「もう卒婚してもいいですか?」52歳年収530万、幸福そうな妻が語ったウラ側は

いつか子どもが大きくなったら離婚しよう、そう思って虎視眈々と時を待っている女性は意外と多いようです。

 

FPとしてマネー相談の問診票に「将来どこでだれとどのように過ごしたいか」という項目を設けていますが、夫がいるにもかかわらず「一人で田舎でのんびりと」と書いている人に何人も出会いました。

 

今回は、子どもが就職して独立したのをきっかけに卒婚したいという玲子さん52歳のストーリーを紹介します。(※仮名・本人が特定できないよう事実関係を変更しています)

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■「卒婚してもいいですか?」プロのFPすら驚いたひとこと

玲子さんが口を開くなり、私は思わず「え?」と聞き返してしまいました。思いがけない相談だったからです。

 

問診票をちらりと見ただけでも、玲子さんは申し分のないお金のやりくりと貯め方です。もう少しアドバイスするとしたら、運用さえすれば100点満点。だから、てっきり運用のご相談かと思ったのでした。なのに、卒婚?

 

驚いている私に、「実は、次男を出産してから、夫とは同志になってしまいました」と事情を話し始めた玲子さん。まずはそのプロフィールからご紹介しましょう。

 

■堅実に一歩ずつ進んできた玲子さんのプロフィール

玲子さん 52歳 地元食品会社勤務
幸司さん 52歳 地方公務員
長男 25歳 他県で一人暮らし会社員
次男 22歳 この春大学を卒業し、同じ県内で一人暮らしをスタート

 

幸司さんと玲子さんは大学の同期。在学中から交際し、就職してお互いの仕事に慣れてきた26歳で結婚しました。付き合いが長く、結婚するのが当然という流れだったそうです。

 

27歳の時に長男、30歳の時に次男を出産。玲子さんは育児休暇を2回取得し、正社員で仕事を続けています。

 

次男を出産するタイミングで一軒家も購入。駅から徒歩20分の郊外、着実に繰り上げ返済をしたためもうすぐローンは完済です。

 

昨年は結婚25周年の銀婚式で、他県で一人暮らししている長男の帰省に合わせ、久しぶりに家族4人温泉旅行を楽しんだそうです。

 

■FPも太鼓判。模範的すぎる玲子さんの家計とは

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玲子さんの額面年収は約530万円です。家計のやりくりは、玲子さんがすべて管理し、幸司さんに5万円のお小遣いを渡し、毎月貯金12万円、積立保険8万円、合計20万円ずつ貯めています。

 

自分や子どもに万一のことがあって働けなくなっても生活していけるよう、自分の収入の7、8割は貯めていこうと結婚当時から続けているそうです。

 

その努力の結果、息子さん二人私立大学でも奨学金を借りることなく学費を支払うことができました。さらに、現在の貯金・保険資産の合計残高は4800万円あります。自宅は売却すると1500万だそう。

 

■小さなすれ違いが重なって、ある時「突然」表面化することもある

そんな順風満帆を絵に描いたような玲子さん夫婦ですが、一体何があったのでしょう? 実は、30歳で一軒家を購入して部屋数も多くなり、子どもを寝かしつけてそのまま寝てしまう生活になってから、いわゆるレスになってしまったとのこと。

 

夫婦生活はなくても、夫のことは家族だし尊敬しているし大好き。大事な息子たちのお父さん。それでいいと思っていたそうです。

 

ですが、昨年、息子たちが費用を出してくれて銀婚式の旅行に行ったとき、積もり積もった違和感がはじめて噴出します。

 

息子たちは玲子さん夫婦に露天風呂付きの特別室をプレゼントしてくれました。それなのに、夫からは「今までありがとう」の一言もありません。久しぶりに同じ部屋で夜を過ごすのに、普通におやすみと言い、先にさっさと寝てしまいました。そんな夫を見て、玲子さんの中で何かが崩れていってしまったというのです。

 

その後次男が巣立ち、「もういいかな」と思い相談に来られたということでした。

 

■FP・離婚カウンセラーとして、私がまず伝えたことは

離婚の相談といえば、夫の借金・浮気・暴力など明確な原因があり、自分自身を大切にしていくために離婚という選択を選ばざるをえないケースもあります。

 

時には、そのような原因があったとしてもその原因自体を解消できる光が一筋でも見えたら、まずはその糸口を探り夫婦を続ける選択肢はないか一緒に考えていきます。

 

ところが、今回は難しい。夫婦生活はなくても、お互い家族としてうまくやっているカップルもいるので、大きな離婚の原因があるように思えません。

 

日ごろの離婚相談の事例を紹介しつつ、「今までよく家計をやりくりしてがんばってきましたね。結婚もいろいろなカタチがあるものです。卒婚も選択肢のひとつなのかもしれませんが…」とお伝えすると玲子さんはこう話を続けました。

 

「お互いがいて当たり前って空気のような存在とよく言いますけれど。空気ってなくては困るものですが、地球上ならどこにでもある特別なものではないですよね」

 

家族はいて当たり前の存在かもしれませんが、他の人に変わりはできない特別な存在のはず。私はこう思いましたが、まずは今後離婚する場合のことをお伝えしました。

 

【FPからのアドバイス】

1・名義が玲子さん幸司さんどちらであっても、資産は財産分与で基本的には半分ずつ3150万円ずつです。十分すぎる額とは言えません。

 

2・玲子さん一人の年金は、月14万円前後しかありません。老後のマネープランを計画的に行う必要があります。

 

3・ライフプラン表を幸司さんと一緒に書きましょう。これは宿題とします。

 

■玲子さんのその後…私がこの仕事をしていてよかったと思う瞬間

家は、どちらかが住み続ける場合、家1500万円+貯金1650万円、住まない選択をした方が貯金3150万円という考え方をベースに調整していくことになります。

 

宿題のライフプラン表とは、人生設計で何歳の時に何をしたいか、そのためにいくら必要かを具体的にイメージしていくツールです。

 

そのライフプラン表を、言われた通りに幸司さんと書いた玲子さん。その後、なんとご夫妻で相談に来られました。

 

なお、事前に玲子さんから「卒婚したいと言ったのは内密に」とメールがあったので、私もそれに合わせ、素知らぬフリで相談を受けます。

 

「子育てやお互いの仕事のことでめいっぱいで、いるのが当たり前だった」と話し始めた幸司さんと玲子さん。

 

ライフプラン表を一緒に書くことで、子どもが自立した今これから二人でどんなことをしたいか、改めてじっくり話すことができました。なんと、退職記念に新婚旅行で行った沖縄に行くのもいいねなど話が弾んだとのこと。

 

どうやら、この2人はお互い大切な存在であるにもかかわらず、それを伝えたり感じたりする余裕がなかったのかもしれません。

 

最初の相談のときの切羽詰まった顔から一転して、この日の玲子さんはなんだか少女のような笑顔でした。私は、この仕事をしていてよかったと思えました。

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