いよいよ「男性の育休取得」が常識に?厚労省に改正育休法の背景を聞きました

2021.10.10 WORK

コロナ禍あたりから「男性の育休取得」がぐっと増えているように感じませんか?

それは気のせいではなく、統計的事実です。

さらに、今年6月に公布された「改正育児・介護休業法 」で男性育休取得の流れはより一層加速します。

従来の育児・介護休業法との違いや、概要と狙いを担当局に聞きました。

 

 

お話/厚生労働省 雇用環境・均等局 職業生活両立課 課⾧補佐 加藤明子さん

平成9年4月厚生労働省入省。令和2年4月より現職。

 

令和2年度、男性の育休取得率は7.48%→12.65%と急増した

(厚生労働省資料より)クリックで拡大

これまで、男性の育休取得率は年1%増ほどの推移でした。しかし、令和2年度は政府目標13%に対し12.65%と急増。要因はやはり、コロナ禍でのリモートワークなのでしょうか?

 

「単年度では判断できず、推移を見守る必要があります。が、来年4月に法改正を控えているため、男性育休取得の風潮が大きく後退する可能性は低いと捉えています」(加藤明子さん)

 

こと女性の社会進出という点では、育休産休、保活など、あらゆる点で不満が噴出する日本。ですが、実は法整備の面では諸外国より手厚い側面もあります。

 

たとえば、先進国の中で最も過酷と言われるのがアメリカ。連邦法と州法があるため一概に言いにくいのですが、主として連邦法の育児介護休業法 (FMLA)が利用されます。「過去12ヶ月にその会社で1,250時間以上働いた人が、育児や介護などで12週間を上限に休暇を取れる」制度ですが、休業中の雇用を保証するもので、経済的な保証はありません。また適用ハードルも高いため、ポジション確保や経済的な理由などで、2012年調査では4人に1人の女性が産後2週間で職場復帰していました。(Family and Medical Leave in 2012

 

「外国とは労働法も違うので比較しにくいのですが、たとえば日本では育児休業給付金が1歳までと、OECD水準から見ても非常に手厚い給付です。いっぽうで、男性の家事への参加時間が欧米諸国と比べ低いこともデータから見て取れます」(加藤明子さん)

 

もともと日本での育児休暇は1992年の育児・介護休業法施行以来、男女どちらが取得してもよいものでした。女性の利用は進み、対象人口の8割の取得で推移していましたが、男性の取得は低調でした。ただし、ニーズがないというわけではなく、最近では取得したいができなかったという声が増えていたのだそう。

 

「都道府県の労働局での窓口相談では、男性の育休取得相談、パタハラ相談などが増えていました。促進のための制度もさまざまに設けられていましたが、利用が進まず、今回の法改正につながりました」(加藤明子さん)

 

男性育休は産後すぐの取得ニーズが高いそう。出産直後の女性の身体的負担があまりに大きいことは若い世代ほど認知が進んでおり、その時期を支えたいという声が大きいのでしょう。

 

「ですが仕事の都合ですぐ取るのが難しいなど、個別の事情も多々あります。このため、今回の改正では6回までの分割取得など、柔軟な枠組みを作りました。この機会に男性女性ともに働き方を見直していくことが重要なのではないかと思います」(加藤明子さん)

 

【育児・介護休業法】改正のポイントは「取得しやすさのアップ」

積水ハウス「男性育休フォーラム2021」資料より

 

今回の法改正により、大きな社会変革が期待されるのは上記の表のうち2番め。会社側が育休取得の働きかけを行い、意思を確認することが義務付けられました。また、3番め、育休取得時期の分割も可能になりました。

 

「出生直後の時期や、1年後の育休復帰の時期、また育休延長時期など、働き方に応じて柔軟に休暇が取得できる仕組みです。また、これまではできなかった途中での夫婦の交代も可能になります。いろいろなパターンで働き方を捉えていただければと思っています」(加藤明子さん)

 

中でも注目したい点は!

これらの中で、特に私たちにとってメリットがあるのはこのあたり。

 

■申し出は出産2週間まででOK(職場環境の整備の都合により、1ヶ月前とするケースも)

仕事の状況により休みを取れるかどうかの判断が直前にもつれ込むケースも想定し、申し出は2週間前まででOKとなります。

 

■年2回の分割取得を可とした。途中からの夫婦交代も可能

途中で夫婦が交代して取得することも可能です。また、出産前の予定だけでなく、途中からの申し出もOKとなりました。

 

■休業中の就労が可能になった。あらかじめ予定していれば仕事ができる

これはより大きな魅力ではと思います。休業中も仕事ができるように定められたため、休業をとっておきながら、途中途中で就労して業務への影響を最低限にする工夫も可能です。

 

すでに実施している会社の例は?

男性育休を積極的に推進する企業の一つが【積水ハウス】。男性育休フォーラムを主催し、男性育休取得を推進しています。

そもそもお休みの取りづらそうなイメージのあるハウスメーカーですが、それは過去のイメージ。実は同社では2018年より、3歳未満の子を持つ社員を対象として男性育休制度を実施。育児休業1ヶ月以上の完全取得、最初の1ヶ月を有給(性別不問)、最大で4回の分割取得可能と定めています。

2021年8月末時点でグループ会社を含んで取得率は100%、なんと1052名が取得済み。同社ではすでに男性育休が「常識」なのです。

 

システムインテグレーターの【日本ユニシス】ではいち早く、2歳未満の子を持つ社員を対象とした男性育休取得制度を1993年から運用しています。取得率26.7%ではあるものの、なんと平均取得日数は99日を誇ります。また、インテグレーターならではの視点で、育休取得を経験したことによる業務イノベーションを高く評価。新規事業につなげる取り組みも積極的に行っています。

 

このような改革は、大会社だから、上場企業だからできることだという声もある中、新潟県の金属屋根部品メーカー、【サカタ製作所】の成果が光ります。同社は早い時点で働き方改革の推進を推し進めた会社として知られます。業務の棚卸しを綿密に実行、属人化を見直したところ、結果として男性育休取得が普及しました。すでに2歳未満の子を持つ社員の育休取得率は100%を誇り、パパ休暇制度2回取得も多数という結果を残しています。

 

男性育休を「ライフタイムスケジュール」に織り込んで!

育児負担、出産後の体力問題、育休復帰など、「負担」として語られることの多い産休育休。でも、ちょっとまって。視点を変えれば、「そもそも生まれたばかりのわが子はかわいい。いちばんかわいい時期に、少しでも長い時間一緒にいたい」という男性の視点はほぼ無視されてきました。

 

そんな時代は少しずつ終わりを告げます。歓迎しましょう!

 

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