なんと女性の70%が「痔」を経験!更年期世代ならではの痔のリスクって?予防法は?
世間のイメージでは、男性に多い疾患だと思われている「痔」。実は、女性も痔になるリスクは高いことをご存知でしょうか。女性の痔は、妊娠出産を経て発症してしまったというケースが多いため、子育てがひと段落した更年期世代とは無縁のように思えるかもしれません。しかし、更年期世代のホルモンバランスの乱れが痔の発症に繋がってしまうかもしれないのです。
今回は、更年期世代が痔になりやすい理由と、痔の予防法、そして痔になってしまった時の対処法について、ウンログ株式会社で腸活セミナーなどを担当する腸活うんち専門家・長瀬みなみが解説します。
驚き!女性には「痔のリスク」が上がりやすいタイミングがこんなに…?
更年期は、ホルモンバランスの乱れが原因でさまざまな体調不良が起こります。痔は、更年期とは直接関係する疾患ではありませんが、ホルモンバランスの乱れにより慢性便秘症を発症してしまい、結果として痔になってしまうリスクがあるのです。
ウンログ株式会社が2023年2月に行ったアンケート調査「女性の痔と治療に関する実態調査」では(こちらから)、10代以上の女性の約70%が痔になった経験があることがわかりました。「現在も痔の症状がある」と回答した割合を年齢別に見ると、20〜40代がそれぞれ3割を超えてピークとなっています。これは、妊娠出産の多い時期とも重なっており、妊娠出産を経て痔を抱える人が増加しているということが考えられます。妊娠出産時には、ホルモンバランスや生活習慣の変化による便秘が原因となったり、出産時の切開などが原因となったり、さまざま理由で痔になりやすくなってしまいます。
妊娠出産以外に痔を発症する理由として最もメジャーなものは、慢性便秘症です。便秘によって、トイレで必要以上にいきんでしまったり、硬くなってしまったうんちを無理やり排出したり、肛門に負担がかかって痔を引き起こしてしまいます。
更年期世代は、ホルモンバランスの乱れに加えて、加齢による筋力の低下など、便秘のリスクが高くなります。アンケート調査の結果では、「現在も痔の症状がある」と回答した50代以上の割合は減少していますが、普段の生活の中で痔のリスクが低減しているわけではありません。
ひとくちに「痔」といっても、さまざまな種類があります
痔には、痔核・裂肛・痔ろうの3つの種類があります。そもそも、痔とは、肛門とその周辺の病気の総称です。同じ痔という名前でも、3種類の痔は全く異なる状態のもの。状態によって、病院受診のタイミングや治療の方法も変わります。それぞれの特徴について詳しく解説していきます。
痔核
いぼ痔と呼ばれる種類の痔です。発症の具体的な理由はまだわかっていませんが、座りすぎや、排便時のいきみすぎなど、肛門周辺への過度な負担がかかることで発症すると考えられています。
痔核はできる部分によって、内痔核と外痔核に分けられます。内痔核は肛門の内側の粘膜部分がいぼ状に腫れることによって起こります。粘膜部分には痛覚がないため、初期の段階では痛みを感じることはほとんどありません。症状が進行すると、肛門の外にいぼが飛び出す「脱肛」を起こします。脱肛も、自然に肛門内に戻る・指で戻すことができる・戻すことができないの3つの段階があり、自然に肛門内へ戻らない程度まで進行した場合は、病院受診が推奨されています。
外痔核は、肛門外部の皮膚が腫れて起こります。皮膚には痛覚があるため、外痔核は初期の段階でも痛みや違和感を伴います。座りすぎなどによる血流の悪化で、突発的に発症すると考えられています。通常は、時間の経過とともに小さくなっていくことが多いですが、強い痛みを伴う場合は、切開による手術を行うこともあります。
裂肛
切れ痔と呼ばれる種類の痔です。排便時のいきみすぎなどによって、肛門周辺の粘膜が裂けてしまうことで起こります。日本大腸肛門病学会によると、3種類の痔のうち約15%は裂肛と言われており、特に女性の痔では割合が多いと言われています。
