【新・連載小説】あなたのはじめては、わたしのひさしぶり

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第1話

 

あきらめのころ

 

高坂くんに初めて会ったのは、4月1日だった。

 

あの頃の私は、恋愛をあきらめていた。

どうせ今年も何も起こりはしない、誰にも出会うこともない。きっと来年も、再来年も。

 

春は恋人たちの出会いや別れの季節というけれど、私には、特に何もなかった。

もう何年も恋をしていないので、そういうイベントからすっかり縁遠くなっていたし。

 

30代のうちは、変な意地があった。

まだ私は終わってない、なんて自分に言い聞かせて、いい男はいないかと婚活パーティーに顔を出してみたり、友達の結婚式の二次会でも最後まで残って出会いを求めてみたり、自分なりに幸せを探して頑張ってきたつもりだった。

でも、結局は何も起きないままに、私は女として枯れていこうとしていた。

 

40歳になった途端、一気にカヤの外に放り出された気分だった。

婚活パーティーの年齢制限も、39歳までというものをよく見かける。

恋愛は、もう自分とは関係がないものになってしまったのかもしれない。

そうあきらめかけていた時、私は高坂くんに会った。

 

 

わかかったころ

 

毎年4月1日に、私が勤めている会社では、入社式を行う。

教材販売や家庭教師派遣などを行っているこの会社に、今年は3人、新しい仲間が加わった。

 

彼らが上気させた顔で社長から辞令を受け取っている姿に拍手を送りながら、私は、自分が新入社員だった頃を思い出していた。

 

あの頃は、大学を出たばかりで、若くて、世間知らずで、だからこそ大胆になれたし、自分にはできないことなんてないとさえ過信していた。素敵な人と恋をして結婚する未来を、みじんも疑っていなかった。

 

私だって、恋愛経験が全くのゼロというわけではない。

入社したその年に、同期入社の仲間の一人と付き合った。

毎日一緒に退社するくらい仲が良く、皆からは結婚するだろうと思われていたし、実際、私たちもそうするつもりだった。

 

それなのに、どうして、ダメになってしまったのだろう。

急に、限界が来てしまった。

ふっと気づいた時には、二人でいる意味が見えなくなっていた。

一緒に週末を過ごす理由がわからなくなり、交際を続ける気力が急に失せてしまったのだ。

別れを切り出した時、特に揉めなかったのは、彼もきっと、同じ気持ちだったからなのだろう。

 

それから私は1人になり、今日まで1人で過ごしてきた。

 

 

新しいひと

 

私が所属する広報部には、今年、新入社員の配属はなかった。

各種媒体で会社の宣伝をしたり、新製品をマスコミに取り上げてもらったり、やることは色々ある。新人が来てくれたらありがたかったのに、会社は今の人員のまま頑張れ、と思っているらしい。

 

「そっちには新人が入ったのね、うらやましい」

私は後ろを振り向き、隣のシステム部の沙奈に声をかけた。

誰も使っていなかった角の机に、若い男の人が座り、居心地悪そうにうつむいている。

 

「新人じゃないのよ」

沙奈が振り向き、小声で答えた。

「あのコ、この間まで経理にいたの。高坂くんっていうの」

「あ、異動してきたんだ?」

「そう」

 

沙奈は彼に声をかける。

「あの、私、今夜の歓迎会の幹事なんですが、何か苦手な食べ物とか、ありますか?」

うつむいていた高坂くんは、顔を上げた。

長めの前髪の向こうに、クールそうな顔が見える。

 

彼は、ひどく醒めた感じの、細い瞳をしていた。

そして驚くほどはっきりとした声で、こう言った。

「あ、僕、歓迎会とか、そういうの、いらないんで」

 

私はびっくりして、高坂くんの顔から目が離せなくなってしまった。

 

(この小説のまとめはこちら)

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