そっけない年下男子の態度に揺れる気持ち【年下小説・あなわた#17】

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おひとりさま40代の私の部署に、年下の男性が配属されてきた。 歓迎会に誘っても「そういうの迷惑なんですよね」と言い放つ、協調性のない若い男の子、高坂くん。 ところが、ひょんなことからお互い「犬が好き」なことに気づく。 女性と2人で出かけたことすらなかったピュアな高坂くんと、私の関係は、少しずつ変化し……。

 

ひさしぶりの会話

 

高坂くんは、ドッグカフェの店内にいる私に気づいたみたいで、カチリと目が合った。

けれどそれは一瞬だけで、すぐに視線を足元に移し、彼を慕って囲んでいるプードルやチワワの足を拭いてあげている。

 

私は静かに彼のところに近づいた。

「お散歩、させてたの?」

「そう。ボランティアになったんです」

そういえば以前、カフェの人が、犬が20匹以上もいるのでお散歩が大変なので、散歩ボランティアを募集しているんです、と言っていた。

高坂くんは本格的にここを手伝う気になったらしかった。

 

「毎日お散歩させてるの?」

「いや、土日だけ」

彼は、言葉すくなだけど、私に返事をしてくれる。

それが嬉しかった。

最近は、LINEを送っても、返事すら来なかったから、嫌われたと思っていたから。

 

高坂くんは散歩から帰った犬をカフェに引き渡すと、別の5匹の散歩の準備に取り掛かっている。リードをつけられた犬たちは、散歩だとわかるのだろう、嬉しそうにそわそわしている。

「私も一緒に行ってもいい?」

思い切って声をかけると、彼はじっと私の顔を見た。

 

並んで歩くこと

 

私と高坂くんは、公園までの道を、並んで歩いた。

犬の散歩についていっていいかと聞いた私に彼は、

「別にいいですけど、ただ散歩するだけですよ」

と、素っ気なかったけれど、私はついていった。

 

今までも、こうして彼と、何度も並んで歩いていた。

その時は、犬のことばかり話していた気がする。

でも、今は、2人の間に流れるのは、沈黙だった。

 

彼は、一緒に歩いている小さな犬たちを気づかって、ずっと彼らに注意を向けているし、うまく話しかけるタイミングがつかめないから、私もただ、黙って一緒に歩いた。

でも、ただそばにいるだけで、嬉しい。

いつのまに、私の中で高坂くんは、こんなに大事な存在になっていたのだろう。

 

それなのに。

私は彼に「僕たち、付き合ってみますか?」と聞かれた時、やんわり断ってしまった。

「お互いに恋愛感情がなくちゃ」なんて、偉そうなことを言って、断ってしまったのに。

でも、今、私のほうが彼を追いかけている。

 

たいせつということ

 

犬たちを公園で遊ばせた後、私たちは、言葉を交わさないまま、カフェまでの道を歩いた。

「……最近、LINEしても、返事くれないね」

「はい」

高坂くんは短くそう答える。

 

「返事くれないと、なんだか心配になるし、寂しいよ」

素直な気持ちがぽろっと口から出る。

「連絡がないと、何を考えてるのかなって、気になっちゃうの」

「そうなんですね」

彼は、冷たい態度を崩さない。

 

でも、カフェが見えてきたところで、高坂くんはこう言った。

「僕に会いにドッグカフェに来たんですか?」

「そういうわけじゃないけど、でも会えたら嬉しいなと思ってた」

「ふうん」

彼は観察するように私の顔をじろじろと見る。

 

「前に、離れていても、何しているのか気になったり、すぐにまた会いたくなったりするのが恋愛感情だって言ってましたよね。もしかして、僕のことを好きなんじゃないですか?」

 

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