「伺います」と「参ります」どちらを使うべき?意外な敬語の間違いと意味(後編)

2022.05.31 WORK

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「謙譲語I」は話題に上がっている人やものなどに対する謙譲表現

明日、オフィスに伺います。

ここで、話題になっているのは「オフィス」です。この場合は「あなた様のオフィス」という意味です。動作、この場合は「行く」ということですが、「あなた様のオフィス」に「行く」ことに対し、自分の動作「行く」を下に扱って「伺う」というわけです。

「敬語の指針」文化庁より
「先生のところに伺いたいんですが…… 」と述べる場合 「先生のところに行きた いんですが(先生のところを訪ねたいんですが)…… 」と同じ内容であるが 「行く(訪ねる 」の代わりに「伺う」を使うことで )「先生」を立てる述べ方になる。この ように 「伺う」は <向かう先> に対する敬語として働く。この種の敬語は,一般 に「謙譲語」と呼ばれてきたが,ここでは「謙譲語II」と区別して,特に「謙譲語I」と呼ぶこととする。

ちなみに最後の「ます」は尊敬語でも謙譲語でもなく、丁寧語です。なので、ここが変わると、ちょっと雰囲気も変わりますよ。

  • 明日、(きみの)オフィスに伺うよ。
  • 明日、(きみの)オフィスに伺うことにするかな。

どうです? 立場の上の人が、わざわざ「伺う」という謙譲表現を使っているかっこよさがにじみ出てきますよね?
これは、特別な人が使える言い回しなので、私たちはこの辺はスルーです(笑)

 

「謙譲語II」は聞き手に配慮する謙譲表現

明日、オフィスに参ります。

謙譲語IIでは、相手ではなく、この話を聞いている人に対する配慮として「参ります」となっているのです。特定の相手を立ててはいません。その証拠に、「オフィス」が話し相手のオフィスでなくても使えるのです。

  • 明日、弟のところにも参ります。

こんなふうにも使えますね。

「敬語の指針」文化庁より
【解説1:謙譲語Ⅱとその典型的な用法】
「明日から海外へ参ります 」と述べる場合 「明日から海外へ行きます 」と同じ内容であるが 「行く」の代わりに「参る」を使うことで,自分の行為を,話や文章 の相手に対して改まった述べ方で述べることになり,これが,丁重さをもたらすことになる。このように 「参る」は<相手>に対する敬語として働く。 この種の敬語は 一般に 謙譲語 と呼ばれてきたが ここでは謙譲語Iと区別して,特に「謙譲語II」と呼ぶこととする。

ちなみに、この「ます」は「参る」とセットです。「参ります」として使います。「ます」を省いて「明日、オフィスに参る」とは言いません。

 

敬意を払う相手が誰なのかをより明確に意識して

以上を整理します。謙譲語には二つあります。

①「話題の主」が尊敬対象の場合 → 「伺います」「お目にかかる」(謙譲語I)を使います。

  • 先方に伺います
  • ぜひお目にかかりたい

②「聞き手」が尊敬対象の場合 → 「参ります」「お会いする」(謙譲語Ⅱ)を使います。

  • 先方に参ります
  • ぜひお会いしたい

この二つの条件が重なる、話題の主がまさに今話している相手という場合はどちらでも可です。でも①の方が直接的なので、①の言葉を使う人が多いですね。

 

話し相手のオフィスなら「伺います」を

初めの問いに戻りますね。アポイントの確認をするとしましょう。

  1. 「明日、オフィスに伺います」
  2. 「明日、オフィスに参ります」

この二つの違いは、1のオフィスは先方のオフィスであること、2のオフィスは、どこのオフィスでも良いということです。ですから、アポイントの確認をしている先方のオフィスに行く場合は、1の「伺います」、アポイントの確認をしている先方のオフィスではなく、よそのオフィスの話の場合は2の「参ります」を使うのです。

 

どうでしょう? まずはこの「伺う」と「参る」や、「お目にかかる」と「お会いする」で練習してみましょう。言葉は道具。使わないと使えるようになりません。「ご飯」を「お飯」と言わないのと同じような感覚になるまで何度でも使ってみることが大切です。

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