに帰国した元技能実習生)に対する再キャリア教育をしています。 その学院生達は、元技能実習生ですが、真面目に日本で働いた人達です。

 

日本の会社で真面目に働き、貯金をする。搾取されながらも出稼ぎとして成立してしまっているのが事実で、多くのベトナム人技能実習生は一定額の貯金を手にして帰国しています。

 

だからと言って「技能実習制度が良い」と評価はしてはいけません。 現状の技能実習制度を支えているのは、ベトナム人等の途上国出身者の犠牲です。 我々日本人が、安くて新鮮な野菜を食べられるのは、技能実習生のおかげであることも忘れてはならない。

 

犯罪行為に手を染めるベトナム人は、糾弾されるべきです。

 

が、その前提である技能実習制度の歪んだ構造へも批判を向けるべきです。 国際貢献を名を借りた労働搾取。 その派生としての外国人犯罪。 今、我々日本人は、自省が求められています。

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