【40女の恋愛事情】story2 私は彼の特別になれますか?-45歳・真由子の場合(3)-
「あーなんかストーカー熟女がいるとか言ってたあれ?」
「そうそう」
「今日、そんな人いた? 囲んでたのは若い子ばっかだったけど」
「その熟女、しつこくくっついて離れなくて怖いから、外で待たせてるんだって」
「考えたな」
「他のファンと話してたら、泣き出しちゃったりして、大変だったらしいよ」
「痛いなそれ」
顔がひきつる。
これは私のことなんだろうか。
確かに私は、若い女の子と彼が楽しそうに話している姿を見て、涙を流したことがある。ほうっておかれて悲しくなって自然と涙がこぼれた、それだけなのに……。
彼がなんて言ったかを、思い出してみた。
「公演終わってすぐ行けるかもしれないから、なるべく早く公園で待ってて」
そう何度も言われていた。でも結局現れるのは必ず30分以上経ってからだった。
その30分の間に、彼は女の子達と話していたというのだろうか。
今すぐ席を立ち、もう二度と、彼に会わない。
そうするのが一番いさぎよい。
でも、できない。
明日から何を楽しみに生きていったらいいのか、わからない。
「あいつはいいよな。女んとこ転がり込んでるから、家賃もいらないし」
「彼女、ネイリストだっけ? 面倒みてもらってるんじゃ、ラクでいいな」
そんな、まさか。
彼は、男友達とルームシェアしていると言っていた。
彼女の部屋って、どういうことだろう。
心が凍りつきそうになる。
……気にしちゃダメだ。
私は首を横に振った。
この人達はきっと、別の役者の話をしているに違いない。
私が応援している彼の話であるわけがない。
だって彼はいつだってまっすぐに私だけを見つめてくれる。
あの瞳の中には、きっと好意だって、含まれているはずなのだから。
私は公園の時計を見上げた。
そろそろ彼が現れる頃だ。
いつもと同じ笑顔になろうと、私はなんどもなんども口角を上げて練習した。
彼が私のところに歩み寄ってきた時に、
「おつかれさま」と心をこめて、微笑んであげたい。
私は彼にとってたった1人のファン。
彼が、そう言ってくれているのだから。
彼の言葉を信じるしか、ないのだから……。
【私は彼の特別になれますか?-45歳・真由子の場合 完/過去のまとめ読みはこちら/毎週火曜17時更新】
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