大人の会話で言ってはいけない「〇〇感のある言葉」

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みなさん、静岡で有名な炭火焼きハンバーグのお店「さわやか」をご存知ですか? 私は静岡に実家があるというのに、昨日初めて訪れました。日曜の夜に3時間待ちと言われて、翌日月曜にリベンジしたのですが、平日の午後1時でも1時間待ちでした。どうしてこんなに人気があるのでしょう!?  私は、「さわやか」の店員さんの「言葉」から、この店の成功の秘訣を感じ取りました。今日はその秘訣を自分自身に活かす方法を紹介します。

ファミレス用語がないファミレス

ファミレス言葉、コンビニ敬語という種類の言葉があります。総称「バイト敬語」と呼びます。
・こちら、コーヒーになります。

・ハンバーグでよろしかったでしょうか。

・一万円からお預かりします。

 

このような有名すぎるバイト敬語は、さすがに皆さんのような素敵な女性は使わないと思いますが、どうして良い印象を持たないかと言えば、文法的におかしいとか、敬語として間違っているとか、そういう問題ではないのですよね。ひとえに「言わされている感」が満載だからです。
マニュアル通り。間違いはない。何の根拠もなくそう思っているので、発する言葉に自分の気持ちがのせられないのです。

 

本当は何を伝えたいのかって考えたことありますか?

おにぎりハンバーグランチ 1,058円/げんこつハンバーグの炭焼きレストランさわやか(撮影/池田実加)

例えばあまりに「言わされている感」満載の「こちらコーヒーになります」には、私は時々国語教師として「では今、これは何なんですか?」と突っ込みたくなることもあります。
本当に、お持ちしたのが「コーヒーになる前の物体」で、「この飲み物、もうすぐポンっと音がして、パッとコーヒーになるんですよ!」というのなら、「こちらコーヒーになります」でばっちりです。言葉で何を伝えたいのかが事実とぴったり合っているからです。
冗談はさておき、この場合理想的なのは「コーヒーをお持ちしました」「お待たせ致しました」など。大好きな人に丁寧に煎れたコーヒーを渡すシチュエーションを思い描いてみてください。「こちらコーヒーになります」なんて言いませんよね。

 

「やらされている感」は少ないほうがいい

この店のソフトドリンクは「カンパイドリンク」といいます。店員さんが最初に、一緒に乾杯をしてくださるのですが、それがちっとも「やらされている感」がないのです。「今日はどのようなお集まりなのですか?」「何かお祝いをするような出来事はございましたでしょうか」と、まるで話しかけるように聞いてきます。こちらも思わず笑顔がほころびます。「素敵なお食事に乾杯」と店員さんはにこやかな笑顔とともにグーで乾杯をしてくださいます。会社が決めたことには理念からくる根拠があるはずです。それも分からずに「こうすることになっている」と思うので、言葉に気持ちが合わせられないのですね。

 

お店がヒットする要素は自然とにじみ出る

この「さわやか」、もちろん看板メニューのハンバーグが美味しいから有名なのですが、それにしてもあまりに人気の店なので、創業者の人の話や店の工夫なども調べてみました。就職系・転職系の記事まで読んでみました。
・とにかく安全第一である。

・おいしい肉を冷凍しない距離を考えて展開するので、東京には進出しない。

・主力のハンバーグに力を入れ、メニューを増やさない。

 

など、ビジネスのノウハウも知ることができました。特に、ハンバーグ以外のメニューを増やしすぎて、お客様にがっかりしたと手紙をいただいたというお話はとても素敵でした。クレームのことを創業者の方は『天使の手紙』と呼んでいることにも感銘を受けました。しかし、そんな企業理念だけでは片付けられないものが、従業員からにじみ出ています。

 

・お客様をお迎えする専用の係の人がいて、フルネームでお客様の名前を覚える。

・社員とバイトがにこやかに会話を交わしているが、よく聞くと決して無駄口ではなく、お客様に関する伝達事項である。

・自分の担当のお客様が帰る時には、わざわざレジにお礼を言いに来る。

他にもネットで見付けたのは

・食後の飲み物を「そろそろ持ってきてもらえるかな」と言ったお客に遅れたお詫びを丁寧にする。

なんていうのもありました。

実は私はこの日、待っている間に座っていた椅子に、携帯電話を置きっぱなしにしてしまったのですが、ちょっと様子を見に戻ったところ、「どうかなさいましたか?」と声をかけてくださいました。

はい。これが一流のホテルというのなら、普通の話ですよね。でもここは、失礼ながら静岡の、しかも客単価1,000円程度のファミリーレストランです。しかも平日なのに1時間も待っている人達で激混みのエントランスなのです。

 

とってつけたような言い方をしないことが大切

お客様と接する時に、正しい敬語を使えるようになる、美しい日本語を話せるようになる、そういうことはもちろん大切です。
でも、そういうレベルではない、どうにもならない美しさを出すためには、本当に美しくなっていないといけないのですね。美しいというのは、美人という意味ではありません。
お客様に対し、きちんと向き合い、本当に何を伝えたいのか心構えをしっかりするということだと思います。

「さわやか」の店員が形式的に「お客様の名前を覚えていると感じよく見えるみたいだ」「飲み物で乾杯するきまりがあるから私達は何も考えずただそれをするだけだ」という姿勢だと、そういう心も透けて見えるものです。しかしこのレストランは「私達の最高のハンバーグを仲間が焼いている。私達はそれを最高の真心でお出しする」そんな気持ちなんだと思います。

・「いつもお世話になっております。〇〇の△△です」

・「先日はありがとうございました。」

・「お目にかかれて光栄です」

・「またのご来店を心よりお待ち申し上げております。」

そんな定型文こそ、要注意です。「心」が透けて見えやすいのです。
形式的な言葉こそ、そこに心をこめることで差が出るのだと、ハンバーグを頬張りながら考えたのでした。

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国語教師・文章コンサルタント・文章力養成コーチ

松嶋有香

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