痛みや違和感、出血などを起こしますが、便通を改善することで症状が改善されるため、初期の場合は服薬と生活改善によって保存療法を行います。しかし、進行すると、肛門周辺が隆起することで起こる肛門狭窄を起こす場合があります。肛門狭窄の場合は、外科手術を行うこともあります。
痔瘻(ろう)
あな痔と呼ばれる痔です。肛門内で細菌感染によって膿瘍が起こると、腫れと激しい強い痛み、発熱を伴います。自然に膿瘍が破裂するか、切開によって膿が排出されると、自然に治る場合もあります。しかし、たまった膿が肛門の組織に穴を開けてしまい瘻管(ろうかん)になると、膿は排出されますが穴は残ってしまいます。
痔を予防するためには何に気を付ける?大切な3つのポイント
痔のはっきりとした原因はまだ解明されていませんが、生活習慣や肛門への過度な負担によって発症すると考えられています。肛門への負担を減らすためには、普段のトイレ習慣と食習慣がポイントです。生活のなかですぐにできる痔にならないための3つのポイントをご紹介します。
いきみすぎない
排便時にいきみすぎないようにしましょう。いきみすぎは、肛門に過度な圧力をかけてしまい、炎症を起こす原因となります。トイレでいきむのは、1分程度が適切な時間といわれています。いきまなくても、便座に座って個室に長居してしまうのもNG。いきまなかったとしても、便座に座り続けているだけで肛門には負荷がかかり続けます。長くても3分以内には便座から立ち上がるようにしましょう。
ウォシュレットは短時間で優しく
ウォシュレットは、優しい水圧に設定して、長時間使うのは避けましょう。水圧を高くして、浣腸のように使う人がいますが、あくまで肛門の周りを清潔に保つためのサポートをしてくれる機能です。お尻をキレイにするためだけであれば、10秒程度で充分。可能であれば、温水の設定にするのがベストです。
水溶性食物繊維を積極的にとる
いきまずにするりと出せるうんちにするためには、適切な水分量のうんちにすることが必要です。そのためには、食物繊維の中でも水溶性食物繊維を豊富にとるようにしましょう。わかめなどの海藻類や、もち麦などの大麦、植物性のぬるぬるねばねばした食品に多く含まれています。水溶性食物繊維は、腸内でうんちの水分量を増やしてくれ、スムーズな排便に導いてくれます。一緒に適切な水分摂取も忘れずに行うようにしてください。
痔になった時の対処法
痔になったときは、症状の段階によってすぐに病院受診をすべきものと、セルフケアをしながら様子を見ても良いものがあります。痔の治療は、初期であれば服薬や生活習慣改善による保存治療で対処可能なことがほとんどです。しかし、症状が進行していくと手術などの大掛かりな治療が必要になることもあります。適切な病院受診のタイミングを見極め、なるべく早く医師に相談するようにしましょう。心配であれば、初期の段階でも医師に相談するようにしてください。
セルフケアでも良いものとして、内痔核、裂肛の初期段階があります。生活に支障がない程度の違和感や痛み、お尻を拭いたときに多少の血が付着する程度であれば、市販薬での処置で様子をみるでも良いでしょう。生活に支障が出るほどの痛みがある、出血が止まらない、内痔核の場合は自力で肛門内に戻らなくなるタイミングが、病院受診の目安といわれています。初期の治療では、ジオン注射など簡単な治療で解決できることがほとんどです。
一方、激しい痛みを伴う外痔核や痔瘻(ろう)の場合は、すぐに病院を受診するようにしましょう。
更年期世代も気をつけたい痔は、生活から予防を!
更年期世代も気をつけたい「痔」についてお話してきました。痔にもさまざまな種類がありますが、肛門への負担が原因となると考えられているものがほとんどです。日々の生活習慣をはじめ、健康的なうんちを出すことでお尻をいたわり、痔にならない生活を送るようにしましょう。
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