間違っている可能性大。正しい挨拶の2つの作法とは?【悩みを手放す21の方法#7】
曹洞宗徳雄山建功寺第18世住職で、庭園デザイナーの枡野俊明さんの新刊『悩みを手放す21の方法』(主婦の友社)の中から、自分がラクになれるヒントを8回に分けてご紹介します。
今回のテーマは「挨拶をする」です。
▶前回のテーマは「吟味して買う」
『欲しいと思ったら「3日間考える」クセをつける』
挨拶という漢字が「手偏」なのはなぜでしょう
「おはよう」「こんにちは」「さようなら」――日常的な言葉だからこそ、実際にはなおざりにされがちなのが挨拶です。
ところで、挨拶という言葉の本来の意味をご存じでしょうか。漢字を見ると、どちらの文字にも「手偏」があることに気づくと思います。「挨」は押す、「拶」は押し迫るという意味を持っています。 「あいさつ」という言葉の実際の意味を考えると、これらの漢字には多少の違和感を覚えるかもしれません。
挨拶の語源は「一挨一拶(いちあいいっさつ)」という禅語にあります。「一挨一拶」とは、師が修行僧に会ったときに、どのくらい悟りが進んでいるかを確認するために問いを投げかけることをいいます。それがじょじょに禅僧どうしでもおこなわれるようになり、出合い頭に押し問答をする習慣が生まれたのです。いつしかこれが一般の人たちにも広まり、「おようございます」「こんにちは」など、出合い頭に交わす言葉に転じていきました。それが挨拶です。
今の私たちは、出合い頭に押し問答をすることなどないでしょう。それでも、挨拶の本来の意味に立ち返り、言葉を交わすことで相手の心の状態や考えていることを推し量ることはできるはずです。
「おはようございます」という声に元気がないなら、今日は気の進まない予定が入っているのかもしれません。「いただきます」の声にハリがないなら、体調を崩して食欲がないのかもしれません。そんな微妙な変化に気づき、思いやりを示すことこそが本来挨拶であって、単なる言葉のやりとりではありません。
だからこそ、挨拶は丁寧にしたいものです。特に忘れてはいけない作法が2つあります。
ひとつは「語先後礼(ごせんごれい)」です。禅の言葉で、 「言葉が先、礼はそのあと」という意味です。日本人は挨拶のときに、頭を下げて礼をする習慣があります。これはもともと、頭頂部を相手に見せることで、「あなたに対して敵意はありませんよ」というメッセージを暗に伝えるためでした。そのこと自体は問題ないのですが、「こんにちは」と言いながら、いっしょに頭を下げてしまうことはありませんか?そうすると、言葉が相手にまっすぐ届かず、何を言っているのか伝わりにくくなります。
まずは相手の目を見て言葉を伝え、それからゆっくり頭を下げるのが正しい挨拶の仕方です。自分の気持ちを相手に届けやすく、相手の気持ちも受け止めやすい。そして何りも動作が丁寧で美しく見えるはずです。
▶▶〈つづきを読む〉『「こんにちは」は簡略系。ときには丁寧に気持ちを込めた挨拶を』
悩みを手放す21の方法(枡野俊明著/主婦の友社刊)
プロフィール
枡野俊明(ますの・しゅんみょう)
1953年、神奈川県生まれ。曹洞宗徳雄山建功寺第18世住職。庭園デザイナー。多摩美術大学名誉教授。大学卒業後、大本山總持寺で修行。「禅の庭」を通して国内外から高く評価される。芸術選奨文部大臣新人賞受賞、ドイツ連邦共和国功労勲章功労十字小綬章を受章。2006年ニューズウィーク日本版「世界が尊敬する日本人100人」に選出される。『禅僧が教える不安に負けない心の整え方』(主婦の友社)など著書多数。
続きを読む
スポンサーリンク