不倫の歓喜を知ってしまった。彼女はごくごく普通の主婦だったのに【不倫の清算・リバイバル13】(前編)

2023.06.03 LOVE

「独身男性から求愛された」その事実に既婚女性はコロリとやられてしまう

その日、呼び出されたのはBさんの自宅で、きれいに片付いたリビングであたたかいチャイをいただきながら話を聞いた。

 

「あなたは不倫に詳しいから」

 

というLINEのメッセージを読んだときは、Bさんの周囲でそんな話があったのかなと勝手に思っていたのだが、いざソファに座って対面してみると状況はまったく違った。

 

目の前のBさんは、ファンデーションを塗った肌でジーンズにマスタード色のニットを合わせていて、普段通りの姿だった。

 

「実はね、お店に来るお客さんと不倫していて」と最初に言われ、のけぞるほどに驚いたがそんなこちらを見てもBさんは慌てず

 

「びっくりするでしょう、私が不倫するなんて。

でも、本当なの」

 

と低い声で続けた。

 

聞いてみると、半年ほど前からお店で見かける男性に声をかけられ、品物の場所を教えたり新商品の紹介をしたり、話しているうちに親しくなり、男性のほうからLINEでのやり取りを求められ応じたそうだった。

 

客と個人的に親密になることは、会社の規則には書かれていないが「ご法度」だと社員のなかでは周知されており、それをBさんは「私はパートだし」と深く気にしなかったそうで、男性に誘われるがまま休日に食事に行くようになった。

 

「私のことをね、素敵ですって言ってくれたの」

 

恥ずかしそうにそう口にしたBさんは、赤くなった頬を抑えるように手を当てて、

 

「そんなこと、夫からも言われないのよ」

 

と瞳に光を溜めながら続けた。

 

「今日の髪型も素敵です」

「かわいいですね」

「太ってないですよ、全然」

 

Bさんから聞く男性の言葉はあからさまな口説き文句であり、「そんなことないですよ」と必死に手を振って否定するBさんが目に浮かぶようだったが、その姿を封じて「ありがとうございます」と返せるようになるまで、この男性は食い下がったことも想像できた。

 

Bさんが褒められる自分を認めてしまえば、男性の言葉に「乗る」ことにどんどん抵抗が薄くなる。

 

そうやって距離が縮まるのは、独身者同士の恋愛ならまったく問題ないのだが、不倫となると話は別だった。

 

その高いハードルを超えさせるほどの魅力が、男性にはあったのだろうか。

 

Bさんは見たこともない表情で称賛のシャワーを浴びる自分を伝えてくれたが、その結果が不倫なのだとしたら、「喜んでいいこと」では決してないのだ。

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