知らなかった…「くださる」「いただく」どっちが正しいの?
「毎度ご来店いただきまして、誠にありがとうございます。」
「毎度ご来店くださいまして、誠にありがとうございます。」
さて、どちらがより正しい日本語でしょうか。
確かにたまに行くデパートで流れるくらいなら、それほど気にしなくても良いかもしれませんが、もし、あなたが会社のイベントで取引先の人に挨拶をする時はどちらにしますか?
- 本日はご来場いただきまして、誠にありがとうございます。
- 本日はご来場くださいまして、誠にありがとうございます。
友人の結婚式で司会の挨拶をするとしたら? 原稿はどちらにしますか?
- 本日はお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
- 本日はお集まりくださいまして、誠にありがとうございます。
普段何気なく耳にするこの言い方、この際きちんと考えてみましょう。
そもそも「くださる」と「いただく」の元の言葉は?
この「くださる」と「いただく」とは何かの敬語表現だと言うことは分かると思いますが、元の言葉が何か分かりますか?
そうですね。「くださる」の元の言葉は「くれる」で、「いただく」の元の言葉は「もらう」です。
もう少し詳しく言うと、「くださる」は「くれる」の尊敬語で、「いただく」は「もらう」の謙譲語です。
「いただく」は自分の行為に対して使う謙譲語なのです。
小学生でも分かるような簡単な例文で説明しますね。
- (先生が)本を(ぼくに)くれた。
この文を敬語表現を使って表すと、
- (先生が)本を(ぼくに)くださった。
となるわけです。簡単ですよね?
同様に
- (僕は)本を(先生から)もらった。
この文を敬語表現を使って表すと、
- (僕は)本を(先生から)いただいた。
となります。
この二つの文
- (先生が)本を(ぼくに)くださった。
- (僕は)本を(先生から)いただいた。
は、同じ出来事を表していますが、主語が違います。1は先生が主語で、2は僕が主語です。
「くださる」は「くれる」の尊敬語で、「いただく」は「もらう」の謙譲語だということもここで分かります。
先生を尊敬しているということで、「くださった」は尊敬語、
僕が先生を敬っているということを表す為に自分がへりくだるので「いただいた」は謙譲語になるわけです。
「いただく」は自分の行為に対して使う謙譲語なのです。
例えば逆にして
- 先生が本をぼくにいただいた。
- 僕は本を先生からくださった。
とは言わないということはすぐに分かります。
さて、表題の件です。
- 毎度ご来店いただきまして、誠にありがとうございます。
- 毎度ご来店くださいまして、誠にありがとうございます。
ここには隠れた主語とそれを受ける言葉が隠れています。入れてみると次のような感じになるかと思います。
- (お客様)毎度(私たちの店に)ご来店いただきまして、誠にありがとうございます。
- (お客様)毎度(私たちの店に)ご来店くださいまして、誠にありがとうございます。
どちらにしても丁寧な感じがするので、ちょっと分かりにくいですよね。
元々の言葉に戻して文をシンプルにしてみましょう。
- (お客様)来てもらって、ありがとう。
- (お客様)来てくれて、ありがとう。
1がおかしいことが分かりますね。ですから、
- 毎度ご来店いただきまして、誠にありがとうございます。
は間違いだということが分かると思います。
言葉を換えるとOKになるワケ
では「いただきまして」が「ご来店」とセットで使えないかというとそういうわけではありません。そういう安直な覚え方をすると、言葉が変わると途端に分からなくなります。主語が「自分」かどうかです。次のような文では、主語が自分になるので使えます。
- こんなに大勢のお客様にご来店いただきまして、私たち一同、深く感謝しております。
この文の主語は「私たち一同(は)」です。だから「いただく」なのですね。
これが「こんなに大勢のお客様が」とお客様が主語になると「いただく」は使えません。
「いただく」は自分の行為に対して使う謙譲語なのです。
- こんなに大勢のお客様がご来店くださいまして、私たち一同、深く感謝しております。
繰り返します。「いただく」は自分の行為に対して使う謙譲語なのです。
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