「どうせ私なんか、もうおばちゃんだし」ぐるぐる妄想して自己肯定感が下がる【100人の更年期#58】

閉経の前後5年を一般に、更年期と呼びます。日本人の閉経の平均年齢は50歳なので、45-55歳の世代は更年期に当たる人が多いもの。身体の不調に苦しみ「更年期障害」の状態に至る人もいます。

 

私ってもう更年期なの?みんなはどうなの?

 

オトナサローネは同世代の女性100人がいまどのような更年期を迎えているのか、そのあり方を取材しています。(ご本人の年齢や各種の数値は取材時点のものです)

【100人の更年期#58】

 

アヤノさん 50歳 埼玉県在住。都内の私立大学を卒業後、人材系企業に入社。35歳でメーカーの営業職に転職、37歳で同じ年の夫と職場結婚、40歳で出産。10歳の一人娘がいる。趣味は散歩と家庭菜園。

 

ごくごく些細なことが脳にひっかかり、そればかりぐるぐる考えてしまう

「いつからこうだったのか、もう思い出せないんですけれど、最近は特にひどいんです。コロナ以降は」

 

自分の「ぐるぐる思考」について話してくれたアヤノさん。更年期の影響も大きいのではと考えているそうです。

 

「46歳のころ、耳鳴りやめまいが出るようになりました。耳鼻科に行っても悪いところは見つからず、更年期ですねと言われました。そのうち、そうした症状はストレスがかかると悪化することに気づきました」

 

もともと神経質なタイプだというアヤノさん。寝付きも悪い上に眠りも浅く、細かいことが気になるそうです。

 

「不安が強くて、例えば電車の時刻を何度も確認したり、忘れ物がないか不安で夜中に飛び起きたりします。でも、仕事上では周到なチェックはプラスに働きますから、長い間このネガティブ思考はむしろ自分の長所だと思っていました」

 

ですが、コロナ禍以降、未だに失敗するんじゃないか、また怒られるんじゃないかと、いつも何かしら他人の目線を考えてビクビクしている自分を改めて自覚しました。

 

「そしてふと気がつくんです。この年になってもう私のことを怒る人なんていないのに? いったい誰に怒られるの?って」

 

20代、自己肯定感が低すぎてブラック企業から「逃げ遅れる」

アヤノさんが大学卒業後に就職した企業は今でいうブラック企業でした。厳しいノルマ、パワハラ、過労死基準をはるかに超えた残業。

 

「お給料はよかったのでブラックとも言い切れないのですが、同僚もみんな似たような生活をしていたので異常さに気づけませんでした。私にとっては1日13時間、年360日働く生活よりも、上司からのパワハラが辛かったです」

 

同期がどんどん辞めていく中、アヤノさんはその会社に35歳まで残り続けました。

 

「今思えば、自己肯定感が低すぎて転職できる気もせず、我慢してしがみついてしまったんですね。当時は自分がノーと言ってこの場を去っていいことに気づけませんでした。結局35歳で身体を壊して、最後の力を振り絞って転職したのが現在の会社です。ごくごく常識的な会社で、アフター5に習い事をする人がいる!と最初は感動しました」

 

更年期まで影響を及ぼしている「毒親」問題

この自己肯定感の低さは生まれ育った過程が原因だとアヤノさんは考えています。

 

「私の母は今でいう毒親でした。自分ができなかった習い事や進学、就職を娘でリベンジしようとするけれど、自分自身が何かを努力したわけでもないので具体的な指導ができない。他人と比較して、怒鳴って我慢させる以外の方法を知らないんです」

 

暴力や明らかな暴言はない「弱毒」だったせいでアヤノさん側も毒に気づかず、支配と過干渉は40代まで続いたと言います。

 

「40歳で出産、育児をしてみてやっと気がづきました。母は自分が達成感を得て気持ちよくなるために私にひたすら我慢を強いて、制限をかけて育ててきたんだな、そのせいで私は自己肯定感が低いんだなと。気持ちいいんですよね、誰かを従わせるのは。そして、私は今も命令に反射的に従ってしまうので、パワハラで気持ちよくなるタイプの人たちの餌食になりやすいんです」

 

「被害妄想」なのだけれど、ぐるぐるしている最中にはわからない

何歳になっても怒鳴る母に萎縮する自分に戻ってしまうし、不安感で脳が埋め尽くされるというアヤノさん。このぐるぐるが一層ひどくなったのが更年期でした。

 

「朝、うとうとしている間に、妄想とも言えるぐるぐる思考に取り憑かれてしまいます。昨日のあの言葉は言うべきではなかった、きっとあの声は隣の会議室に聞こえてしまって、その場にいた人が当事者に報告をしている。もう私をあのチームから外す相談が始まっているに違いない。完全に妄想なのですが、悪いほう悪いほうへと勘ぐって、ぐるぐると考えてしまう」

 

病的だという自覚はありますが、ぐるぐる思考の間にはこれが異常な妄想だと気づけず、止めようがないそうです。

 

「夜も、洗濯物を干しながら、頭の中で怒りをずっとこねくり回しています。あんなことを言うなんてひどい、きっと私を貶そうとしてるんだ。あれ、この件は妄想じゃなくて本当に攻撃されたんだった(笑)。ほかには……私に面倒を押し付けるのに感謝もなく手柄を全部横取りするなんて。あれ、これも実際横取りされた(笑)。私、やっぱりパワハラの餌食になりやすいですね。いずれにせよ、ずっと頭の中で怒りをこねくりまわしている状態は普通ではありません」

 

私はもうこんなにおばちゃんなのに、意味がないと考えてしまう

ここまで自分の病理をわかっていても、特に解決策は見いだせていないというアヤノさん。

 

「自分なりにコーチングや心理の本を読んで、過去や未来のことをやめて今の幸福に集中すればいいということはわかりました。でも肝心の、ぐるぐる思考に陥っていると気づく方法がわからないのです。そもそも、本当にこれは更年期のせいなのかどうかも」

 

自己肯定感を自分で高めるために小さな成功と満足を積み重ねるというメソッドがあります。新しく何かを始めたり、従来続けてきた習慣を振り返ったりしながら、できたこと、成功したことにだけ目を向けて自分で毎日確認するというものです。

 

「ですが、いまさらだよねと考えてしまう。周囲のみんなはもっとうまくできてるよね、こんなことは子どもの頃からやってたよね、こんなおばちゃんになってからできたところで意味ないよね、って自己否定をしてしまうんです。意味があるかないかは自分が決めることのはずなのに、否定して怒鳴る母親に萎縮していた子どもの自分が出てしまいます」

 

たとえうまくいったとしても、今日は別のあれができなかった、これがうまくいかなかったと、ネガティブなことを掘り返してぐるぐるしてしまいます。

 

「30代まではそれなりに楽しめたファッションやメイク、ヘアも、おばちゃんが若作りして恥ずかしい、どうせおしゃれしても誰かが見るわけじゃないしと否定的に考えてしまいます。こんな私を誰かが見ることもないのに、何で頑張っちゃうんだろうと。男性の目線? とんでもない、私を女性として見る人なんてもういないですよ」

 

今だからこういう気持ちなのか、それともこれからもずっとこうなのか。昔のことが思い出せず、また未来に明るさも感じられないとアヤノさんはため息をつきます。

 

「100歳まで生きるとしたら50歳なんてまだ折り返しに過ぎません。これから先、いいこともあるのかな。すでに親元を離れてからの時間のほうが長いのに、いつまでも毒親なんて言っていていいんですかね。これも甘えなんじゃないですかね。私、大丈夫なんでしょうか」

 

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