「毎朝、大しけの船底で目覚めるようなめまい」コロナ禍だからこそ失業をまぬがれた52歳の「壮絶な更年期」
閉経の前後5年を一般に更年期と呼びます。日本人の閉経の平均年齢は50歳なので、45-55歳の世代は更年期に当たる人が多いもの。身体の不調に苦しみ「更年期障害」の状態に至る人もいます。
私ってもう更年期なの? みんなはどうなの?
オトナサローネは同世代の女性100人がいまどのような更年期を迎えているのか、そのあり方を取材しています。(ご本人の年齢や各種の数値は取材時点のものです)
▶「私みたいな症状の人」が必ず見つかる! 更年期体験談の集大成『100人の更年期』のイッキ読みはこちらから
【100人の更年期#87】前編
リカコさん
52歳、高校生の長男、保護ねこと都内で暮らしている。ベンチャー企業を経て30代前半から大手金融関連企業に勤務、データ分析業務に就いてる。趣味はお料理、自転車、旅行。
噴き出すような汗が顔面を覆いつくす。電車に乗るのもおっくうになった
「42歳ごろ、あれ、おかしいなと思うことがあって。すぐお医者さんに行って相談したら漢方の加味逍遙散を処方されました。このときはよく効いてすぐ回復したんです」と話し始めたリカコさん。最初に体験した更年期症状はホットフラッシュでした。
「当時は夫と離婚した直後で、子どもの小学校入学も重なって忙しくて。メンタルもやられていたのかもしれませんが、頭がぼーっとして、わーっと汗が出るんです。今なら『汗なんて流れるだけだからかわいいもんだ』って思えますが、その時は本当に困ってしまって」
この汗が「かわいいものだ」と言えなくなったのは、46歳になってカレができてからです。
「デートして、疲れたから帰るねと振り返るその瞬間、顔面が急に噴き出た玉のような汗でキラキラになって(笑)。恥ずかしいから何とか平気なふりをして、ごまかしてさっさと帰りたいんだけど、カレが大丈夫?大丈夫?って心配するので帰れなくて。このころから外出先で急に汗が噴き出るのをストレスに感じて、電車に乗ること、やがて外出そのものがおっくうになっていきました」
もしかして更年期症状なのかな、具合が悪くなって倒れるのもいやだから、ホルモン補充療法は始めてみようかなとスタート。一定の手ごたえがありました。
しかし、これらは「予告編に過ぎなかった」そうです。
毎朝、大しけの船底で目ざめるようなめまい。仕事も続けられないかもしれない
「ドカンと症状が出たのはその後、48歳のときです。その頃には噴き出る汗も収まって、更年期なんてとっくに克服して終わったわ~!と思っていたのですが……」
再び汗が噴き出るようになったばかりか、イライラや憂鬱など気分の上下が激しくなっていることを自覚しました。
「最初はまだ、更年期って人によっては2回あるのかな?くらいに思っていました。でも、どんどんひどい症状に襲われるようになって」
おりしも2020年春、世の中がコロナ禍に飲み込まれるタイミングでした。あっという間に緊急事態宣言が発令され、オフィス勤務者は在宅勤務に。たまたまリカコさんはこの「在宅」のタイミングで更年期症状のピークに突入しました。
「これは私にとってはラッキーなことでした。なぜかというと、私がいちばん苦しんだのはめまいだったから。在宅勤務にならなかったら、1年たたずに退職していたと思います」
リカコさんの場合、めまいの症状が特にひどく出たのは寝起きでした。
「朝は目が覚めると船底にいるような、ぐらんぐらんに世界が揺れている状態で1日がスタートします。起きたら大しけの海上で船底に取り残されていたみたいなシーンで、悪くすると1時間くらいは起き上がれません。こんなことが3日に1回はあるんです。それでも在宅ならだましだまし仕事を始められますが、通勤していたらそもそも家から出られなかったと思います」
やがて夏を迎えるころには、仕事中にも突発的にめまいに襲われるようになりました。
「仕事中にめまいがくると、在宅勤務とはいえ座っていることすらできず、急に無言になって崩れ落ちてしまいます。オンライン会議中に急に画面から消えてしまっては、みんなも困りますよね。なんとか働いていましたが、もしかして仕事も無理かもと感じ始めました」
このころ、医師にホルモン補充療法ではホルモン値が上がりすぎるため他の疾患のリスクが高いと言われて中断。さらなる右往左往の日々が始まりました。
更年期って、その人の弱くなっているところに症状が出るんだと思う
「私はもともと離婚でもめているころから抑うつの状態になっていたのですが、ホルモンの変化のせいでしょうか、それが一層激化しました。もともとメンタルが弱って十分に回復しきっていないところに、更年期うつのようなものが出たのでしょうね。加えてめまいまで出るようになったのですから、なかなかの地獄でした」
コロナ前、まだ出社していたころは、会社でめまいに襲われるとフロアに置かれたマッサージチェアでこっそり寝てやりすごしていたそうです。
「チームでシフトを組んで業務を運用しているので突然休むわけにはいかないのですが、といっても体調が悪いならメンバーは気持ちよく交代してくれるのもわかっていました。だからこそ、迷惑になりたくないという意識が私の側に強かったんです」
当時は業務のピークを見越して、なんと3週に1回ほど計画的に倒れていたのだそう。しかし、ずっと家にいてオンオフをつけにくい在宅勤務では「まとめて倒れる」ことが難しくなり、めまいが出てしまったらその都度こまめに休んでリカバーするようになりました。
「私が属しているチームの上司はとにかく体調優先でいいと言ってくれる人でした。突然倒れて穴をあけることのないように、日頃から自分の病状を細かく報告してきた信頼の積み重ねがものを言ったのかもしれません。少しずつ仕事の負担を減らしてもらえることになりました」
何とかなりそう……と思いきや、ここでさらにコロナ禍ならではの「まったく方向性の違う悩み」がリカコさんを襲います。
▶【後編】更年期の51歳、20㎏太ってしまった。更年期の不調を訴える友人にはアドバイスをせず、ただ共感してあげてください
スポンサーリンク